五人は暇を潰す。

@attackhit

一日目

「何だ⁉」


 突然、俺の隣で立って喋っていた友人。栗長が揺れを感じ周囲を見渡す。

 何一つ変わらない教室の光景。だが少なくとも俺達だけは何かを感じ取っていた。


「風が吹いてやがるぜ」


 その時、ただ普通の風が開いた窓から吹いていただけなのだが、どうやら鈍感な俺とは違い朝岡も何かを感じ取った。


「来たか・・・・・・」


 俺の前の席で机の上に両腕を載せて手を組はその上に顎を載せ目を瞑り何かを悟った。

 綾凪も感じ取ったようだ。


「馬鹿な・・・・・・早すぎる・・・・・・」


 窓に近づきいつもと何一つ変わらないこの青い空を見上げて、悔しがるように吐いた。

 北山も悟ったようだ。


「やーれやれ・・・・・・「アイツら」は待つてっ事を知らないねぇ・・・・・・」


 長里も状況を掴み北山の側に近寄り右肩を軽く叩いて同じく空を見上げる。

 すると栗長が。


「来たか・・・・・・」

「しゃーねーな。いっちょケリをつけに行くか」


 栗長は頭をかきながらその場で窓から見える空を見つめた。


「貴様達に行かせる訳には行かない」


 そっと席に座ったまま綾凪が、黒板を見つめ何か寂しげな表情を浮かばせる。


「よーぉ、こりゃ俺の仕事だ。ガキはすっこんでろ」


 長里が席に座る綾凪に振り返り少し威圧感を高めてから言い放つ感じで言った。


「・・・・・・」


 かけてもない眼鏡を掛け直す仕草を取り机の下を静かに向く綾凪。


「ったく・・・・・・どいつもこいつも喧嘩っ早いんだから」


 朝岡が首を横に降りながら呟くように吐き捨てた。そして視線を北山に向ける。


「フッ・・・・・・だがそう急ぐ事も有るまい」


 そう言い綾凪は席を静かに下げてゆつまくりと振り向きながら立ち視線を俺に向ける。


「スタンバイ完了・・・・・・いつでも行けるよ」


 窓を見上げてた北山が皆の方に振り向き小さな声で言う。その声は少し震えていた。


「ったく・・・・・・あいつら」


 長里がグラウンドにふと目をやると吐き捨てるように言って走って教室を出た。

 どこ行くんだよ。


「貴様達、準備は整ったか? では参るぞ!」


 無いマントを振り払うような仕草を取った後、彼、綾凪は余裕な足取りで教室を後にした。


「あいつら・・・・・・遂に動き出したか!」


 北山は少し感情が高ぶった感じで窓越しにグラウンドを睨むように見る。


「止められぬなら、止めてみるがいい!」


 俺はグラウンドの方に顔をやると中央に堂々と立つ綾凪が仁王立ちする。

 あいつ敵役だったのかよ。


「俺の分は残しておけよ!」


 窓越しに北山が大声でグラウンドにいる朝岡、長里に言い放つ。


「よりによってこのタイミングか・・・・・・」


 長里は少しマズイ表情を見せつつ朝岡に視線をやる。朝岡は。


「さぁ!パーティーの始まりだ!」


 と、拳を綾凪に向ける。牽制のつもりか?


「そろそろ力を解放する時だな!」


 綾凪は両腕を一杯に伸ばして攻撃を受け止める体制に入る。


「風が・・・・・・泣いている」


 俺はグラウンドを見ながら弱めの声で小さく語りかけるように言う。


「お前は・・・・・・俺の希望だ・・・・・・」


 北山は下に顔を向け、その目からは涙が少しずつこぼれ落ちていった。

 そしたら。


 キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。


「さてと。帰るか」


 するとさっきまでグラウンドにいた三人が教室の前に立ち既にカバンを持って笑顔で待っていた。


「行こうぜ。皆が待っている」


 北山はカバンを持ち上げ俺に振り返りそっと呟いた。そして俺はそれに返事をする。


「あぁ。帰ろう。俺達帰宅部の戦いは、まだまだ、これからだ!」

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