前菜

 ポテトサラダ一口、カボチャサラダ一嚙り、マカロニサラダ一舐め。


 よーし最初にサラダを食べたぞぉ。これで胃の中をお野菜で狭めたからいっぱい食べてもダイジョーブ。太りっこなーい。


 ではでは早速食べ始めに、お向かいに座ってるおねぇさんから。


 バリバリ、ズズズ。


 ウゲー。なんか脳みそ苦ーい。お薬かな? お酒かな?


 あ、でも苦いってことは身体に良くないってことで、だったら食べても太りっこなーい。あーんしーん。


 では口直し、駆けつけてきた警備員のおじさんをっと。


 バリバリ、ズズズ。


 おーいしー。油ものってるし量も多いし、髪の毛少ないから食べやすいし。もっとほしー。


 あ、でもでもこれ全部食べたら太っちゃうかな?


 そだ、一口だけ残しておこ。全部食べなきゃ太りっこなーい。


 ででで、次は、どっちからかな? お母さん? それとも赤ちゃん?


 あ、赤ちゃんってお母さんから産まれたんだから二人でセットだよね? だったら一緒に食べた方がおーいしーんじゃないかな? それに一人分だからカロリーハーフで太りっこなーい。最強食べ合わせはっけーん。


 じゃあ早速…………あれ?



 世界が真っ白になった。



 どこここ? ご馳走は?


『濃いな、今回は』


 なになに、頭の中に響くんですけどー。


『まぁ、なんだ。君を呼んだのは異世界行って戦ってきてほしいんだけど』


(えー意味わかんないんですけどー。っていうか私のご馳走は? ひっさしぶりのヴュッフェレストランでの食べ放題邪魔するなんてさいってー)


『それは、あー、悪かった。だけど戦ってくれたら報酬としてなんでも願いを一つだけ叶えられるからさ』


(なんでも?)


『そう、なんでも。食べ放題でもダイエットでもなんでも』


(アナ-カロリナ!)


『あな、なに?』


(ファッションのブランド! この服とかそうなんだけどほら私って胸大きいじゃない? サイズが合うのがなかなかないからー、専属で作ってくれるとうれしーなー)


『そんな、いや、それは、その程度なら、大丈夫だろうね』


(やった。前のデザイナーさんはうっかり人質食べちゃってさー。これ一着で自殺されちゃったんだよねー。今度はそーいう欠陥のない人が担当だといーなー)


『それは、あーもうはい。いってらっしゃい』


 あ、白じゃなくなっっったーい。なになに?


 背中に何かぶつかって、痛い。何金属? 箱?


 中には変わった制服のおじさんと、ガラスの窓で仕切られたその向こうには沢山の人が詰め込まれてる。それに箱もなんかいっぱい繋がってて、長い長い渡り廊下みたい。これ、動いてたのかな?


 変なの。異世界だからかな?


 あ!


 ここがあの白い人が言ってた通りの異世界なら、まさしくここってば別腹じゃん! だったらいくら食べても太りっこなーい。むしろなれない世界のストレスで痩せるに決まってる。太らなーい。


 それに戦うんだから体力付けないと、やせすぎて可愛くなくなっちゃうかもだし、だったら今のうちにいっぱーい食べとこーっと。


 じゃあ早速、この制服のおじさんから、前菜ということで、いっただっきまーす!


 バリバリ、ズズズ。


 うん、おいしー!

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ヘルシーダイナイマイト! 負け犬アベンジャー @myoumu

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