河童

おさく

河童

「このあたりにはカッパが出ると言われておる。我が村に伝わる伝説の一つじゃて」


 長老の禿げ上がった肌色の頭が時折天井からの光によって輝きを放つ。


「きっとあの娘っ子もカッパに拐われたんだ」


 辛うじてサイドには毛が残る頭で村長が力強く言った。


「おれ、見ただよ。カッパ」


 頭の中央部分のみが力強く禿げ上がった男が呟いた。


「ほ、ほんとか!定彦!」


 隣のオデコが頭頂まで達した男が声をあらげた。


「っちっくしょう!あんのカッパ野郎!」


 村民たちは怒りをどこに向けていいか分からないように見えた。ちなみに私はすでにカッパなどどうでもよくなっていた。

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河童 おさく @osaku

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