百鬼蛮行

ソラ

百鬼蛮行

「や、やめて・・・!」

「なに? どういうこと・・・」


「ぎゃあ、あ! あうう!!」


「う、う、う、う、・・・・」


 刺すたびに、刺すたびに、『う、う、う』と吐息のような言葉らしきものを発する。刺すたびに肺に入っている空気が出てきていた。


「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」


 少年は自分の腕の動きをやめ、両手をだらりと下げた。

 右手には大きな包丁を持っていた。

 真っ赤な血が肘から下へ、べっとりと張り付いていた。両手で刺していたので左手も同様だ。

 少年は12歳にしては、ものすごく痩せていた。肋骨がはっきり浮かんでいる。身長も130センチぐらい。平均身長よりも20センチは低かった。

「・・・おかあさん・・・」

「ぼく・・・かあさん・・・」

「大好き・・・なのに・・・いじめる・・・」

「もう・・・いじめ・・・ないね・・・かあさん」

 少年は泣いていた。何度も何度も突き刺して絶命させた母の上に仁王立ちした少年は、泣きながら薄暗い部屋の天井を向いていた。


               ※


 少年は小学6年生だった。しかし学校には4年生あたりから行っていなかった。いわゆるネグレスト、育児放棄だった。大好きなお父さんは離婚していなくなった。その後、平屋のアパートに住み始め、今12歳の少年と32歳の母と二人暮らしになり、すさんだ生活を暮らしていた。


               ※


「おかあさん・・・ごはん・・・」

「うるさい!これからあたし仕事があんのよ!!」

「あんたにかまってる暇ないの。」

「いつものようにそこら辺にあるものを食べな。」

 ゴミだらけの部屋で食べ物のカスや空き缶、脱ぎ散らしの衣類などが散乱していた。少年はいつ食べたかわからない、コンビニ弁当のケースの中の変色したたくあんをかじった。

 母さんの方を見ると、真っ赤なルージュを唇にさし、きれいなワンピースを身に纏っていた。夜の8時にいつものお迎えの車の音がした。

「やあ、待った。」

「ううん、そんなことないよ、やっくん。」

 少年の前で舌を絡ませるキスをじっくりとしていた。

 そんな二人を見ていると、いつも吐き気がしてしょうがなかった。

 男が少年を見て、

「何見てんだ、エロガキ!!」

 と言って、近くにあった小物入れを投げつけてきた。

 ドカッと少年のおでこにあたり、少年は

「ぎゃん!」

 と言ってうずくまった。

 汚れたままの顔の額から、真っ赤でけがれのない鮮血が対照的に流れていった。


                ※


 ある日、男が強引に部屋の中に入ってきた。

「やっくんたら、汚いからダメって言ってるじゃん。」

「私がおごるから、ホテルいこ、ホテル!」

「いや、だめだ。」

 男は強い口調で言った。

「俺、いつもこいつのことが気になんだよね。」

 男は、淡いピンク色のワンピースを着た母さんの腰に手を回し、お互いの体をピッタリつけて少年を睨んだ。

「ぼく・・・なにしたの・・・」

 少年は意味が解らなかった。

「いつもお嬢を迎えに来る時、こいつの目がすげえ気になんだよ。なんか捨て犬のような目。すっげえいじめたくなんだよ。それでな、いいこと思いついんだお嬢。」

「なによ、やっくん」

「こいつの目の前でセックスしようぜ。そうすればこいつも、もうお嬢はおれのもんだって、てめえはペット以下だってことが解るだろ。」

「うふ、なんか興奮しそうだわ。」

 男は少年を蹴飛ばし、部屋の隅においやった。

 そして、

「よく見てろ!」

 というと部屋の中央で母さんを思いっきり押し倒した。

 母さんはうっとりとした目をしていた。

 またいつものねっとりした口づけが始まった。しかもすぐ目の前で。

 少年は我慢できずトイレに行って吐こうとした。

 その瞬間、男に殴られ引きずられた。

「逃げんじゃねえよ。これからが、ほ・ん・ば・ん・だ。」

「てめえのかあちゃんが淫乱になる恰好を拝むんだな。」

「やっくん、ちゃんとイカせてよ・・・」

 母さんも興奮しているようだった。

 いつもと違う状況が母さんをより一層と情欲に燃え上がらせていた。

 二人は少しずつ服を脱があいしながら、体を舐め合い、擦り合った。男が母さんの胸を揉みしだくと同時に顔をうずめて舐めまわした。

 その後男は仁王立ちすると、母さんは男のおしっこするところに頭をうずめた。そして頭を前後するたびに男は

「は、は、は、は、」

 とうめいていた。母さんは一所懸命前後に頭を動かしなら、両手は股間をまさぐっていた。男は母さんの胸を揉んでいた。

 とても見ていられなかったけれど、目をそらすと、すぐ男に殴られた。

 一所懸命に、まさぐりある二人を見るしかなかった。

 全裸で、目に見えるほどの蒸気を発している二人は、仰向けになった母さんの腰を男は両手で持って、腰と腰とを強引に合わせた。

 母さんは

「あぁ!」

 という悲鳴にも似た声を発した、男はニタリ顔で激しく腰を動かした。母さんはそれこそ泣くような声で「あ、あ、あ、あ、」とうめいている。常軌を逸した淫行。少年は自分の陰茎が勃起しているのを気づいていた。

 それを男が見逃すわけがなかった。

「こいつ、自分のかあちゃんが自分の目の前で犯されているのにち〇こ立たせてるよ。お嬢、どうする。」

「オナニーでもやらせな。」

「あははは、こりゃいいや。お嬢が気持ちいいところを息子に見させて、息子はオナニーか。この親子、狂ってるぜ!」

 母さんの身体から男は離れ、少年のズボンとパンツを脱がした。

 小さな陰茎はピンと上空をさして勃起していた。

「ほらこうやって右手で擦るんだよ。こうやって!!」

「やりゃ出来んじゃねえか!」

 そのまま陰茎を擦る少年に男は蹴りを入れた。

「が!!」

 少年は母さんの目の前に倒れた。少年の血だらけの顔が、恍惚としてどこを見てるかわからない母さんの瞳にうっすらと写った。

「それじゃ次はこの体位でやらなきゃ、この小僧も興奮しないってな。」

 男は母さんを四つん這いにさせ、犬のような格好にさせた。そしてお尻の方から男は自分の腰を突き刺すように動かした。。

「ハウ!!」

 うめきまくる母さん。

「あ、あ、あ、あ、いい、いいよう。やっくん!!」

「早くイケ、小僧!!」

 形の良いお尻を上下左右に振りながら、恍惚の表情をする母さんを目の間にして、少年の手淫は絶頂を迎え射精した。


                  ※


 情事が一段落した、ごみが広がる部屋に明かりがともることはない。そんな中、シャワーも浴びず全裸でセックスをした母さんは、薄い毛布を体にまとい横になっていた。

 少年は下半身をあらわにしたまま、飛び散った自分の精液を見つめていた。頭の中の何かがはじけた。

 ゆっくり立つとその太ももには、アイロンか煙草でつけられたやけどの跡が生々しかった。まともに病院に行ってなかったのだろう。ケロイド状になっていた。

 がりがりに痩せたその体をゆっくり台所に向けた。台所のシンクには汚れたままの食器が投げ込まれていて、かなりの間放置していたのだろう。異臭とカビがひどかった。

 その中に汚れたままの包丁を少年は手に取った。振り返りシャツ一枚だけの少年がそこにいた。

 少年は、

「おかあさん・・・ぼくだけ・・・すき・・・おねがい・・・」

 とつたない言葉で小さく呟いた。うまくしゃべれないのだ。

 そしてそのまま気持ちよさそうに寝ている母さんの上に仁王立ちした。

「おかあさん・・・」

 少年は両手で包丁を振り上げた。


                  Fin

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百鬼蛮行 ソラ @ho-kumann

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