後編:そんなに眼鏡男子がいいのか

 トモエは背が高く、スレンダーで運動神経抜群。

 しかし、なんと言っても笑顔がかわいい。愛嬌もある。だからクラスでも人気者。


 トモエが試合に出れば、熱い声援が会場を湧かせるほどだ。

 しかし、あんな風な表情もするんだ……アコの前では。

 それはどうみても自分と同じ……恋する顔だった。


 私はトモエにメールを打った。

『もう少し掛かりそうだから先に帰って』と。

 私は初めてそんな風に想われているアコを羨ましく思った。


 アコは普段から無口で物静か。読書が好きで休み時間も、何かしら読んでいる。

 そんなアコを囲んで、私とトモエは駄弁るのだ。アコも聞いていないわけではなく、時折素晴らしく切れのある言葉を投げかけ、私とトモエを驚かせる。

 そして三人で笑うのだ。


 今日もまた部活の後片付けで遅くなった。きっと、二人は待っていることだろう。段々とトモエの、あんな恋する表情を見るのも辛くなってきた。


「告白とか……なあ。三人でずっとって無理なのかな……」


 私は嘆息しながら重い足取りを、正門へと向ける。下駄箱で靴を履き替えるとそこにはトモエがいた。


「トモエ? どうしたのぼーっとして。あれ、アコは?」


 トモエは、すーっと手を伸ばし指差す先にはアコと……


「嘘、手、繋いでる。ウチの生徒じゃないよね?」


「私立の、男子だと……インテリメガネが良く似合ってるよ。まさかアコに彼氏がいたとは……」


「まあ、深窓の令嬢って雰囲気だもんね、アコ。お坊ちゃんには受けが良いんだよ」


 アコと彼氏は、そのまま仲睦まじく寄り添い、燃える夕日の中へと消えていく。


「告る前にフラれるって不毛過ぎる……あ、マユミもダメだよ。アタイのこと見てたのは知ってるけど、がさつなマユミはタイプじゃないから」


「おい! それをここでいうのかよ! って、バレバレって私も恥ずかしいわ! ……不毛過ぎる」


 私たちは、長い溜め息をついたあと、二人して笑う。

 私たち三人は、仲の良い三人組だ。


「あ、あの! トモエさん。是非、僕とお付き合——」

「男は要らないから」


 告白してきた、完全に石化する男子を放っておいて、トモエは歩き出した。私もそれに続く。だが、校門前で私も呼び止められた。


「あ、あの! 教室で気さくに話しかけてくれて、嬉しくて。ふたつに結んだ髪と瞳が綺麗だなって……ええと、付き合ってください」


 きょとんとした私を眺めるトモエ。私はトモエに笑いかけた。トモエもまたニヤリと笑う。私の頭の中は明日、アコに根掘り葉掘り聞くことを、あれこれ考えている。トモエは私と肩を組んで、高らかに、二人して宣言した。


「『男は、要らないから』」

 私たちの恋は不毛に終わったけど、私たちの友情は終わらない。


<了>

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仲良しトリオ 発条璃々 @naKo_Kanagi885

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