第133話 2巡目…42
「今日、転校生が来るんだって」
「ふ~ん」
ナミは興味無さ気に窓の外を眺める。
勉強が苦手で、あまり取り得らしい取り得がない、良くも悪くも普通の少女。
なぜか小学校のときから文武両道のサクラとは仲が良い。
サクラは学級委員長を小学校のときから毎年受け持っている優秀な同級生。
顔立ちも良く、性格もいい。
多少、頑固で短気な面もあるが…。
中学生になったナミは、サクラと自分の違いに気付き始めていた。
サクラは、このまま大人になって、大きな会社とかに務めて、なんかエリートっぽい人と結婚して、なんだか中の上みたいな生活をするんだろうな~と思っていた。
自分はどうなるんだろう?
このまま田舎町で…なんか底辺っぽい生活で…同級生に会わない様に都会に出て失敗して…そんな生活をしてそうだ。
「ふみゅっ…」
口を尖らせ、へんな鳴き声をだすナミ。
ホームルームが始まって、先生が転校生を紹介している。
『
「じゃあ、桜塚くん、アソコの空いてる席に座って」
先生が指さしたのはナミの隣の席。
「なんか解らないことがあったら、委員長のサクラさんに聞いて、お願いねサクラさん」
「よろしく」
「うん…あたしナミ」
ナミは教科書を見せてあげる。
といっても、開いたことも無い折り目の無い新品同様の教科書。
授業中も、もちろん開く気が無い。
昼休み、弁当を広げるナミ、隣にサクラが椅子を持って座る。
「ユキヤくんも一緒に食べよ」
「ありがとう」
ユキヤは、カロリーフレンドを食べだした。
「それがお昼?」
サクラがユキヤに尋ねる。
「あぁ…母親が忙しいから、コンビニで買ってくるんだ、なんかいつもこんなもの買っちゃう」
「おかずあげる」
サクラがユキヤに卵焼きやらウィンナーを分けて、お弁当箱の蓋に乗せて渡す。
「ありがとう」
「みゅっ…」
また変な声で鳴いてナミがユキヤに差し出した…カニカマ。
「またナミは…変なモン持ってきて」
サクラが笑う。
「変じゃない、美味しいよ…ユキヤも好きだよね」
「あぁ…好きだよ…カニカマ」
自然と記憶が解れていく…硬く結ばれた結び目がジワッと緩んでいく…。
放課後…。
大きな四角い無機質な四角い建物の前で立っているユキヤ。
そこへ走ってくるナミ。
「ユキヤ…待ってたよ…」
「うん…ナミ」
2人の2巡目が始まる…。
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