187話『最終回か!?三つ巴』セリ編
ロックとラナと合流したいが、はぐれたんだよなぁ…
天使を捜しながらロックとラナも捜すコトになるのか
2人も俺を捜してはくれてるだろうが…とりあえずはぐれた場所に向かってみるか
と言うコトで、俺はフェイと2人でその場所へと向かっていた
和彦も用が済んだら合流するとのコトだ
こうしてフェイと2人っきりなんて、この頃の過去の俺からしたら死んでも無理って思ってただろうから今は無理どころか嫌じゃないって思うのは本当に色々あったんだなってつい最近のコトでも懐かしくなる
「……本当に貴方がセリさんなのか、私は疑います
私と2人っきりで嫌な顔ひとつしないなんて……」
フェイの反応は当然だ
そもそもフェイは俺が嫌がるのが好きだし、面白くねぇのかも
「しつこい奴だな、まっ信じねぇなら信じなくていいぜ
俺は未来の人間だから、未来のフェイがわかってくれればいいもん
過去のオマエは過去の俺がなんとかすればいいからな」
疑っていてもフェイは和彦に命令されたからには従うしかない
俺もそれでいい、疑われても過去のフェイを未来の俺がわからせるのは違うと思うからだ
過去の俺が未来を辿ってたどり着く先だろう
と思っていたら、急にフェイに強く腕を掴まれ引き寄せられた
そのままフェイにキスされて、ちょっと驚いたが強引なのはいつものコトだし慣れてる俺は受け入れた
「っ…セリさんが嫌がらないなんて」
唇が離れて、俺が微笑むとフェイは反応に困っている
「俺がフェイを騙している悪魔だと思うなら思えばいいさ」
「そうですね、あまりに都合が良すぎます
本当に悪魔に騙されているのかと思うくらい」
思っとけ思っとけ、軽く流すつもりだった
でも、フェイはいつもと様子が違って……
「未来の私は…セリさんの恋人というのは本当ですか?」
えっ?あっ、さっき恋人って大袈裟に言ってしまったんだった
本当は恋人じゃねぇし…
フェイは俺の腕を強く掴む
「それは嘘ですよね!?あの和彦様が私達を恋人同士だと認めるはずがありません!」
フェイの言う通り、和彦は恋人としては認めない
あくまでフェイが俺を寝取るだけ、その中でフェイは俺が好きで俺はフェイを受け入れた
未来のフェイはそれで納得してるような感じだった
だから、過去のフェイの反応に俺は戸惑う
「うーん、まぁ…和彦は恋人としては認めねぇけど、ある意味認めてるというか」
あまりに苦しそうに叫ぶから…なんて言っていいかわからない
ただ本当のコトを言うだけで、フェイはそれを受け入れられない
「なんですかそれ……期待させて
知ってましたよ……無理な事だと
なのに、貴方は期待させた
未来では無理ではなかったと…言ったのに!!」
俺の腕を掴むフェイの力が強くなって痛みを感じる
「ちょ、ちょっと落ち着けよフェイ!?
ウソついたのは悪かったって、謝るよ
詳しく話すと長くなると思って簡単に言っただけで…」
「………。」
フェイの手の力が緩むと同時にフェイの表情は冷たくなった
「ずるい…」
「えっ…?」
なんだかフェイの様子が…怖く感じて、俺は一歩後ろへ下がる
「和彦様から貴方を奪いたかった…」
いつも寝取ってたじゃんってツッコミする空気じゃねぇな…
「腕の一本なんてくれてやりますよ」
過去のフェイは俺に手を出したコトで和彦に腕一本取られてる
未来ではなんやかんやあって失った腕はあるが…
「命だって惜しくありません」
「フェイ!落ち着こうぜ!俺の大親友みたいなメンヘラになってるから!?普通に怖いって!」
目でわかる、これは病んでる目だ!!
レイのおかげでそういうの察知しやすくなってるような気もするぞ
「和彦様が貴方を殺してしまうなんて思いませんでした
ずるいですよね…」
フェイの手が伸びて、マズいと思った時には首を掴まれていた
そのまま強く後ろに押され地面に叩き付けられる
「私が貴方を殺そうと思っていたのに、横取りされた気分ですよ」
「はっ…?な、んで……っ」
フェイの手に力が込められて首が絞まっていく
俺を殺そうと?いや…そんなハズはない
フェイには殺したい願望はないって聞いてるんだ
コイツはいたぶるのは好きでも殺してしまうのは違うって
なのに、なんで…
意識が朦朧としてくる…今のフェイは本気で俺を絞め殺す気だ
「寝取るのは好きですけど、それ以上に私がセリさんの事が好きだからです
寝取るだけじゃ満足できなかったんです
恋人…なんて夢持って、無理だとわかっていたから諦めようとしました
でも、貴方を見ていると無理なら殺してしまえばいいと考えが過るんです
その後に私が和彦様に殺されても構わないと思うくらい」
「フェ…イ…苦し…っ」
力が抜けていく…
マジでヤバい…こんなところで俺は死ぬのか
この人生で死ぬタイミングが今だって言うのか
嫌だ……まだ死にたくない…ううん、もう死にたくなんかねぇのに…!
「諦めていたのに…期待させたから
もう一緒に死んでください」
いや…フェイ……助けて
意識の限界が来る前、うっすら意識の中で目の前でフェイの首が跳ぶ
その瞬間、フェイの手の力が緩んでそのままフェイの身体は横に倒れた
「はっ…!うっ…」
息を吹き返して咳き込みながら身体を起こす
……そ、そんな…
「フェイ…そんな……」
殺されかけたとは言え、フェイが目の前で死んでいるのを目の前にして息が詰まるくらいショックを受ける
「フェイ…いや……死なないで…」
いくら過去の世界で、元に戻せばいいと頭ではわかっていても割り切れない勝手に涙が溢れる
即死は俺の回復魔法は役に立たない…死人は生き返らせられないんだから…
「セリ」
俺の名前を呼ぶ声に顔を上げる
香月…が俺を見下ろした
あぁ、そうか…香月が助けてくれたのか
過去の香月はまだフェイのコトを知らない
俺が殺されると思って助けてくれただけで、香月は何も悪くない
「香月…ごめん…」
助けてくれてありがとうとは言えなかった
俺がちゃんとしてなかったからフェイが死ぬコトになってしまった…
和彦になんて言えばいいんだ
「はっ!?」
強い殺気を感じて、俺は本能的にその場から跳んで離れた
俺のいた地面がえぐれている
回避できたのは偶然でも運がよかったからでもない
本能から動けるのは、相手が魔族か魔物の時だけ…
「香月!?なんで…」
魔王の香月が俺に攻撃を?
過去の香月は今の肉体は人間でも魂は魔王だ
「何故?私が魔王で貴方が勇者だからです」
いやそうだけど、そういうの超昔に終わったじゃん俺達!?
仲良くしてたの忘れたのか!?
……あっ思い出したわ、過去の香月はなんでか人間として生まれ変わってしまって
完全な魔王に復活したいがために俺に一度殺してもらおうとしてたんだった
香月…魔族は勇者にしか殺せないから、俺に殺されようと戦いを挑んできたっけ
話しても俺が殺せないと考えたんだと思う
まぁそう、俺は香月を殺せない
だから命がけで戦えば俺も命がけで応えてくれると考えた
まぁそう、俺だって殺されそうなら殺すよ
その時は前世の記憶もなかったから、ただの敵として戦う
「今はやめようぜ!?後で相手してやるから!(過去の俺が)」
ピュッと俺の目の前で風が切る
無意識に後ろに下がっていて助かった
カミソリ状の鞭か…当たったら痛そう
まぁ回復魔法で無痛だから痛くねぇけどな
ダメだ、香月はやる気満々だ
人間の香月は本来の魔王の見えない力は使えないんだったな
それならまだやれるか…いや、でもいくら今は人間とは言え手加減で簡単に勝てる相手じゃねぇ
でも、おかしくねぇか?
確かラナから話はいっていて、香月は天使を捜すのに協力してくれていたハズだ
なのに、偶然俺を見つけたからって今戦うか?
「香月!待って!?」
ゆっくり考えようにも香月の本気で俺を殺す攻撃の怒涛さを捌くのにいっぱいいっぱいだ
さすが香月だな…人間の時でもかなり強い
こっちも本気にならないと殺されるかもしれねぇ
「余裕ですね、本気で来ないと死にますよ」
余裕ではない…
面倒だな、どうせ香月は魔王として復活する
今殺しておくか?
なら、本気出すか…
香月の攻撃を避けて下がる一方だったが、香月の攻撃を避けて踏み込むコトにした
あっという間に間合いに入って香月の首元へ勇者の剣を突きつける
過去の俺ならもっと苦戦するだろうが、未来の俺はレベルアップもしてるんだぜ
「……迷っていては私は殺せません」
言われて、自分の手が震えているのに気付く
迷うに……決まってんじゃん
香月を殺すなんて……過去の繰り返しでもやりたくない
好きな人…恋人を殺すなんて……
俺が恋人に殺されてどんな気持ちだったか…
それを俺にやれと…言うのか
香月を殺すコトはできない…俺は勇者の剣を下ろした
「殺したくなんか…ないよ
だって俺達恋人同士じゃん…なんで殺し合わなきゃなんねぇの…」
「あぁ、未来のセリだから記憶があるんでしたね」
「そう!そうだよ香月!
香月のコト好きだから殺せないよ!」
想いを叫んでも香月には届かなかった
俺の片腕がスパッと切れて吹き飛ぶ
距離を取って切られた片腕を反対の手で押さえる
「なら、迷いのないセリに生まれ変わってください」
……容赦ねぇのな…冷たくて泣きそうだ
感情のない香月に感情をぶつけたって揺らぐワケない
でも、迷いは…香月にもあった
この程度のダメージは俺が避けたからじゃない
香月なら正確に心臓を貫くコトができた
なのに微かに避けた
即死じゃない限り俺の回復魔法は一瞬でどんな怪我も治せる
片腕を治しまた勇者の剣を向ける
殺せないなら…逃げる隙を作るまでだ
俺の目的は香月に立ち向かうコトじゃねぇ、天使を見つけだすコトなんだ
とにかく香月の動きを止めるしかないと考えた時、地面が大きく揺れて目の前まで割れる
砂埃が舞って視界が悪くなる中で知ってる声が聞こえた
「オレの攻撃を避けるなんて、あんた何者だ?」
この声は和彦…?
後から合流するって言ってたから、この状況を見て助けてくれたのか?
相変わらずの馬鹿力、人間じゃねぇぞホントに
砂埃が落ち着くと和彦が目の前に立つ
「和彦、助けてくれてありがたいがここは俺が…」
影が被る…和彦は俺に向かって斧を振り上げる
なんの冗談だ……?
振り下ろされる前に香月が和彦を攻撃して、それを避けた和彦が俺から距離を取る
3人同じ間隔の距離で誰か1人でも動けば誰かが死ぬような緊張状態となった
俺の内心はパニックだ
和彦が…いや和彦まで俺を殺そうとしてる?
なんでだ…さっきまで普通に喋ってただろ!?
どうして急に……フェイも……みんな……
とにかく…今はこの三つ巴をなんとかしなきゃ
こんなの突然の最終回!?最終回なのか今日!?
香月と和彦が本気でぶつかったら世界潰れるだろ!?終わりだぞ!?
冷や汗を拭うコトもできねぇ…2人から視線を逸らすコトもできない
1つ考えられるとしたら…
俺の運命がみんなを暴走させているのか?
さっきのフェイも、フェイらしからぬ言動だった
前の世界で俺を殺した和彦だって、あの時の自分はどうかしてたって言ってたんだ
この過去の世界は、もしかしたらあったかもしれない未来のひとつだ
遅かれ早かれ運命は俺を殺しに来る
それがこの過去の世界では早く来てしまっただけってコトなのか?
クソ…こんな時に面倒だな
俺はこんな所で死ぬワケにはいかねぇんだ
天使を見つけ出し説得して、過去の何もかもを元に戻して未来に帰る!!
みんながいる未来に…絶対帰るんだからな!!
……膠着状態から、少し指を動かしただけなのに香月と和彦は俺に襲いかかってきた
だが2人は目の前で動きを止める
……危なかったが…なんとか上手くいったみたいだな
「俺は…ビビってなんかいねぇけど、オマエら近すぎ」
そう言って俺は2人に対して下がれって手をシッシッと振った
ひぇ~…正直ビビったね、普通に死んだかと思ったぜ
大悪魔シンの契約の俺が表に出ると2人は憑き物でも落ちたかのようになる
一か八かだった…
俺は回復魔法は使えないし、勇者の力もない
そんな俺が表に出たら死亡率が上がるだけと思って大人しくしていたが
この2人の暴走が勇者の運命の影響だとするなら…勇者じゃない大悪魔の契約の俺じゃなきゃ回避できなかった
まぁ大悪魔の契約じゃなくても、勇者じゃなければなんでもいいかもしれねぇが
勇者の中に生きていてもいいと言われたのは俺だけだし、むしろ俺以外許さねぇし
レイに愛されていいのは俺だけだから無理
ハッ!ついすぐにレイのコトで頭いっぱいになっちゃうけど、今はコイツらが落ち着いてくれてとりあえずは命拾いしたか
「セリ…くん…じゃないな、あんた」
和彦はすぐに俺が勇者じゃないコトに気付く香月も口に出さないだけで同じく気付いてるだろうな
「まぁね、説明は面倒だから俺が何者かなんて言わないが
俺が表に出たコトでオマエ達の大切な勇者が助かったコトを感謝しろよ」
「……さっきの感覚…あの時と同じだった…
また繰り返そうとしていたなんて…」
俯く和彦の表情は見えないが、なんとなく察してしまう
未来の世界では和彦は前の世界で勇者を殺したトラウマを乗り越えたのを俺が目の前で見ていたからだ
勇者はそのコトを知らない
別に和彦のコトなんてどうでもいいが…あの和彦のこんな姿はあまり見たくないな
未来と違って乗り越えられなかったんだ
「あの感覚が、セリの変えられない運命の影響……
これでは簡単には逃れられませんね…」
香月は相変わらずの無表情で何考えてるかどんな感情なのかわかんねぇな
香月が言うには、香月自身は勇者の運命の影響を受けたコトがないようだ
魔王と勇者の関係だから、殺したコトはあってもそれは香月自身の意思
でも、今回のこの世界では香月は人間として存在している
未来ではなんやかんやあって魔王に戻ったが
魔王ではない過去の人間の香月は影響を受けてしまって暴走してしまったとのコトだ
つまり、勇者の運命の影響を受けるのは魔王以外と言うコトか…
未来ではみんな影響を受けていないように見えるが……誕生日を迎えるまでは安心できねぇよな…
いや、もし誕生日を無事に迎えたとしてもその後を生きれるかどうかもわかんねぇぞ
はじめてのコトなんだから、運命に抗うのも、その先を生きるのも……
別に勇者の心配なんかしてねぇけど!?勇者が死んだら中で生きてる俺だって死ぬからだし、死んだらレイに会えないからそっちの心配だからな!!
まぁ…悪魔の契約の俺を受け入れてたまに身体貸してくれるから……ほんのちょっとは感謝してるつもりだし、恩はあるから……
「その感覚、俺にはわかんねぇけど
どうにかできねぇの?迷惑なんですけど」
この2人が本気で殺しに来たら絶対死ぬしかないってくらい絶望なんだよ
魔王と勇者の力は互角で万が一勝てたとしても、和彦にはどう足掻いても勝てねぇから死亡確定なんだよ
和彦じゃなくても勝てねぇけどさ
さっきフェイにマジで殺されると思って最終回覚悟してたぜ
「どうにか…できていたら、さっきセリくんを襲ったりしない」
「オマエでどうにかできないなら、そのうちオマエか誰かに殺されるぞ
ちなみに、香月はそのうち魔王に戻れるから自分が勇者を殺すって心配はないぜ」
俯く和彦には追い討ちを、香月は心配してるのかしてないのかもわからないがとりあえず安心させとこう
俺がそう言うと和彦は黙り込んでしまった
………おいおい、いつも自信満々でプライド高い最強の男がどうした??
うーん……別に心配じゃねぇけど……ちょっと屈んで下から和彦の顔を覗き込む
「……大丈夫か…?
和彦がそんな調子だと、こっちも調子狂うぞ…」
影で表情はよく見えない、すると和彦はガッと俺の首を片手で掴んで自分の目の前まで引っ張り寄せた
「お前が誰だか知らないが感謝する
セリくんの顔見たら、なんとかするしかない
もう二度と殺さないから…もうあんな想いをさせない」
ハハ…嫌な奴、いつでもやっぱ自信たっぷり
でなんでもできちまうもんな
和彦は運命に抗える力を持ってる
そして、香月は運命そのもの…呪われた運命じゃなくて結ばれた運命
「今度こそ、なんとかなるかもしれませんね
どちら様か知りませんが、セリに友人なんてはじめてですし
セリの中にいる大悪魔の契約の貴方もいるなら、いつもと違う事で運命が変わるきっかけになるでしょう」
さすがは香月…俺が何者か名乗ってねぇのに見破ってくる
今は人間とは言え魂は魔王、普通の人間じゃねぇな
あっ和彦も普通の人間じゃなかったか、正真正銘の人間なのに人間辞めてる
「あ?オレがセリくんの友人?違うけど?
あんたこそ誰か知らないが、オレはセリくんの恋人だ」
「私はセリの恋人です」
あーオマエら初対面なのか!?ややこしいタイミングだな!?
バチバチにやり合うのか!?と思っていたら
「……この男がセリくんの言っていた恋人の1人なのか……へぇ」
寝取られフェチの和彦は勇者が自分以外にどんな男を選んだのかと香月のコトを観察するように見る
「ふんふん…セリくん好きそう」
香月は勇者のめちゃくちゃ好みのタイプだからな
俺はレイだけが好みのタイプだから!!
今更だが寝取られてるコトにニヤニヤしてる和彦ヤバいだろ
俺は寝取られとか寝取りとかよくわかんねぇ…何が良いんだ?
香月は香月で感情がない、つまり嫉妬や独占欲とかもないから自分以外とどんな関係なのかも気にならない
俺は嫉妬も独占欲もあるからレイが俺以外なんて絶対無理なんだけど!?
いつも思うが勇者の人間関係って複雑だよな
「まっとにかくオマエ達が落ち着いてくれたみたいでよかったよ
後は天使を見つけて」
と言ってるだけで捜す手間は省けた
視線の先には天使とラナとロック、そして今回のコトの事情を知ってる仲間の姿があった
天使が笑顔で手を振って走ってくるのを見て、なんか上手く解決したんだろうなって雰囲気が伝わってくる
「あれがセリくんの捜していた天使か」
「本当に見た目はそっくりですね」
天使は勇者と話しがしたいだろう
俺は引っ込むか…と和彦と香月に視線を送ると2人は察してくれた
「それでは未来でまた」
「未来のオレによろしく」
香月と和彦はそう言い残して去っていった
勇者の意識を戻したら2人がまた暴走する可能性があるなら、傍にはいられない
でも、未来は暴走しないって信じてる
「セリくん!よかった無事で」
みんなより先に走って俺の前に来た天使は、もう思い詰めた顔はなくてまっさらな笑顔が似合ってる
それじゃあ勇者に戻るか…契約の俺は意識を引っ込めた
ハッと意識が戻ると目の前に笑顔の天使がいた
契約に身体を貸すのにも慣れてきたからか、意識が戻ってからの一瞬でなんとなく状況を把握するのも慣れてきたな
香月と和彦がいなくて俺が生きてるってコトは契約が表に出てきてくれて上手く収めてくれたんだろう
そしてなんやかんやで天使達と再会できた
俺の運命が周りを狂わせるコトに思うコトはあるが……今は天使に向き合う時だ
「天使…オマエも元気そうで」
「あの!セリくんごめんなさい!!」
俺の言葉を遮って天使は頭を深く下げた
「セリくんのコト巻き込んで危険な目に遭わせて、本当にごめんなさい!!」
「セリ様どうかお許しを!天使は騙されていたのですわ!何も悪くないんですの!!」
セレンは跪くが女神のセレンは背が高いから俺を見下ろす形になった(女神でも結夢ちゃんは人間サイズ)
でも真剣さも天使を心配する気持ちもちゃんと伝わってる
「俺は」
と口を挟めなかった
「違うよセレン様!騙されても俺が勘違いしてやったコトだから俺が悪いんだよ」
「騙した大人が悪いのですわ」
「それって俺のコト子供扱いしてる!?」
天使とセレンが譲らない言い合いをしてる間に、セリカから何があったのかを聞いた
なるほど…天空…いや、本名で呼ぼうか
あのクソ野郎だいごろうの仕業だったんだな
天使が結夢ちゃんを救おうとしてのコトだった…
助けられるなら助けたいって気持ちはわかる
俺だって、そうだ
でも…過去は変えられないって知ってるから
自分でなくなってしまうってセリカの件でわかった
だから、今助けるよ
本当に結夢ちゃんのためになってるかどうかわからないけど…
俺が結夢ちゃんに視線を向けると、優しく微笑んでくれる
心配したと安心したと伝わる表情
話せない結夢ちゃんから言葉として伝わるコトはなくても、きっとこの微笑みは間違いじゃない
「天使、俺は怒ってないから許すも何もないよ
セレンの言う通りオマエを騙したアイツが悪いんだ
いや…俺が悪いのかも
だいごろうは俺に恨みを持ってる
そのためにオマエを利用したってコトは俺が巻き込んでしまったんだ
謝るのは俺の方、すまない天使…オマエにこんなコトをさせてしまって」
だいごろうの奴はこれからだってありとあらゆる手を使ってくるだろう
なんとかしなきゃ、また親しい人が犠牲になる
「セリくん…でも」
「それに今回のコトは本当の過去じゃないって話だし、何も変わってないなら何もなかったのと同じだ
もう気にするな、天使は笑ってないとみんな心配するから」
天使が振り向いた後ろにはみんなが心配して見守ってる
俺が笑ってって言うと、天使は少し笑う
みんなが安心したように笑うと天使は笑顔を取り戻した
「セリ様も無事でよかったし天使様も笑顔を取り戻して一件落着っすね~」
「でござるな」
はぐれてる間にラナとロックは天使を見つけてくれてすっかり仲良くなってるな
まぁ天使は基本的に誰とでも仲良くなれるタイプか
懐かしいな……ラナとロック…未来ではいない2人…
久しぶりに、過去の夢の魔法でも会えてよかった……
「ラナ、ロック…」
俺は2人の手を掴む
「天使を見つけてくれてありがとう…」
話したいコトはたくさんあった…でも、そのたくさんの何も言えなかった
どうしようもなかったとは言え、結果的に俺が殺してしまったラナに謝りたいとか
ロックとローズを助けられなくてごめんとか
今まで色んなコトあったって友達みたいに話したくても話せない
「改まってどしたんすか?セリ様」
「彼氏持ちのおなごと手を繋ぐなどとは破廉恥でござる!!」
ラナもロックも、らしい反応をする
ずっとラナとロックは大切な仲間に変わりない
「ううん…なんでもねぇよ」
笑って2人から手を離す
そろそろ時間かな…
こうして俺は天使の魔法から解けて深い眠りから目を覚ますコトができた
寝ていただけと言われても、記憶もしっかり残ってるし感覚もあったしリアルと変わらない時間過ごした気分なのに
こっちではそんなに日が経っていないとのコトだ
天使のやらかしに、天使の世界のイングさんとせりかさんに改めて謝られたけど俺は本当に気にしてないからと逆に俺が巻き込んだと謝った
2人が帰る後ろ姿を見ながらイングヴェィは俺に教えてくれる
「セリくん、君とセリカちゃんを運命から助けるヒントを貰ったんだ」
「えっ…?」
急に言われて思考が止まる
運命を助ける…?運命が変わる……?
これまで生まれ変わっても同じような運命を繰り返し続けた自分の運命が変わると言われても想像ができないからだ
生まれ変わる度に記憶はリセットされるけど、今の俺は前世の宿で全ての前世の記憶を持っている
今回はいつもとは違うかもって期待はあっても、気の遠くなるような似たような運命に諦めのようなものもあって……どうせ変わらないのだと思う自分もいる
「俺がね、君達の運命を変えられる力を持ってるみたいなんだ
ううん…きっと変えるコトが運命なんだと思う
だから、俺はセリカちゃんと出逢ったんだもん」
イングヴェィの太陽みたいな笑顔を見てると、諦めの負の感情のモヤモヤが晴れるようだ
やっぱり前に香月と考えていた通り、俺とセリカの運命の鍵はイングヴェィにあるのか?
「変えられる力…って?」
「それは……まずは俺の失った力を取り戻すコトから!!」
あっこの口振りはまだちゃんとわかってないやつだ
でも、俺は…セリカはイングヴェィを信じてる
「絶対救ってみせるから安心してね」
イングヴェィは両手で俺とセリカを引き寄せて抱き締めた
その言葉は嬉しい、イングヴェィなら出来るだろうな
でも、それはいつかだ今回必ずとは限らない
それでも、希望があるだけ救われる
絶望の運命から……
「イングヴェィ、俺も一緒に抱き締めなくていいからセリカだけ抱き締めてやって」
俺はそっとイングヴェィの腕から離れる
別に嫌なワケじゃねぇけど、もっと2人の仲深めた方がイングヴェィの失った力が戻ったりしないかな~なんて
俺が離れるとセリカもイングヴェィの腕の中から離れた
「セリカちゃん…」
イングヴェィが残念そうに寂しそうな声を出すから
「照れてるだけだって」
と後押しする
セリカだって内心イングヴェィに抱き締められて嫌なワケじゃない
でも、セリカは俺だけど俺と違ってそういう時どうしたらいいのかわからないんだ
心の方もな……
「照れてません!」
セリカが敬語で否定するなんて不自然だ
だから俺はセリカがちゃんと誰かを好きになってそれを受け入れられるように協力する!!
恋も愛も素敵なんだって、俺を通じて知ってるハズなんだからセリカにもそれを心からわかってほしい
俺がわかるんだからセリカだってわかる
セリカは俺なんだから…だろ?
「前はね、俺の気持ちばかり押し付けてセリカちゃん大好きって気持ちのまま抱き締めちゃってたけど
今はセリカちゃんの気持ちを大切にしたいの
さっきは気持ちが高ぶってついつい抱き締めちゃったけどね」
大人になったなイングヴェィ…何百年も生きててやっとかって感じだが
みんな成長してるんだな
「嫌じゃないんだけど…どうしていいかわからないの」
俺はセリカだからセリカの気持ちがわかるからこそ、自分としてのアドバイスは必要だよな!
「そんなの簡単じゃん!抱き締められたら抱き締め返したらいいし、好きって言われたら好きって言えばいいんだよ」
って言ったら冷たい目で見られた
「私はセリくんと違って誰にでもそんな風に出来ないし言えないわ」
自分にビッチだと思われてるの辛すぎ!?いや自覚あったわ!!
「俺だって誰にでもはないわ!!!!
香月と和彦とレイとフェイだけだから!!」
「それを誰にでもって言うのよ」
確かに、ある意味
「まぁまぁ、セリくんはセリくんでセリカちゃんはセリカちゃんのペースで良いんだよ」
「いや待てよ?イングヴェィは優しすぎる!男なら強引にいけー!!」
イングヴェィとセリカの仲がちんたらしてたら死ぬのが先になるかもじゃん!?
「セリくんは強引な男好きだもんね」
全部自分に返ってくる………うん4人ともそう
「……私も、嫌いじゃないけどね…」
とセリカは小さく呟きイングヴェィから目を逸らした
気付いたけど、イングヴェィが大好きって抱き締めてくれてた時も戸惑いはあっても心から嫌ではなかった
身体が固まってしまうのも、どう反応していいかわからないのもある
それがなんなのか自分でもわかってない
怖いのか?と錯覚してるだけで、本当に嫌ならイングヴェィの存在を消すコトだってできる
セリカに嫌われたらイングヴェィは存在できない
それがイングヴェィの運命だからだ
「ふふ、それじゃあ俺は行くから2人の邪魔はできねぇしな」
「えっ?セリくんのコト邪魔と思ったコトなんてないよ」
優しいイングヴェィが好きだけど、そういう意味じゃねぇんだよ!?俺が気を遣ってんだよ!?
「俺はこの後用事あるから!(とくにない)」
「そうなんだ、じゃあまたねセリくん」
バイバイと手を振ってさっさと2人から離れる
うーん…あの2人の仲が進展するには後10回くらい生まれ変わらないと無理かもしれないと思ってきた
イングヴェィも初恋だし、恋愛レベル1だもんな
初恋が攻略するにはセリカは難しすぎるかも
でも!俺も協力するし!!セリカには幸せになってほしい
それから数日後、レイと会ったのは久しぶりだった
レストランで食事しながら天使の魔法で過去の世界にいった話をした
もちろんそれは夢で本当の過去ではないと言うのも
「オレがいない間にそんな事が…」
「うん、スゲー懐かしかった
はじめてレイに会った時のコトとかも再現されてて」
「はじめてセリに会った時の事か…懐かしいな」
「あの頃はスゲー楽しかったな、レイは俺の大親友だった」
懐かしいと思いに馳せると無意識に言葉が出てしまった
「……今のオレといても楽しくないかい?」
目の前のレイはもう大親友ではなくて、昔のような付き合い方はできない
懐かしいと、あの頃と今を比べて俺はどっちがいいかなんてそんなの決められない
どっちも同じくらい大切だから、あの頃に戻りたいとも思わないし戻れない
「昔と今は違うよ
昔の俺は昔のレイが良いし、今の俺は今のレイが良い
今の俺が昔のレイとは一緒にいられねぇよ」
隣に座るレイの手を誰にも見えないようにテーブルの下で握る
「…昔も手は繋いでいたと思うぞ」
そうだった!!?レイも俺も友達いなかったから距離感とかわからなくて周りからバカップルと思われるくらいの距離感でなんかイチャついてた気がする!?
「もしかしてあんま変わってねぇ!?」
いや、さすがに大親友時代にキスはしなかったけどさ!?そこは友達いなくてもわかるからな!?
「変わったさ、昔はもっとセリからくっついてくれていたのに今はオレからばかりじゃないか」
「それは…俺達まだ恋人同士じゃねぇし…
でも大親友でもなくなったし…」
気まずい沈黙……レイは不満なんだ
俺にもっと甘えてほしいって思ってる…
だからレイの理想そのものの契約はレイに甘えまくってるらしいし
それをレイは望んでるんだろうけど、なんか……恥ずかしいじゃん
そんなのあんまりしたコトねぇし…
たまに香月や和彦に甘えるコトはあるが、聞いた話で契約みたいにベタベタ甘えるようなコトはしない
「…あっそうそう!今回は契約が俺を助けてくれて、だからアイツのコト褒めてやってくれよ」
気まずい沈黙を破って空気を変えるつもりだったが
「へぇ」
まったく興味なし!?余計に空気重くなった!?
「オレはセリと話してるんだ
あいつの事はオレに任せてくれていいから気を使うな」
気を使ったつもりはないが…実際にあった話をしただけなのに
レイは契約のコトを受け入れてるけど、俺が契約のコト話すのはあまり好きじゃないみたいだ
「えっと…そうだ、ラナとロックにも会ったよ」
「ラナとロック……」
「2人とも変わらなかったよ
懐かしくて…」
思い出すと胸が苦しくなる
そんなタイミングで天使に声をかけられた
俺を探していたらしい
「セリくん見つけた~!」
天使の声に俺は気持ちを切り替えた
泣きそうになる顔なんて見せられねぇ
「天使、どうしたんだ1人か?」
「うん!だってセリくん探してたんだもん
ねぇねぇ、過去の世界で会ったロックとラナに会いたい!!
結局あれは夢だったからロックとラナは俺のコト知らないけど、2人とは未来でも友達になるって約束したんだ」
天使のまっさらな笑顔は俺の心に突き刺さる
そうだ、ロックとラナは天使を見つけて手助けしてくれてた
天使が2人を大好きな友達と思って当然
どうしよう……なんて言えば……
「ロックとラナは死んだ」
俺が言葉に迷っているとレイが答えた
「えっ……?」
天使は一瞬言われた意味が理解できなくて首を傾げたがすぐに怒った
「酷いレイ!いくら俺が嫌いだからって死んだなんて冗談はよくないよ!!」
「オレは天使が苦手だが、そんな冗談は言わないぞ」
天使もレイが自分を良く思っていないコトはわかってて、でもレイは誰かが死んだなんて冗談は言わない人だとはわかってる
「待ってレイ、その話は俺からするよ」
なんて言えばいいか考えてる時点で俺は天使を子供扱いしていたな
ここはちゃんと本当のコトを話さなきゃ、天使が2人を大切な友達と思ってるからこそ
「ロックはローズと一緒に魔族の襲撃のどさくさに紛れてタキヤに、ラナはタキヤのゲームに巻き込まれて俺を助けるために俺の手で…死んだんだ」
あの時のコトを思い出すのは辛い、それを天使に伝えるのも…
「そ…っか……」
天使のコトだから泣いてウソだと叫ぶと思ったが、悲しみに視線は落とすものの意外にも冷静だった
「これまでロックとラナがセリくんと会ってるの見たコトなかったから、変だなって感じてたよ
未来でも友達になってくれるって約束果たせなかったのは残念だけど」
「天使…
どっちも俺のせいだ
俺がタキヤと揉めなきゃ2人は生きていた」
「2人ならセリくんを責めたりしない
ロックもラナも、セリくんのせいなんて思ってないよ
タキヤと関わらなきゃ2人は死ななかったかもしれないけど、タキヤと関わらなかったら結夢ちゃんを救えなかった
どっちがなんて選べないけど、その時に未来がどうなるかなんてわかんないじゃん
その時、正しかったと思って結夢ちゃんを連れ出したんでしょ」
子供と思っていた天使も少しずつ成長してる
自分だって悲しいのに俺を励ましてくれるなんて
「タキヤと決着をつけて、結夢ちゃんを助けるにはセリくん1人じゃ無理だね
俺も結夢ちゃんを守りたい、だからセリくんに協力する」
天使が俺の目の前に手を差し出す
俺はいつもの天使と違う心強い一面を見て少し驚いたけど、すぐにその手を掴んだ
「うん、ありがとう
天使がいてくれたら心強いよ
カニバもアイツのやり方で協力してくれてるし、絶対に上手くいくような気がする」
天使はニッコリと笑ってみせて
「ロックとラナの敵は取るぞー!!」
エイエイオー!と天使の元気さに振り回される
俺だってロックとラナの敵は取りたい
だけど、カニバがやってるコトはタキヤの改心だ
俺は天使もだが、タキヤを許せない
いつかカニバと衝突しちゃうんじゃないかって心配もある
この先、タキヤとのコトを上手く決着つけるコトができるのか?
-続く-
運命の世界 Celi @celi18
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