空を見上げて

@nikochang_55

第1話 誕生日の次の日

 いつの間にか年を取っていて、病院の受付書類や何かの申込書に年齢を記入する際に「えーっと?」と自分の年齢がとっさにわからなくなっていた。多分これくらいだったはずと記入して、生年月日と年齢が合っていないという謎の年齢詐称をしていたり。

 若い時には信じられなかったことが年を重ねるごとに、こういうことなのねと納得してしまう。

 

 若いって素晴らしいことだということに年齢を重ねるごとに気づく。

 今若い人たちにそれを言ってもわからないだろう。自分も全くわからなかったし、言われる度に「何言ってんだよ、おばさん」なんて思っていた。

 こんなことを自分が記していること自体、笑えるし呆れる。それくらい年をとるということは衝撃的なのだ。


 ところで、昨日は自身の誕生日だった。

 仕事は上期最終営業日なのでバタバタと忙しい中でも誕生日おめでとうと同僚たちは言葉を掛けてくれた。毎年のことだけど、自分の誕生日が慌ただしいのはどうかと思う。この慌ただしい誕生日は仕事を辞めるまで続くのだ。

 

「で、何歳になったの?」

「え?」


 朝一番の質問で、一瞬言葉が詰まった。


「えーっと・・・」

「すぐ答えられないのか」


 笑われた。


 すいません。


 脳が老化しているのか、自分の年齢を拒否して記憶することを無意識にやめているのか分からないけど、覚えられません!

 

 年をとるということは悪いことじゃない。

 

 生きてきた年月分、いろんな経験が蓄積されているし、人間的には若い頃より深みが出てきていると思う(自分比)。でも、体力的な衰えや、身体的な老化などどうにもならないことも多い。それらとどう付き合うかがとても重要になってくる。

 我慢することができなくなったり、集中力が落ちてきたり、細かい文字が見づらくなったり・・・

 第一線から少しづつ退いていくことは必然なのだと仕事をしていて感じる。

 

 若いうちにやっておけばよかったと思うことも多い。やらなければよかったこととかも。でも、それをしなかったら今の自分はなかったのだから、やらなくてよかったことは世の中にないのかもしれない(犯罪は別)。


 誕生日の次の日。

 秋晴れの土曜日。


 新しい年もきっといい年と思って生きていこう。



 

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