メリーさんの電話 〜間違えてしまった物語〜
くゆ
第1話
ーープルルルル、プルルルル
今年春に買い換えたばかりのスマートフォンが振動し、着信を伝える。
ーー俺は一度も触れていないのに、だ。
通話が始まった事を音で示すスマートフォン。
勝手に通話を繋げたその四角い電子機器からは僅かなノイズと、
「もしもし、私メリーさん。 今、貴方のマンションから二つ目の駅にいるの」
◆
貴方は「メリーさんの電話」という怪談を聞いたことがあるだろうかーー
日本人なら誰もが一度はその話に耳を傾け、恐怖に身を震わせたものだと思う。
話自体は至ってシンプルな内容であり、それ故に地の底から湧き上がるような本能的な悪寒を抱く、そんな怪談。
◆
「もしもし、私メリーさん。今〇〇駅にいるの」
ある休日の朝、たまたま両親が出掛けていた為にお留守番をしていた少女の元へ一本の電話が掛かる。
二階にある自室で勉強机に向かっていた少女は階下から鳴る家電話の着信音に気付き、慌てて階段を下っていった。
リビングに置かれた父親のパソコンの隣にある家電話を取って耳に当てた少女。
「はい」と言いながら耳を澄ますとーーザザザザ! と今時珍しいノイズと共に、聞いたことのない女の子の声が聞こえてきた。
(誰だろう……?)
一人っ子である少女に電話を掛けてくる女の子など友人以外には居ないはず。
少女は首を傾げながら相手が喋るのを待つ。
「もしもしーー」
鈴の転がした時の音をそのまま声にしたような可愛い声。少女は僅かに驚きつつもやはりこんな声は聞いたことがないな、と疑問に思う。
(取り敢えずは名前を聞こうかな)
そう思った少女は、電話のお決まり、つまりもしもしと返そうとしたのだがーー
「もしも
「私メリーさん。今〇〇駅にいるの」
ガチャリッ!
少女の挨拶は容赦なく遮られ、感情を感じさせない声で一方的に何かを告げられる。
「ぇ……?」
先程よりも強い驚きを受けた少女に聞こえるのはツー、ツーという電話が切られた事を示す音だけ。
受話器を元に戻しながら少女のはイタズラ電話だった、と判断を下し勉強に戻ることにした。
(お母さんもこないだイタズラ電話が多くて困る〜〜って言ってたっけ。まああまり気にしなくていいのかな?)
ぴょんぴょん! と階段を飛び跳ねながら少女は自室へと入った。
しかしその歩みは部屋の中央で止まる。
「〇〇駅ってよくA子ちゃんとかと遊びに行くところだよね? ……さっきの子、なんでそんな事言ってきたんだろう」
急に浮かび上がってきたギモンと、寒気ーー
ぶるるっと身体を震わせた少女は、改めて勉強机に座ったのだった。
******************
「んーっ! やっぱ勉強は疲れるなぁ……。でもテストも近いし頑張らなきゃ」
謎の電話から約三時間後、ひと段落ついたのか少女は思いっきり伸びをしながら嘆息した。
そして机から椅子を引き、くるくると回り始める。
「ってもう十二時? 意外とやってたんだなぁ、私。……お腹も空いたしお昼にしようかな」
壁にかかった時計を回転しながら確認した少女は徐々に緩やかになっていく椅子に身を預け、速度が緩やかになったところで立ち上がる。
またもや気持ちよさそうに伸びをした少女のお腹がきゅるるる、と鳴った。
若干赤面した少女はまたもやぴょんぴょん跳ねながら階段を降りるのだった。
台所でエプロンを身に付けふんす!と気合を入れるのは頭も手拭いで包んだ少女。
目の前には鍋やらフライパンが積み重なっており、少女の様子と合わせて見る限り恐らく料理は手馴れていないのだろう。
ただそれでも必死にネットでレシピを調べ、冷蔵庫の中身を確認する少女はある種の可愛らしさを感じさせてくれる。
やがてつくるものが決まったのか、少女は人参やピーマンなどを冷蔵庫から取り出し始めた。
これ又慌てて取り出したボウルの中に全て一緒に突っ込み、じゃばー!と水をかけて揉みくちゃにしていく。
少女的には頑張って洗っているつもりなのだろうが何故か野菜が後方に跳ねていく上洗っている野菜は殆ど洗う必要がないもの。
それに気付かず続ける事約五分ーー
少女は一部原型を留めていない野菜を見て「ま、まあ切らないてよくなったってことでいいよね……」などと呟きボウルの中身をまな板にぶちまける。
だがボウルに入っているのは野菜と水であり、そんな事をすれば水も出てしまい、案の定キッチンの床は水浸しである。
それを意にも介せず少女は包丁を手に取った。
きっと少女には野菜しか見えていないのだろう。色々な野菜がごちゃ混ぜになっている状態のまな板に、両手持ちの包丁を叩きつけ始めた。
人参は持ち前の形で振り下ろされる刃を往なし、ピーマンは両断された上でその身を空中に踊らせる。
いずれもいずれも全てが失敗に終わり、それでも少女は諦めない。
例え調味料の蓋が開いてしまって中身が飛び出てしまっても、隠し味と言いながら間違えてメロンを入れてしまっても。
紆余曲折の末、遂に鍋へ具材諸共全てをぶち込んだ少女は溜息をつく。
「初めてにしては上手く言ったんじゃないかな?」
台所は大惨事としか言い表せないくらい
どこをどう見て成功と言えばいいのか理解しがたいがそこはこの際放っておこう。
「うん、あと十五分くらい煮込めば美味しい野菜スープになるって書いてあるね。ふふっ楽しみだなぁ♪」
そんな事を言いながら手拭いやエプロンを脱いでいく少女はポケットにしまってあったスマートフォンに触れーー
ーープルルルル、プルルルル。
「ひゃうっ!? ……ってまた電話かぁ」
いかにも女の子らしい悲鳴をあげた少女は安心したようにほっと息をつき、台所の横のパソコン、の更に横へと向かう。
(う〜っ、つい昨日怖い話をテレビで見ちゃったから一人って怖いんだよね……)
いつも仲の良い少女の両親は其れだけにお出掛け、もといデートをする事が多い。家ですらもいちゃいちゃする、少女はそんな両親がとても好きだった。逆に両親の方も少女のことをお互いの愛の結晶だと深く愛していたし、デートへ連れて行く事も多々ある。
そんな両親だが、今日は一泊二日の結婚16年目旅行!に出掛けているため少女は家に一人なのだ。
それ故少女はいつも以上に
ーープルルルル、プルルルル
早く取れと催促するように、無機質で冷たい音を響かせる受話器。
「はいはーい」
果たしてダレからの電話なのか。またイタズラ電話だったらやだなー、なんて思いながら受話器を耳にあてた少女だったがその考えは見事的中することとなる。
偶然かどうかは少女の知る由もないが、少女が受話器を耳に当てた瞬間を見ていたように聞こえてきたのはーー朝と同じ声。
「もしもし、私メリーさん。今お洋服屋さんにいるの」
ーーガチャリ!
ツー、ツー
虚しく聞こえてくる電子音に少女は何も言い返せず、ただその電話を、そのメッセージを受け取ることしか出来なかった。
「またあの子だぁ……。今度はお洋服屋さんって駅前のところだとすると、朝よりも私の家に近づいてる? うぅ、ちょっと怖いかも……」
のろのろと受話器を戻す少女は身震いしながらパソコン前の椅子に座った。自室の椅子と同じように回るような仕組みになっているその椅子も回しながらーー
(メリー、って何処かで聞いた事がある気がする。なんだっけ……?)
【メリーさん】について考え始める。
くるくる、くるくる。くるくる、くるくる、くるくる、くるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるーー
「……うっ、ちょっと気持ち悪い」
自らの行動の結果吐き気を催した少女の頭には、幼い頃少女が遊んだ西洋人形が浮かんでいた。
******************
日が沈み、レースのカーテンがついた窓からは橙色の光が差し込んでいた。
既に夕暮れ。時刻にすれば四、五時といったところだろう。少女の、少女らしく飾られた部屋の中でその部屋の持ち主は今透明な割と大きめの箱の中身を漁っていた。
「んー、やっぱり無いかぁ……。メリーさんには随分一緒に遊んで貰ったんだけどな……」
少女が今探しているのは、小学校に入るか前からその数年後くらいまでお気に入りだった小さな人形である。
母親に買って貰った人形に少女が付けた名は、メリーさん。
ストレートな金の髪の上にフェズと呼ばれる黒い帽子を乗せ、茶色っぽいセーターを萌え袖にして着こなすその人形は少女を大いに魅了した。
くりくりの蒼眼も、雪のように白い顔も。膝下まであるお洒落なブーツも、首からかけた赤い携帯電話も。
メリーさん、メリーさん。
少女はいつもそう言いながらおままごとやらお着替えごっこやらを楽しんでいた。その様子は微笑ましいもので、両親も愛らしい我が子の姿にその人形を買い与えたことに満足する。
出掛ける時でも肌身離さず持ち歩くようになり、寝るときも一緒。そんなメリーさんはーー
いつしか消えていた。
たまたま風邪で寝込んでいた少女にメリーさんが消えたことは気付けず、両親は別の玩具を慌てて買い与え……。
かくして【メリーさん】という存在は少女の中で色褪せていったのだ。
「本当、どこにいったんだろう?」
少女は玩具箱に今しがた出した玩具を仕舞いながら呟く。
「もし私が持ってなかったらお母さんかお父さんが絶対何か言ってくれてたと思うんだけど…… 。まあ明日にでも聞けばいいかな。邪魔しちゃ悪いし」
今思えば無くなったのって確か酷い風邪引いてた時くらいだっけ、一通り探していた玩具箱を片して部屋を出て行く少女。
階段をぱだぱたと降りた少女を待ち受けていたのは、着信音。
プルルルル、プルルルルーー
「ふぇ、またメリーさんかなぁ……。もっと近づいてたりしたらやなんだけど」
朝昼夕と変わらない着信音が一層の不気味さを感じさせる。
「取らなくても、いいよね? なんか怖いし」
プルルルル、プルルルルーー
誰に向けてのいいよね? なのかは分からない、が、着信音は一向に止まなかった。
家電話の前に棒立ちになる少女はいよいよ本格的な恐怖を抱くことになる。
「……な、なんでずっと鳴ってるの?」
ーープルルルル、プルルルル
バクンバクンと、少女の鼓動が早まって行く。着信音の音以外響かない家の中で脈動音はやけに大きく聞こえた。
ーープルルルル、プルルルル
ーープルルルル、プルルルル
ーープルルルル、プルルルル
ーープルルルル、プルルルル
「ひぃっ! やだ、怖いよ……!」
じりじりと後退りをする少女。その顔は真っ青でーー
ーープルルルル、プルルルル
しかし無情にも着信音は鳴り続ける。誰もいない家の中、少女に対して取れ、早く電話を取れと、そう命令するように着信音は鳴り続ける。
「い、一回取ってすぐ戻せば……。それだけすれば切れるかも……!」
最早涙目で少女は恐る恐る電話へと近づく。
ーープルルルル、プルルルル
少女は冷たい受話器に手を触れ、すぅーっと息を吐いた。
ーープルルルル、プルルルル
それから硬く握り締めてーー僅かに受話器を上げ、また戻す。
ガチャ!
一際大きな電子音がリビングに鳴り響き、着信音は止まった。ビクリと身体を震わせた少女はへたへたと座り込みながら口を開く。
「やっ、やった「もしもし、私メリーさん。今大きな交差点にいるの」
ーーガチャリ!
*****************
窓から差し込む光は無く、青白い蛍光灯が少女の背中を照らしていた。
時刻は午後九時。
「……ひっぐ……ずるっ……うぅ」
部屋には少女の啜り泣きが響いている。三回目の電話の後、力任せに電話のコードを抜いて部屋に戻ってきた少女は小さな身体を丸め泣き始めた。
(私が無くしちゃったせいなの? ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ……!!)
明らかに
そう、自分が失くした人形が復讐のため自分を襲いに来るのだとーー
おかしいではないかと、少女は考える。
例え自分が聞いたことのない声だったとしても、それはボイスチェンジャーを使った友人や、友人が友人などに頼んだイタズラで済む。
同じように自分の家を目指していることも。
だがしかし、着信音が永遠に続き、挙句の果てに切ったはずの電話から何故かスピーカーフォンで声が聞こえるなどーー
まるで呪いだ、と。
一方で、少女の中には安心する気持ちもあった。なぜなら電話はもう通じないから。
流石に
そんな考えから家電話のコードを抜いた少女だった。
だが少女はポケットの中の存在を忘れていた。中学入学祝いに貰った愛用の電子機器をーー
「……お母さんお父さん、早く帰ってきてよぉ」
そんな事を言ったって一泊二日なのだからどうしようもなく……。
唐突に、少女のポケットから世界のハジマリの新曲「Lain」のサビが流れ出した。
〜〜虹がラララ 空には線が引かれたんだ
どこか機械音の混じったような声がダレかからの着信を告げる。ついこの間上映されたばかりの映画の主題曲で、少女はこの曲をとても気に入っていた。
しかし今この瞬間は恐怖を煽る材料でしかなくなっている。
「いやぁっ!!」
ポケットからスマートフォンを投げ出すと同時に机の方へ座ったまま飛び退く少女。その目尻には大粒の雫が溜まっていた。
〜〜虹はラララ消えるけど 線は後を残すんだ
少女の心情とは裏腹に曲は呑気に流れ続け、床に落ちたスマートフォンはぶるぶると振動をする。
「いやっ……いやっ! やめてよぉ!」
〜〜ゆくんだ 虹がラララ 空には
曲は二回目のサビメロデイへと突入した。少女は自らの両手に命の限り力を入れ耳を塞ぐ。
(やだやだやだ……!
髪を振り乱してこの歪な現実に涙する少女。その光景は、あたかも必死に何かから逃げようとしているようでーー
(……あれ、音)
〜〜……ん…… か…が………っと
(おっきくなって……る?)
〜〜ぼ……は そ…をみぁ…げ…
部屋の中央に鎮座するスマートフォンから聞こえる曲の音量は段々と上がっていく。この部屋に少女以外の
そして二回目のサビメロディも終わりーー
曲は繰り返される。
〜〜に…が架か… そら…… …ん引か…んだ
第三者として聞けば既に耳を覆いたくなる程の騒音とかしている着信音、少女からすれば段々はっきり聞こえ出すそれは一層少女の恐怖心を煽り立てる。
「……なんで、なんで勝手に……!」
震えた声で、着信音を消すかのように叫ぶ少女。だがそんな少女のか弱い叫び声で消えるほど甘いものではない。
〜〜に…は いずれ消える…ど 線は
遂に少女の手の壁を超えた着信音。それと合わせて少女の限界も超えてしまったようでーー
「もういやあぁああああああ!!!!」
少女は立ち上がり、閉めてあった扉の鍵を開けながらと突進する。バンッ!と開いた扉をくぐり少女は階段を目指す。
だが階段の目の前まで来たところで不意にその背中が止まった。
ーーガチャッ!
なぜダレかは少女が手を耳から離したところで電話を繋げるのか。タイミングならいつでもあったはずなのに。
少女の家は玄関を開けるとすぐ前が階段、という造りになっておりその上を見上げることができた。つまり階段の上からはーー
「もしもし、私メリーさん。今、あなたの家の前にいるの」
部屋から爆音で聞こえてくるダレかの声。
少女の身体は前向きに崩れ落ちた。
◆
俺が「メリーさんの電話」という怪談を聞いた時は確か小学生の頃。丁度口裂け女やトイレの花子さんがブームになっていた頃だ。
今となっては人形が電話をかけるなんて馬鹿馬鹿しいと冷静に考えることができるが、当時の俺はお留守番すらも出来なくなるほどその怪談に怯えて居た気がする。
だがまあ案外所謂『奇跡』、『お化け』というものは存在してしまうのかもしれない。だって、実際に
******************
お盆休み三日目、今日の午前俺はリビングで昼寝をしていた。リビングといっても狭いマンションの、なのだが。
一人暮らしを始めた時に親から貰ったソファで熟睡していた俺に、スマートフォンが起きろと言ってきた。中々に大きな着信音で驚いて飛び起きた俺に更なる驚愕が襲い掛かる。
それ故にすぐさま切ろうと思ったのだが、なんと画面に手を触れた瞬間勝手に通話が始まってしまう。流石の俺もここまできたら話してやろうと思ったためスマートフォンを耳に当てーー
「もしもし? どなたですかー?」
「もしもし、私メリーさんーー」
「……メリーさん? あの、この電話番号どこで
「今貴方のマンションから一個隣の県にいるの」
「……はぁ?」
ーーガチャリッ!
と、こんなような感じで明らかな「メリーさん」らしき電話が掛かってきたのだ。勿論いたずら電話だと思った俺もすぐに履歴から折り返しを試そうとするも何故か履歴に無く失敗に終わる。
それから少しの間間抜けっぽく呆けた後、俺はまたソファに寝っ転がって昼寝をすることにした。
しかし問題はここからだったのだ。三十分置きほどで「メリーさんからの電話」が度々掛かってきて、とても寝るどころではない。
その上最初は他県にいると言っていたメリーさんは段々近づいてくる始末。
電話に触れないようにしても勝手に繋がる、昼飯をコンビニに買いに行っている間にも鳴り続けている、電源を落としても何故か電話は繋がる…… こんな悪夢みたいな状況が続き話は冒頭に戻る。
******************
(いよいよ後二つかぁ……)
ソファに座りながら俺は盛大に溜息をつく。この仕草も何回目だろうかーー
「なんかお盆休みに幽霊って笑えねぇよな」
誰もいない部屋でそう呟くが当たり前のように返してくれる人はいない。
たった今メリーさんから来た電話では、メリーさんは俺の家から二つ目の駅にいるという。一つ目の駅というのは普通に考えればこのマンションの最寄駅になるため実質電話が掛かってくるのは多くて後二、三回だろう。
何故逃げないか、と聞かれるかもしれない。
俺も逃げようとは考えた。しかしながらwikiでは「追ってくる」と書いてあったし、何より対処法がないのが大きい。
そもそもメリーさんは
これが何を意味するかは至って単純、主人公がこの後どうなったかが誰にもーーメリーさんでもない限りーー分からないということだ。
多くの人は「捨てられた人形が復讐をしにくる」なんて解釈をするが、俺は……
ーープルルルル、プルルルル
「……はぁ、また来たか」
もうここまでくるといっそ取ってやろうじゃないかなんて気持ちになる。
放置していても勝手に繋がってくれるお陰で机の上に置きっぱなしだったスマートフォンを手に取り、緑色の丸いボタンをプッシュ。
「もしもしメリーさん、今どこ?」
「もしもし、私メリーさん。今貴方のマンションから一番近い駅にいるの」
ーーガチャリッ!
まるで友人に話しかけるように喋ってみたがメリーさんの話し方は何も変わらなかった。
「一番近い駅てーと、〇〇駅だよな。歩いて三分弱ってところか」
(にしても他県から電車でこのスピード、電話を一駅ずつ掛けてきてる……。か、各駅停車なのかな?)
今は夕方。朝九時ごろからこの調子な為その考えが無難だろう。そうすると「メリーさん」にも意外とお茶目一面があるのかもしれない。
そんな馬鹿なこと考えていると少しは気が楽になった気がした。
それから四分後。ポテチを貪っていたところに着信音が鳴り出す。
ーープルルルル、プルルルル
「お、来たな?」
ついこの間腰の悪い婆ちゃんと駅まで歩いて三分弱だったが、「メリーさん」は足が遅いのか……?
ポテチの油が付かぬように小指でスマートフォンを操作する。ついでにスピーカーフォンにも。
「もひもひメリーふぁん?」
「もしもし、私メリーさん。今貴方のマンションの前にいるの」
『ガチャリッ!』
なんとなしに電話が切れる音を口に出してみる。
「さて、と。俺もちょっくら準備しますかね」
俺はせめてものつもりで台所へと向かった。
それからは何故か一階一階ごとに「メリーさん」からの電話が掛かって来た。
「もしもし、私メリーさん。今貴方のマンションの二階にいるの」
「もしもし、私メリーさん。今貴方のマンションの三階にいるの」
「もしもし、私メリーさん。今貴方のマンションの四階にいるの」
「もしもし、私メリーさん。今貴方のマンションの五階にいるの」
「もしもし、私メリーさん。今貴方のマンションの六階にいるの」
「もしもし、私メリーさん。今貴方のマンションの七階にいるの」
「もしもし、私メリーさん。今貴方のマンションの八階にいるの」
こんな感じでわざわざ階段を使い一々報告してくれる「メリーさん」。割と礼儀正しいのかもしれない。
ーープルルルル、プルルルル
玄関の壁に備え付けられているカウンターの上に乗せてあるスマートフォンが振動する。無言で緑色の丸いボタンを押す。
「もしもし、私メリーさん。今貴方のマンションの九階にいるの」
ーーガチャリッ!
(……ついに、来たか)
九階というと、俺の住むすぐに下の階。つまり次の電話はーー
ーープルルルル、プルルルル
ポチッ。
「もしもし、私メリーさん。今貴方の家の前にいるの」
ーーガチャリッ!
「……き、奇遇だなメリーさん。俺も扉のすぐ前にいんぜ?」
鉄製の扉の向こうに伝わる訳がないというのにーー
(怖がっている証拠か……)
意識せずとも手に持ったお玉に力が入る。なぜお玉を持っているかは、せめてもの武装のつもりだ。頭には鍋を被っているし三重ほどに着重ねした服の中にはダンボールも巻き付けてある。
大の大人が情けないと思われるかもしれないがそれでも怖いと思ってしまうのが人間ではないだろうか。
「いつでよ来いよ、メリーさん」
wiki様だとこの後にも電話があるはず、というかその電話で物語が終わる。結末の憶測は刺される、殺されるなど様々だが殺傷だけは勘弁願いたい。
冷や汗が頬を伝って落ちる。夏場だというのに寒気が襲う。
「……まだか?」
段々と頭の鍋を支える手も怠くなってきた。つい振り上げていたお玉も下ろしてしまう。
二十数年の人生の中これほど早く来て欲しい、来ないで欲しいという気持ちが同じくらい輝いているのは初めてかもしれない。精々高校の頃クラスの女子に告白した時くらいか。
他の物事に思考が向かってしまうほど焦らされたその時。
ーープルルルル、プルルルル
今日一日で数え切れないほど聞いた、あの無機質で乾いた音が玄関に響いた。
(来たッ……!! は、背後だよな? 電話聞いたらすぐに後ろ向いて……)
緩んでいた構えを再度固め、スマートフォンの画面をタッチする。
ーーガチャ!
黒電話かと錯覚するような音のあと案の定あの少女ーーメリーさんの声が聞こえて来た。既に聞き慣れてしまった声。幽霊しては何処か儚げなその声音が俺を悩ませる。
そして今回の内容はというと……
「もしもし、私メリーさん……。開けてよぉ……」
「……は?」
涙ぐんだ声でそう言って来たのだった。
******************
目の前でお茶を啜る西洋風美少女がどうやら「メリーさん」らしい。只首にかけている時代遅れな赤い携帯電話が少しアンバランスさを感じさせる。
「メリーさん」というと充血した白目、ぼさぼさな髪の毛をしているような印象を抱いていたが目の前の少女の瞳は澄み切った蒼だし、腰まで伸びる金髪はストレートで輝いていてまるでお姫様だ。
ちゃぶ台に正座をしながら行儀よく茶碗を置いた「メリーさん」はこちらを見つめて来た。
「それで、なんでメリーさんが俺ん家なんかに? 呪われるような事した覚えは一個もないんだが」
「えぇと、ちょっと深い理由があって……」
電話ではノイズがかっていて不気味さを感じさせていた声も、こうして実際に聞けば途轍もなく可愛いとしか思えない。
「おにーさんに呪いはかけてないんだけど、
「メリーさん」が言うには、【怪談】とは「怪異の
怪談とはその話が創られた場合、この世の何処かでその出来事が必ず起きる。要するに実在し始める、とということだ。そして肝心なのが一度では終わらず繰り返され続けるという点。
「メリーさんの電話」も例外ではないらしくこの目の前の「メリーさん」は既に十何代目だという。
一度
ではこの「メリーさん」は何故俺のところに来たのか。
ーー今回の€¢ちゃんは、たまたま階段から転げ落ちちゃって話が終わらなかったの
本来ならば終わる筈だった
「それで同じ人間に頼めばいいかなって思って……」
「人間なのはいいが、俺な理由は?」
「うーん、私も別に選んだわけじゃないんだけど、多分おにーさんの霊感?みたいのが強かったんじゃないかな。こうして視えてるのもおにーさんが初めてだし」
「成る程……。もう一ついいか?」
俺の言葉に「メリーさん」はこてんと頭を傾けた。
◆
場面は変わり男とメリーさんが出会って二日後、とある病院の病室。
その病室は個室で、今四人がその部屋にいた。
頭を包帯でぐるぐる巻きにされながらベッドに横たわる少女、その様子を不安そうに見守る二人の若い男女、そして白衣を着た医者。
「怪我自体重くないですし、恐らく障害が起こることもないと思われますのでいつ目覚めてもおかしくない容体です」
医者が立派な髭を撫でながら少女の両親へと伝える。その仕草には非常に貫禄があり、思わず頷いてしまいそうな覇気を漂わせていた。
「そうですか……。私達の家は幅が広い階段で、手摺も付けてあるのにまさか転落するなんて思いませんでしたよ」
ハハハ、と苦笑いをしながら医者に答えたのは父親。しかし笑ってはいるがその表情に安堵の色を見つけ出すのは非常に容易なことだった。
「何かあったのかしらねぇ……。部屋も荒れてたし」
「……この子も案外間抜けなところがあるからな。単に足を滑らせただけだろう」
心配する母親、事故だと決めつける父親に医者は遠慮がちに話しかける。
「お二人は今夜どうされますか? 泊まっていかれるなら毛布などを出しますので」
「わざわざお気遣いありがとうございます、先生。でも今日のところは旅行の後片付けなどをしたいので一度家に帰りたいと思います」
やんわりと断った父親に医者は「分かりました」とだけ言って病室を出て行った。
「さて。まあこの子の顔色は悪くはないし俺たちも早く家に戻ろうか。大分日も落ちてきたから、な」
「そうね……。でももうちょっとだけ……」
母親は愛しい我が子を撫でながら目を細めるーー
五分後、部屋にはベッドに横たわる少女一人だけが取り残された。
******************
「この病院で間違い無いんだな?」
俺は右手の重みを感じながら隣に立つ「メリーさん」に話しかけた。
マンションから駅を乗り継いで約二時間程かかった病室の前に俺はいた。「メリーさん」曰く、この目の前の白い建物で「少女」が入院しているらしい。
「多分……」
なんでも「少女」の意識を刈り取ったのはメリーさんで、メリーさんが返すまで「少女」は一生目を覚まさないという。
「そもそもなんでそんな事をしたんだ?」
「……物語が狂っちゃうから。廻談には要らない登場人物以外が関わっちゃいけないの」
「その理論でいくと俺もアウトな筈なんだが」
「もう狂ってる物語をこれ以上狂わせないためのおにーさんだからだいじょぶ」
成る程。解決策、ではなく対策なのか。それにしてもーー
「お前を持ったままなのは何とかならないのか……。大の大人が人形片手になんて笑えないぞ」
「うぅ、ごめんね? でもそれがないと、っていうかそれが本体だから……」
隣から申し訳なさそうな謝罪の声が聞こえる。
これはメリーさんの本体、つまり人形だ。隣にいる人間のような「メリーさん」は所謂霊体であり、俺(強い霊感のある人間)にしか見えない。あくまで人形の意思がこうして具現化しただけな為に本体は常に持ち歩かなければいけないという。
ならばどうやって俺のマンションまで来たのかという話だが、少しならば人形を動かせることができ人の荷物に紛れて電車を乗り降りしていたと言っていた。
「まああと少しの辛抱か。じゃあ行くぞ」
「うん!」
◆
唐突に暗闇から戻って来た。少女はそんな感覚を朧げに感じる。それからは段々、段々と意識が鮮明になりーー
少女の目が開く。
(んん、ここどこだろう……?)
見慣れぬ天井、見慣れぬ布団、見慣れぬ部屋。
見慣れぬ窓、見慣れぬ景色、見慣れた
「そうだ、私階段から落ちて……!」
バッと身を起こした少女は不安そうに辺りを見回す。とはいっても狭い個室であり、目に入るのは扉と布団と窓だけであった。
「助かった、の?」
◆
「えーっと四階の一〇三室か」
俺は患者の入院情報を見ながら「少女」の個室を探す。それを確認して備え付けのエレベーターに乗った後、「メリーさん」に話しかけた。
「メリーはどんな風に会うつもりなんだ?」
「メリーさん」は俺の問いに少し考え込んでから口を開く。
「やっぱり電話、かな。そもそも普通の人とは電話じゃないと話せないから」
「……そうだったな」
「部屋の前で電話をかけるから、おにーさんは私の合図で部屋に入ってくれる?」
ああ、と返すと、エレベーター内には沈黙が訪れた。
チン! という音が静寂を切り裂く。どうやら四階についたようだ。
「一〇三室は……あの一番奥だな」
「メリーさん」は頷いてとことこと足を進め始めた。俺も彼女に追従して歩く。たまたますれ違った看護師さんから奇妙なものでも見るような視線を感じたが、気にせず人形を握りしめる。
その内「少女」が入院している筈の病室の前へ着いた。扉には £* €¢ のプレートが飾られている。恐らく「少女」の名なのだろう。
「「少女」は起きたのか?」
「うん。ついさっき意識を戻してあげたらもう目が覚めてると思う。じゃあ
振り返らず俺にそう言った「メリーさん」は、首にかけた赤色のガラケーを大切そうに開き耳に当てた。
◆
「今、何時だろう?」
窓から差し込む光は「あの日」の夕方と同じ、燃えるようなオレンジ色だった。
机の上に置いてあるスマートフォンを手に取った少女は電源ボタンを押し時刻を確認しようと
ーープルルルル、プルルルル
「ッ!!!!」
病室に響いた着信音。黒電話を模したような一昔前のそれは、少女の病み上がりの身体を痛いくらい震わせた。
ーープルルルル、プルルルル
「ま、た……」
絶句、正にその様子がぴったり当てはまる少女は思考する。
ーープルルルル、プルルルル
(……あれ、私何で生きてるんだろう。襲うつもりなら倒れた時に襲えば良かったんじゃ)
ーープルルルル、プルルルル
(打った頭以外痛いところない……)
ーープルルルル、プルルルル
(もしかして、もしかしてだけど……)
ーープルルルル、プルルルル
「襲うのが目的じゃなかった?」
ーープルルルル、プルルルル
(……怖い。けど、メリーさんが私に逢いたいっていうなら、とらなきゃ。話さなきゃ……!)
ーープルルルル、プルルルル
少女は震える手でスマートフォンを操作し、ゆっくりと耳に当てた。
「もしもし、私メリーさん。今、扉の前に居るの」
ゾクッ! 携帯を取り落とした少女の背筋に悪寒が走る。扉を見た少女の目に涙が溜まる。
その涙は扉が段々開いていくのを確認するとさらに増えていった。
スーっと横に開いた扉から出て来たのはーー
一人の男だった。
「……ぇ?」
◆
一体どれくらいの時間が経過しただろうか。数秒だったのかもしれないし、数分だったかもしれない。右斜め前の「メリーさん」は祈るように目を閉じており、まるで聖母のようである。
唐突に、人形を持つ手に動きがあった。勿論「メリーさん」の合図である筈。「メリーさん」の口は一切動いていなかったため、電話は思念のようなものでしているのかもしれない。
「ふううぅぅぅぅ」
俺はゆっくり息を吐き、扉をスライドさせる。
狭い病室の中ベッドで上体を起こしたままの「少女」と視線が交錯した瞬間、
「……ぇ?」
という呆けた声が聞こえた。
そのまま暫く見つめ合っていると、「少女」の視線が自然と俺の身体に移り、手に移る。
「あっ!!!」
俺が持つ
「お、おじさんそれどこで……!」
(っ!?!? お、おじさんだと!? 失礼な、俺はまだ二十歳だぞーー)
「んっんー! まず俺はおじさんじゃない。そして、この人形は御察しの通りメリーさんだ」
年下の女子に怒るほど俺の精神年齢は低くない。咳払いをし、順々に説明していく。
「あ、ごめんなさい……」
「どこで、と聞かれたがそれはまあ本人から聞いてくれ」
「ほ、本人って……」
言葉を遮るように人形を「少女」に渡す。軽いそれを「少女」は重いもののように受け取った。
「じゃあ俺はこれでさようならだ」
「えっ? ちょっ……」
慌てたように引き止めてくる「少女」を無視しながら踵を返して扉を開く。すると、扉の前にいた「メリーさん」と目が合う。
「これでいいか……?」
小声で話しかけた俺に笑顔で頷いた「メリーさん」はその口を「待ってて」という風に動かした。俺は後ろでしまった扉に背を預け、目を閉じる。
ーープルルルル、プルルルル
僅かだが病室の中から着信音が聞こえだした。
◆
「
なぜかきょろきょろと部屋を見渡す「メリーさん」は、顔を赤くしてちょいちょいと俺にハンドサインを出してきた。
「恥ずかしいから……」
……誰もいないのだろうに、なんてツッコんだ奴は非リア確定だな。
そう大きくないちゃぶ台のため、俺は身を乗り出して耳を「メリーさん」へ寄せる。
「その、えっと……、……また遊びたいから、だよ」
******************
元々メリーさんが「少女」のところから消えた理由、それは失くした、でも捨てた、でもない。
ある休日両親と共に出掛けた「少女」は疲れのためか次の日に風邪をひいてしまったのである。そう重くはなく一日安静にしていればすぐに良くなるくらいの風邪。
泣く泣く学校を休んで寝込んでいた「少女」の家に、その日の夕方友人がお見舞いに来た。とはいっても小学校低学年のお見舞いなど精々プリントを渡すくらいであり、その友人も五分ほどで「少女」の部屋を退出する。
しかし友人が玄関を出ようとしたところ玄関に放置されていたメリーさんに目を止めてしまう。
「少女」はその前日、帰りの電車内で寝てしまったため父親におぶさって帰って来た。その時もメリーさんから手を離すことはなかったが、家に着いた後に父親がメリーさんを「少女」の手から取りそのまま置きっ放しにしてしまったのだ。
友人も善悪を判断できる年ではない。己の欲望に囁かれるままメリーさんを持ち帰って自分の物にしてしまった。
それから数年後友人はあっさりメリーさんを捨ててしまったわけで、「メリーさん」は「少女」の所へ戻ろうとしたのである。
******************
あの後俺が振り向くとメリーさんは消えていた。扉のプレートの名前も無く。扉を開けてもそこには夕日に照らされているベッドしか見当たらなかった。
さてさて。ここでもう一度問うとしよう。
ーー貴方は「メリーさんの電話」という怪談を聞いたことがあるだろうか。
日本人なら誰もが一度はその話に耳を傾け、恐怖に身を震わせたものではないだろうか。
話自体は至ってシンプルな内容であり、それ故に地の底から湧き上がるような本能的な悪寒を抱く、そんな怪談。
だが考えてみてくれ。
メリーさんの電話は結末がない怪談?
主人公、つまり少女がこの後どうなったかが誰にもーーメリーさんでもない限りーー分からない
訳がない。
忘れてもらっては困る。
今回のメリーさんの電話には誰がいた?
「メリーさん」、「少女」。
それと「俺」だろう?
「語り手がいなければ
見たものは全員死ぬなんて終わり方した怪談を聞くといつも思う。
そう言った意味では「メリーさんの電話」も同じかもしれない。何故なら結末が語られていないのだから。
さて再度問おう。
貴方は「メリーさんの電話」という怪談を聞いたことがあるだろうか?
「もしもし、私メリーさん。今あなたの後ろにいるの」
このラストを多くの人は「捨てられた人形が復讐しにきた」なんて解釈をするが、俺は全く逆じゃないか、そう思う。
いやまあ勿論実際にその終わり方なのだから解釈は人それぞれだ。
だから、
実際に
「もしもし、私メリーさん。今、あなたの隣にいるの」
◇
「わぁ、ここが新しいお家!?」
そう言って小さな少女が指差したのはとある十階建てマンションの最上階にある一室。つい先日空き家となった部屋だ。
「まぁ、前より広いだけでマンションなのは変わらないんだけどね」
随分と若い母親らしき女性は、苦笑しながら少女に答える。
「うふふっ、広そー!」
「こらこら……」
立派な玄関を見てその先の光景を想像する少女。はやくはやく! と催促された母親は先程管理人から受け取った鍵を取り出し鍵穴に差し込んだ。
ガチャリ。
新居に足を踏み入れた二人が目にしたのは、リビング中央に置かれていたソファである。
「あら、随分良いソファね」
ーー前の方が残していったものがあるので気に入ったら使ってください
母親はソファに触りながら管理人の言葉を思い出して言葉を漏らす。少女も少女でぼふっ! とダイブしたりしてそれを楽しんでいるようだ。
「ふかふかぁっ! あれ、おかーさんそれなぁに?」
「……はい、プレゼント」
そう言って母親がバッグから取り出したのは金髪で西洋の服を着た人形だった。
「かわいー! なまえはなんていうの?」
ーーえーっと、メリーさん、だって
メリーさんの電話 〜間違えてしまった物語〜 くゆ @pukuyuu
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