仲良しトリオ

発条璃々

前編:やきそばパンを奪う戦いは熾烈である

 空を見上げると、燦々と輝く太陽が、今日も私たちを焦がそうと、ヤル気を出している。

 額から流れる汗を拭いながら、友達の待つ屋上へと向かった。


「いや〜今日も購買、こみ混みで、やきそばパン買えなかったよお」


 しかし、いつもの場所に二人は見当たらない。他の生徒が笑いながら視線を投げかけてくる。恥ずかしい……完全に独り言である。

 私がどっと、違う汗を掻きながら立ち竦んでいると、日陰のある場所から掌がひらひらと揺れている。顔をひょっこりだしたのは、友達の一人だった。


「遅かったから、先に食べちゃったよ、もう」


 短髪のトモエは、もふもふと最後のパンを頬張った。その隣には、既に食事を終えて読書するアコの姿。


「えー、混んでるってわかってたのに、待っててくれなかったのかよ」


 私は不満の声をあげながら、敢えて二人の間に割って入り、腰を下ろした。


「なして、マユミはいつもアタイらの間に入る。日陰で涼をとっているのに、意味ないじゃない。暑いよ!」


「いいじゃん、暑いのはいつものことで、急に涼しくなったりはしないんだしさ」


「てか、マユミは見た目と喋りに、ギャップがありすぎるよ。そのつり目といい、髪型といいツンデレキャラなのに、ツンしか見当たらん」


「煩いなあ……私は媚売ったりしないだけ。デレは貴重だから光るんじゃない」


 私は、ぶつぶつ言いながら、コロッケパンを口の中へと押し込む。口で文句を言ってはいるが、私たちは仲良しだ。他愛ない話にも、華が咲き盛り上がる。大抵どこに行くにも一緒で、寧ろ離れて行動することの方が少ない。

 

 だけど、私は見てしまったのだ。部活の後片付けで遅くなり、待ってくれている二人の下へと急いでいた時、正門で談笑しあう二人の姿を。

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