電源


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宇宙船『アレキサンドライト』は人類最後の母船であり、砦でもあった。

右翼左翼には羽がなく大砲もない。ただ灰色の外壁は固く、十字架のような形をしている船だ。それは子供が夢中になるような格好の良い形ではなく、ましてやドラキュラから身を守る効果など皆無だ。地球がアンドロイドにより支配された10年前に、月面に偶然誘発的に種子島にか《・》れ《・》て《・》い《・》た《・》産物だ。


その艦内のコクピットルームで、アキラとアリスはカプセルの中で目を閉じていた。

「ミラさん!アキラが契約しやがった!」

メインモニターに映し出されているアキラは契約の最中。それを見守るボロボロの白い宇宙服を着た少年は17歳のトモだ。彼は真横に置かれた黒い球体にしがみつき叫んだ。

「馬鹿野郎!何で身を犠牲にするんだ!」

「トモ!キャスパーに触るな!電源が落ちたらやばいぞ!」

艦長のミラがすかさず叫んだ。この艦を統べる二十歳の男は黒髪をかきあげ、半目で黒い球体を見つめた。

その球体の名は異空間転送装置『キャスパー』。偶然にもアレキサンドライト内に置かれていた代物だ。

アキラと、アリスはこのキャスパー内で眠り機械と配線で繋がれている。つまり異空間へと意識が転送されていることを意味する。太い配線と細い配線かまチカチカと交互に光り、体が一体となっている様だ。


艦長ミラは「終焉PLAYERS HIとの接触は簡単にはいかないもか」と呟いた。

「ミラさん!どうにかならないのかよ!」

悲痛なトモの声。ミラは眉を釣り上げた。

「無理だ。アキラを救うのには電力が足りない。他のキャスパーを動かすのには丸一日の太陽光を充電する必要があるんだぞ」

「そんな‥‥また、ダメなのかよ。ミラさん!アキラはこの世界を彷徨い続けるしかないのかよ!」

両手を広げ訴えるトモ。ミラは表情を変えずに顎に手を当てた。

「いいか?地球がアンドロイドに侵食され、俺たちが宇宙に出てから10年が経つ。キャスパーで異空間に出向くのも、奴らと会話するために続けてきたことだ。今ここで強制離脱させると全てが無駄になるぞ」

「じゃあ、アキラがどうなってもいいのかよ!」

「だから、待て。と言っている。」

およそ20人は入る規模のコクピット内に二人の会話が響き渡る。が、すぐに沈黙が漂う。

「ははぁん。ミラ、さてはトモ君に手を焼いてる?」

緑色の長い髪をした20歳の女性、クリムが入ってきた。男性の宇宙服より細身の服は大人の体のラインを見事に見せつける。いけ好かない流し目、色気が目立つセリフにミラは鼻で笑う。

「そうでもないさ、結果はどうだ?」

「そうね。面白い結果が出たわ。アキラとアリスがいる座標‥‥。それは地球よ」

「地球だと?」

「ええ、アンドロイドの住処、母星を探していたけれど。私達の星だったなんてね。この成果は大きいわよ」

「種子島で拾ったこの船が地球に通信してるのか?」

「理由は分からない。けれど何らかの内通者はいたのかもしれないわね。考えて見て?地球外にいても地球と繋がれているのよ」

「こっちとしては好都合だ。アキラとアリスをまだ泳がすぞ」

その声を聞いてトモは「そんな‥」と腰を落とした。


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PLAYERS HI @hiroki18

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