結話

「――ええ。はい。送った通りです」

 ミーシャは自室でベッドに寝転がって揚げじゃがいものスナック菓子を指で摘みながら、そう報告した。

「……疑わしいというか白々しいというか。まあ、矛盾点はない、か」

「でしょう?」

 “妖精喰らい”に関する記事について、上司であるメレリクとの音声通話に、ミーシャは自信満々に答える。

「しかしなんだ、もうちょっと何とかならなかったのか。どこの映画シムの主人公だ、この男は」

「そう言われましても。調べた限りはそんな感じだったんです」

「これを相手方に説明する私の身にもなってくれ、まったく……」

「相手方って誰なんです?」

「知らんよ。私も直接会ったことはない。ソムテクのある子会社の主任研究員で“プランター”などと名乗っているが、何処の誰だか。本当にそんな所属かどうかも怪しいものだ」

「プランターですか」

「まあ、その分これを説明するのも気が楽と思えばマシだな」

「頑張ってください。あとボーナスも忘れないようにお願いします」

「まったく……」

 通話が終わってひとつ伸びをしたミーシャは、はふ、と息を吐いて、そう言えば、とアドレス帳を開く。

 中から探すのは、オズマン=レント=ヴァジュブルーノ。イマジナリ・ドリーム社広報課長。

 通話をかけると、今度は反応があった。

「お電話ありがとうございます。こちらはイマジナリ・ドリーム社広報課でございます」

「お忙しいところを失礼します。グレーンリブール・リポート社のミーシャ=オルコン=グレーンリブールと申しますが、オズマンさんはいらっしゃいますか?」

「オズマンですか」

 一拍の間があってから、返事があった。

「オズマンは不幸の事故があり、現在業務に出られない状態になっております。言付けがあればお伺いいたしますが」

「いえ、お大事に、とお伝え下さい」

「ありがとうございます。お手数をお掛け致しますが、宜しければまた後日おかけください」

「いえ、こちらこそありがとうございました。失礼します」

 ミーシャは通話を切ると、再びアドレス帳に検索を掛ける傍ら、ハッキング用の端末を手繰り寄せた。

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金色の砂が見せる夢 天原とき @fifnir

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