第500話、燃え上がれ孤独に凍えるその心、水平線のその先に陽の当たる場所があるはずだから
エピローグにして新たなる序章
いつからだろう。
自身が世界に、存在していると。
そこにいてもいいのだと、はっきりと分かるようになったのは。
始まりは、ただの一匹の黒猫として生まれ落ちた時か。
正しくも生涯の母に出会ったかのように。
黒髪おかっぱの、どこかで見たことのあるやさしい少女と共に在ることとなった時か。
はたまた、そんな自分と同じように。
そこに在る意味を探し疑問に思っている青銀色の人の型、家族が増えた時か。
分からない。
答えは見つからないようにも思えたけれど。
どうやらそれは、飼い主の黒髪おかっぱ少女さえも、ずっとずっと探し求めていたものだったらしい。
みんなで連れ立っていつもの朝も早くの散策。
いつも立ち寄る、動かないパンダのいる公園のベンチ。
おかっぱ少女と同じ黒髪の、何故だか透けて後ろの背もたれが見える青年。
ベンチにずっと座ったままで動こうとしない、幽鬼のごとき存在。
少女と、その家族にしかどうしてか見ることのできないもの。
出会ったその瞬間、みんなでずっと悩み込んでいた答えが分かってしまって。
だけど黒猫な彼女が完膚なきまでに納得できるピースは未だ足りてはおらず。
その残りのピースを探すためにと。
緑色の瞳の黒猫は、おかっぱの少女は、青銀ピカピカのヒトガタは。
目を離せば世を儚んで消えてしまいそうな透け切った青年を、その場から連れ出すことにしたのだ。
夢幻に広がる青空の。
新しく生まれた世界。
いつかのように、あてもなく。
歌と夢だけを胸に、でこぼこにすぎる家族(チーム)は歩き出す。
それは、ご多分に漏れず長い長い旅路になることだろう。
だけど、いつか夢は叶うと。
終わらない歌はないのだと。
お互いがお互いを疑うことはなく。
いつだってそんな、儚い音楽にのって。
いつだって熱く照らし、時には隠れ鎮める陽のもとで日々をしぶとく面白おかしく生きていく。
「ああぁーーーっ!! やぁーっとみつけたっ、ここで会ったが百年め、なのだ~っ!!」
「きゃん、きゃん!!」
そんな風に。
軽妙で、楽しくて嬉しくて大好きな。
賛美歌にも似た相の手が、聴こえてくるまで……。
(Tears on Earth×LoverSにつづく)
終末の空が青色じゃなくなっても、愛の歌を歌おう 陽夏忠勝 @hinathutadakatu
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