第18話 質問タイム 前編
ソウタ「………あれ………。」
メイプル「………あっ、目が覚めた……?」
ソウタ「俺は…一体何を…。」
辺りを見渡すとそこは俺たちの住む町ではなくなっていた。
ソウタ「えっと……。」
メイプル「記憶は元通りになった…?」
ソウタ「えっ? ………。」
あぁ、ここは…そうか…、そうだったな。俺は創造神様に記憶を……。
メイプル「ちゃんと鮮明に思い出せた…? 記憶…。」
ソウタ「ん…まぁ…思い出せたんだけど…。何か頭がボーッとしてて…。
……って、あれ?」
……目の前を見ると創造神…グラン様が居なくなっていた。
ソウタ「あれ……グラン様は?」
メイプル「グラン様は待ちくたびれちゃって向こうに休憩しに行っちゃったよ。ソウタ君が目覚めたら連れて来てくれってさ。」
ソウタ「きゅ、休憩…そうか…。」
メイプル「ソウタ君、ずっーと眠っちゃってたんだよ?」
ソウタ「えっ…そうなのか…? ……どのくらい?」
メイプル「ここに時間を示してる様なモノはないから、詳しくは分からないのだけど…、でも現世の時間に表すなら…丸一日ぐらいかな?」
ソウタ「えぇっ……俺、そんなに寝てたのかよ……。」
メイプル「まぁ、結構長い記憶だったみたいだからねー。数日前ぐらいからの記憶から蘇らせてたんだから、そりゃあ時間も掛かるでしょー。むしろ数日間の記憶を一日で思い出させてもらえるなんて、むしろ短い方だと思うよー。」
ソウタ「君はもしかして…俺の目がさめるまでずっと側に居て待ってくれてたのか…?」
メイプル「そうだよー。転生前の死んだ魂を見守る役目は、それがどんな天使であれ、一番最初にその魂を見つけた天使にあるからね。私のような大天使であっても。」
ソウタ「へ、へぇ…そうなんだ…。大天使に魂を見つけられるのって珍しかったりするのか…?」
メイプル「まぁ、ある時はあるけど、ほとんどないよー。だって私たち大天使は、神様たちを含めても世界にたった15人しかいないもの。」
ソウタ「なるほど……何か言ってたような気がするな……。」
メイプル「それにしてもソウタ君はラッキーだよ。」
ソウタ「えっ、何がラッキー?」
メイプル「記憶を呼び覚ます為にはグラン様の記憶を蘇生させる『記憶蘇生術』を使うでしょう…?」
ソウタ「う、うん。」
メイプル「あれって、魂を見つけた天使の生命力を使って蘇生させるんだよ。」
ソウタ「えっ…生命力って、まさか天使の寿命が縮まるとか!?」
メイプル「違う違う! そんな酷い術じゃないよ! 生命力と言うかただの能力に近しいものがあるのだけど…単純に言ってしまえば、記憶術に優れた天使である程、より早く鮮明に記憶が蘇る可能性が高まるんだ。」
ソウタ「へぇ……。」
メイプル「私って記憶の大天使でしょう…? 天使の中では神様を除くと、一番記憶術に
メイプルは少し笑いながら言う。
ソウタ「あぁ、なるほど! そんなこと言ってたなー、確か。」
何か俺にはよく分からないけど。まぁ、無事記憶も取り戻せたんだ。何でもいいか。メイプルに最初に出くわしたのは運が良かったのかも知れない。…まぁ、事故って死んでる時点で運は超悪いとは思うのだが。
ソウタ「んで……、俺は次に何をすればいいんだっけ……?」
メイプル「まず、やるべき事の1つ目である『記憶を完全に呼び覚ます』事をクリアできたね。」
ソウタ「あっ、そういえば言ってたな。転生前に3つぐらいやることがあるとか何とか…。」
メイプル「そうそう、次に2つ目なのだけど…。」
ソウタ「えっと…何だっけ?」
記憶を呼び覚ましたことによって、色々な記憶がグチャグチャになってしまっている。
メイプル「2つ目は…、グラン様の所に行って武器と転生先の抽選をするんだよ。」
ソウタ「あっ、なるほど抽選かー。」
メイプル「では早速抽選を…と言いたいところなのだけど、グラン様が立ち会ってないと抽選は出来ないから、まずグラン様の休憩してるところまで行こうか。それに、グラン様の休憩してるところまで少し距離があるから、何か一緒にお話しでもしながら行こっか。」
ソウタ「そうだな。俺一人で行ったりしなくてよかった。会話がないのも暇すぎる。」
メイプル「そうだねー。」
ソウタ「んで……何を話そうか?」
メイプル「そうだね〜…じゃあ、これから転生する前に…何か気になってることとかあったりしない…? 質問にでも適当に答えながら行こうかなーって思ってさ。」
ソウタ「んー…そうだな…。質問に答えてくれるのは嬉しいんだけど、ちょっと唐突だったからイマイチ考えてなかったな…。」
メイプル「考えるのは歩きながらでいいよ! とりあえず、グラン様のところへ向おっか!」
ソウタ「あぁ、了解。行こうか。」
俺とメイプルは歩みを始めた。そうして俺は数十秒間考え込み……、
ソウタ「……じゃあー……早速、聞きたいことがあるんだけどー……。」
メイプル「おっ! なんだろう?」
ソウタ「俺の記憶の話でもいいか…?」
メイプル「えっ、記憶の?」
ソウタ「うん…ちょっと質問内容がずれてるような気がするけど…ごめん…。」
メイプル「いやいや! そんなの全然構わないよ!」
ソウタ「あの…メイプルってさ、記憶の大天使だし、いろいろな人間の記憶も覗いてきたりしたんだろう…? だから人間の記憶についてかなり詳しいんじゃないのか…?」
メイプル「えっ、まぁ…それなりには…!」
ソウタ「俺の記憶も見たんだったよな…?」
メイプル「う、うん。」
ソウタ「だったら…俺の死ぬまでの数日間の記憶の中で…よく分からなかったことが4つほどあるんだけど…。それについてメイプルはどう思ってるのかだけ…聞かせてくれないか…?」
メイプル「なるほど、そう言うことだね…! わかったよ! ……で、質問は何かな…?」
ソウタ「じゃあまず1つ目だけど……12年前に東雲神社に落し物をした女の子が居たって話なんだけど…あれ、俺たちが出会った境遇にめちゃくちゃ似てて…偶然なのか何なのか分からないんだけど、何か不気味だなーって思ってて…。何故かまでは分からないけど、何となく俺の勘で12年前の女の子がシスちゃんな気がしたんだよな…何でだろう……。」
メイプル「あぁ……、実はそれ私も気になってたんだよね……。ソウタ君の記憶を覗かせて貰った時からさ……。」
ソウタ「あっ…やっぱりメイプルも気になってた…?」
メイプル「うん…気にはなっていたんだけどさ…私にも良く分からないんだよね…。」
ソウタ「えっ…分からないのか…?」
メイプル「うん…ごめん…。記憶を覗いたりすることはグラン様から授かった能力で出来るんだけれど、魂の記憶の中に出てきた人物の記憶までは見ることが出来ないんだ…。更に言えば、ソウタ君の記憶の中に出てきた神主さんの記憶に残っているシスちゃんにとても良く似た少女のことでしょう? 流石に記憶の大天使である私でも、そこまで段階的に深く掘り下げてやっと現れた人物の記憶までは覗いたりする能力は持ってないの…。と言うかそんな能力、グラン様でも授けられないと思う…。ごめんね………。」
ソウタ「あっ…そんなの全然大丈夫だよ! 分からないなら分からないままでも俺は別に良いさー。」
メイプル「んんー…でも折角質問してくれたんだし…私の考えだけでも言っておこうか。」
ソウタ「えっ、あぁ…ありがとう…。」
メイプル「私が考える可能性は3つ。」
ソウタ「へぇ…。」
メイプル「まず1つ目の可能性。これはまずほぼ有り得ないと思うんだけど『同一人物説』だよ。」
メイプル「えっ…シスちゃん9歳だから12年前には存在してない人間だよ…? 仮に存在していたとしても全く年取ってないのもおかし過ぎるし……。」
メイプル「あはは、記憶の中でもそんなこと言ってたよね。だから"ほぼ有り得ない"って言ったじゃないか。有り得ないけど、無きにしも非ずと思って僅かな可能性で言ってみただけだよ!」
ソウタ「な、なるほど。」
メイプル「2つ目は『転生説(魂同一説)』だよ。」
ソウタ「どんな説なんだ?」
メイプル「12年前の魂が転生して、現世に舞い戻ったケースなのだけど…。」
ソウタ「へぇ……。」
メイプル「でもそれは有り得ないと思うんだ…私はグラン様の転生させてきた魂を色々と見て来たんだけど…グラン様は一度死んだ魂を現世に舞い戻すことなんてしないし…人間の魂が自分自身で魂が現世に蘇るなんて絶対に無理だし…。仮にその説が正しいとして、魂自身に前世の記憶や意思の有無も気にはなるんだけど…。」
ソウタ「お、おう…。」
メイプルの話してることが色々と何か難しくてよく分からない…。
メイプル「最後の3つ目は『他人空似説』。まぁ、普通に考えればこれが一番合ってるんだとは思うんだけどね…。」
ソウタ「そうかぁ、やっぱり最後は偶然ってやつだよな…。」
メイプル「まぁ、どれも可能性は低そうだし…やっぱり結論、分からないだね…力になれなくってごめんね…。まだ何か可能性を考え出せたら良かったんだけど……。」
メイプルに少し笑いながら謝られる。
ソウタ「い、いや全然いいよ。俺も分からないものと思ってたしさ。」
メイプル「そう……。」
ソウタ「えっとじゃあ…2つ目の質問なんだけど…。」
メイプル「あっ、うん! 何かな…?」
ソウタ「2つ目の質問はほんの些細なことなんだけど……俺たち3人が東雲神社にシスちゃんのペンダントを返して貰いに行った時の話で……。」
メイプル「うんうん。」
ソウタ「神主さんは持ち主が現れないと、落し物を返さない人で…。」
………。
『俺たちがそのペンダントの持ち主であろう人に届けてきましょうか…?』
『うーむ……そうじゃな……それでもいいんじゃが……、』
『何かまずいことでもあるんですか?』
『いや…考えたくはないんじゃが、お主達に任せて届ける前にまた失くしたり盗まれたりしても困るじゃろう…?』
『あ……それもそうですね…。じゃあどうすればいいのでしょうか……?』
『そうじゃな…、明日まで神社で保管しておくから、また明日になったら持ち主を連れて来てくれんか…? 今、夕方じゃし…もうすぐ夜になるだろうから、遅い時間にわざわざ来てもらうのも悪いからな……。』
『そうですか……分かりました。』
………。
ソウタ「こんな会話をしてたんだけど…。」
メイプル「うんうん。記憶の中ででも話してたね。」
ソウタ「神主さんが言ってた通りに俺たち3人で取りに行ったんだけど…何故か神主さんとシスちゃんを合わせちゃいけない気がして…それにシスちゃんもペンダントを取りに行くのを恥ずかしがってたから俺たち2人で取りに行ったんだけど…何故か神主さんは普通に返してくれて…。前日まで頑なに本人にしか落し物は返さないって言ってたのに……。なんでだろうなーって思ってさ……。」
メイプル「あぁ、それか…なるほどね…。」
ソウタ「メイプルはどう思う…?」
メイプル「んんー…難しいね…。単なる気まぐれで気持ちの持ち様が変わっただけなら良いんだけど…確かに変だね…なんでだろう…。」
ソウタ「俺やリョウスケも何故か2人で入ろうって思ったんだよね…シスちゃんも言ってたことと違うじゃん的な顔して不思議そうにしてたし…何だったんだろうか、一体…。」
メイプル「んんん………。ごめん…本当に分からないよ……。不自然ではあることは確かなのけど、私は答えに出すことが出来ない……。本当にごめん……。」
ソウタ「そうか……まぁ、記憶の中身に出てきただけの不自然な話であって、記憶関係の話じゃないからメイプルも専門外だよな。変なこと質問してこっちこそごめん。」
メイプル「いやいや! ソウタ君が謝ることじゃないよ! 質問タイムを始めたのは私なんだし…!」
ソウタ「ま、まぁ、そうだ。気を取り直して次の質問言ってもいいか?」
メイプル「あっ、うん! 全然、構わないよ!!」
ソウタ「じゃあ……、」
………これは、俺の記憶の中で一番不可解だった謎だ………。
ソウタ「3つ目の質問…。俺やリョウスケに変な手紙を手渡した、黒いフードを被った人のことなんだけど___、」
天生物語 〜異世界冒険日記 癒しの旅〜 姫宮 柚 @yuzu_1027
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。天生物語 〜異世界冒険日記 癒しの旅〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます