全部嫌になったら、なぜか祖父が現れました。(仮)

雪野目 晴

第1話

終電ギリギリで家路につく。

途中コンビニに寄って夕飯に弁当を買った。


丸谷 明マルタニ アキラ 32歳 独身。


好きで独身なのではない。ただ縁がないだけで、恋人とは先月別れたばかりだ。別れたというか、一方的に別れを告げられた。

理由はわからない。突然メールで別れを告げられ、それっきりだ。

自分も特に未練も無かったので、連絡をしなかった。


彼女とは一年ほど付き合っただろうか。

人数合わせで行った合コンで出会った、2つ下の彼女。

医療事務をしている彼女は積極的で、あまり人付き合いの苦手な俺はずっと押されっぱなしだった。

付き合い始めたのも彼女のほうから告白され、断る理由もなかったので付き合うことになった。


考えている内に、家に着く。

安い家賃に惹かれ決めたアパートは、築30年の二階建て。一階右端が自分の部屋だ。鍵を開け中に入る。入ってすぐのリビング兼寝室の小さな丸テーブルに弁当を置き、そのままベットにうつ伏せに倒れこむ。

食欲が失せてしまった。そのまま眠ってしまいたかったが、明日のことを考え、スーツだけは壁際のフックに吊るす。

自然とため息がもれた。


自分は何をしているのか。

東北の田舎出身で、東京にあこがれて高卒で今の会社に入った。

同期はあまりの多忙さに、皆辞めてしまった。

自分も辞めることを考えた。しかし、仕事を辞めた後のことを考えると、踏みとどまっていた。

他にやりたいこともない。

次の仕事が見つかるとも限らない。

辞めていった同期が少しだけうらやましくもあった。


「こんなはずじゃなかった」


無意識に声が漏れていた。

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全部嫌になったら、なぜか祖父が現れました。(仮) 雪野目 晴 @yukinomeharu

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