二日目

「暇過ぎて笑えないんだけど。誰かいいネタない?」


 朝岡が不満をぶちまけるように吐いた。俺はこんなこともあろうかとライトノベルを用意しておりそっと本を出し、読み進める。


「いや、でもさぁ、やる事てっ言われてもねぇ?栗長、何かをないか?」


 困ったような表情で窓に腰を掛けて、北山が軽い口調で囁く。


「かと言って、これと言ったアイデアは俺の頭脳の中にはないからな」


 暇過ぎるのか、指名された栗長は椅子に深く腰を掛けて木造作りの天井を、首を曲げて見上げる。その体制。かえって辛くないか?


「成程。つまり俺達はよほど暇らしい」


 綾凪も自分の席に着いてただ、黒板の方を眺め続けていた。


「いや、考えようぜ。諦めるには、まだ早いと思うんだ」


 長里は懸命にこの暇な空間からの脱出方法を一人で探っているようだ。

 だが、彼のように真面目に考えている奴は残念ながら一人もいなかった。


「だけどさ、他にやる事あるかよ?」


 喧嘩越しに栗長が長里の提案を嘲笑うように訊いた。


「余計な事を言うなよ。まぁ、やる事がないのは同意だけどさ」


 綾凪の一言も充分、余計だと思うが確かにある物とすれば自分達のカバン。

 筆記用具やノート、教科書等だ。誰も俺のように本を持って来ては居なかったのだ。


「更に言うと、遊ぼうにも道具がねぇんだよな。参ったなぁ」


 頭をポリポリと掻きながら周囲を見渡す朝岡。そうだ。物がないのだ。


「あっ、栗長、サッカーしようぜ。お前ボールな」

「何を言い出すかと思えば・・・・・・宜しいならば戦争だ」


 栗長と長里の間ではいつの間にか戦争が勃発したらしい。

 展開か早すぎて俺が着いていけないのだが、誰か収拾してくれないか?


「だから、争いは止めろって、今はこの暇な時間をいかに有意義に過ごせるか考えよう」


 朝岡は深いため息をついて呟く。


「うるさいな、争ってないで何か考えろよ。誰か本くらい持って来てないのか?」


 綾凪が何かを思いついたかのように立ち上がり俺達の方に顔をやった。


「肝心な事を忘れていたぜ。俺としたことが、宿題を終わらせていなかった!」


 だが次の一言でその案は綾凪のみ解決することとなった。


「「「「多分終わらせていないの、お前だけだと思う」」」」

「嘘・・・・・・だろ・・・・・・」


 何かの茶番かな。綾凪はその後黙って椅子に座り粛々と一人寂しく宿題を始めた。

 可哀想に。


「ローソンでも行って何か買ってこようよ」

「余分に今日は金を持って来てねぇ」

「えっと・・・・・・俺もないな」


 朝岡がローソン案を出すも、栗長と里長は学校に余分なお金を今日は持って来てないようだ。そもそも校内で持ち歩くなよ。


「何か時間が立つのてっ、長く感じるのは俺だけ?」

「けど、楽しい時間は早く過ぎる。ならこの時間を楽しく過ごせばいいじゃない!」

「異論なし!」


 北山が天井を見上げながらポツリと呟くと栗長が案を提案する。

 北山は異論がないようだ。


「知ってて言ったのか?今はその楽しい時間を探す為にこうして話合ってるんだけど」

「どうもすみませんでしたー」


 謝る気が全くない北山とマジレスで反論した里長。


「頼むから誰か案をくれよ」


 朝岡は苛立ち始めたのか少し口調が荒くなってきた。目を瞑りながら心の奥底で怒ってるようだった。

 だが、その空気は一声でたち消える。


「ようやく宿題が住んだけど質問あるかな?」

「何でそんなに早く宿題が終わるんだよ!」


 2ちゃんねるの何か質問ある?みたいに還されてもこっちが困るんだが。


「よもや、俺の事を馬鹿だとは思ってはおるまいな?」

「「「「なら他に何があるんだよ」」」」

「余裕で傷ついた」


 何だ・・・・・・この茶番劇は。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

五人は暇を潰す。 @attackhit @attackhit

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ