第134話 END LESS
「思い出したよ…すぐに」
「徐々にだろ?」
「ううん…早かったよね」
「そうか」
「ユキヤは?」
「徐々にだ…記憶を引き継ぐわけではない、経験を引き継ぐだけとは、こういうことか…」
「よく解んないけど…」
「逢いたかったよ」
「うん…逢いたかったよ…ユキヤ」
「サクラもいた」
「いたよ…ずっと傍にいたよ…ハナコは?」
「いるよ…ARKに務めている」
「うん…ハナコ…」
「みんないるのかな?」
「いるさ…この世界のどこかで生きてる。そのうち出会うのかもしれない」
「サンドイッチくんも?」
「あぁ…そのうちね」
「解るの?」
「いや…そんな気がするだけ…」
「この建物で、みんなに逢ったんだね、忘れてた…ずっとあったよ」
「あぁ…中にYAMAがいるかもしれないけど…今は関係ないな」
「YAMA、そんなに悪い感じじゃなかったよ、ナミには…」
「善悪じゃあないんだ…YAMAは、ただ公平に在ろうとしただけの存在」
「あのさ、閻魔を知っているってことはYAMAもいたってことだよね」
「そうだね」
「2巡目も、あんまり変わらないの?」
「大きくは変化しない…これを繰り返して3巡目…4巡目…と少しだけ変わっていくんだ」
「いいことなの?」
「解らない…けど、そうして宇宙は進歩していくような気がする」
「時に…それを諦める宇宙もあるけれど…」
「うん…悲しいことではないようにも思う」
「その決定権はユキヤにある」
「そうだね…」
「重いね…独りで持つには」
「だから一人だけ、パートナーを選べるんだろ」
「うん…一緒に持ってあげるよ」
「あぁ…また長い歴史を眺めるんだ…」
「そうだね…2人でね」
「わずか100年足らずの身体で経験することになんの意味があるんだろう…思うんだ、宇宙は、特異点は移動するんじゃないだろうかって」
「移動?」
「うん、たとえば僕の前任者がいて、前任者が特異点を諦めたときにあらたな後継者が選ばれる、それが宇宙の1巡目…それまでの経緯は変わらない、そうやってエンドレスにループを繰り返しながら特異点も生きる時代を変えて存在している、キリストとは、特異点の役目を放棄した者じゃないだろうか」
「だから複数の遺骸が存在し…遺伝子を受け継いでいくってこと?」
「うん、その罪は…永遠に探し続けることで、放棄した罰を受けているように思う」
「いずれユキヤも?」
「あぁ…誰かに特異点を受け継がせて永遠の罪を背負うのかもしれない」
「悲しいね…」
「うん」
「そのときまで…ずっと一緒にいてあげるナミが」
いつか来る…僕と彼女の終焉の時。
世界の2巡目は、それに気づくために流れていく…。
『殺しの調べ』 蛇足 END…。
殺しの調べ 桜雪 @sakurayuki
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