少子化問題改善の為異世界転移したんだけど、女神の暴走がヤバイです。

ネコモドキ

第1話 やはりどこの世界へ行っても幼女最強説。


 

 俺が、この異世界とやらと、地球とを行き来すると言うアブノーマルな生活を初めて早一ヶ月。俺が所属するコミュニティ(村以下、集落以上を便宜上コミュニティと呼ぶ)は、暴走の一途を辿っていた。

 ………だってね。ね。目の前のコレ・・見せられたらね、もう、ヤバイよね。

 ↑こんな感じで、語彙力が壊滅的になるくらいにはヤバイ。と言うのも、全ては俺のパートナーになる女神のせいと言うか俺のせいと言うか。


『さあみんな〜今日もレッツラパコパコ☆』


「「「「「パコパコオオオオォォォオオオオッッ!!」」」」」


 ーー世紀末である。いやまあ、リアル世紀末なのだが。俺の目の前には腰布一丁のほぼ全裸の男達。因みに今の気温は6度。凍死しろって思う。

 それらを見つめるのは現在の気温もかくやと言う女性陣の目線。今年で10歳になるという鈴音ちゃん(ここに来た頃はお兄ちゃん♡って懐いてくれたものだ。艶のある肩まである黒髪に、星のピン留めがチャームポイントなおませさん。10歳の誕生日プレゼントには、家族みんなで過ごすって言ってたっけか)でさえ絶対零度の半眼をしていた。イェーガーや鷹に例えられるようなヤツだ。或いは、チベットスナギツネも近いかもしれない。因みに、鈴音ちゃんのお父さんは前方に、お母さんは後方にいる。

 ……押して然るべきだ。今夜あたり家族会議と言う名の殺戮が繰り広げられるかもしれない。

 そして、その男達と女衆の前方。正確には斜め上方。一夜感丸出しの木で組まれたステージの上には、ネグリジェに近いような、踊り子とかが着るエロティックな服を纏う少女。

 絶世の、がつく訳でもない。そもそも、好みと言うのは人によって違う。サキュバスが必ずしも同じ姿で描かれないのと同じように、人の好みと言うのは千差万別、十人十色。まさしく、種々雑多とかこんな話どうでも良いな、うん。

 まあ、兎に角。手前の男がスレンダーが好みならスレンダー要素を。巨乳が好みならば巨乳に。幼児性愛者ロリ○ンならば顔立ちを幼くし………と、全ての男性のニーズに応えるこそが、絶世の、ではなく絶対の、が付く所以である。ただ可愛いとか美しいとかでは決して測れないナニカが、ステージ上の少女にはあった。


 …………まあ、あれが、あの元凶の少女がパートナーの女神なんだけどね?名前は《スズネ》俺の名前が涼原すずはら大吾だいごだから、そこから《スズ》を。それと女神の基本人格の元となった人物の名前とを組み合わせて《スズネ》になった。尚、コミュニティのおませな女の子、鈴音ちゃんとは一切合切関係ありません。


『いっえーい☆』


「「「「「スズネちゃーん!!!」」」」」


 鈴音ちゃんの眼光がより一層鋭くなった。多分、物理的殺傷力を伴ったくらい。ピンポイントでダンディな口髭を持った三十路半ばくらいの男性が吹き飛んだ。鈴音ちゃんのお父さんに酷似していたが、他人の空似だろう。


「ぺっ。きたねーもん見せんじゃーねよ」


 腰布が風に揺られ、流星ほしとなった男性の男性がチラリズム。んで、不時着地。その上に幼女の唾液が、………幼児性愛者ロリ○ンの佐藤さん(偽名)が恍惚の表情と強い嫉妬の念を送っていたのは気のせいだと思いたい。


「はんっ。行くぞ大吾」

「は、Hai!」


 つい声が裏返ってしまった。あの口からお兄ちゃん♡なんて言葉が飛び出ていたなんて、信じられないし、信じたくない。


「なぁ、大吾ぉ……何故こうなったか分かるか?」

「はい!私の……ではなく!全てあの女神の名を語るクソビッチのせいであります、長官!」

「長官ってなんだ」


 本当ホントにね。

 ライブ中の広場を離れ、一通りの少ない場所へ。家々が連なるここは、案外見通しが悪い。


「……まあいい。そうだ。その通りだ。奴は偶像アイドルなどと言うクソみたいな理念を掲げ、恐るべき侵略をこのコミュニティへと仕掛けてきた……そう、侵略だ………っ!」


 すみません俺のせいです近くのコミュニティが此処しかなかったんであのクソビッチが「じゃあじゃあお兄ちゃん☆転移しちゃう?転移っちゃう♡」なんて(物理的な)ハートをバシバシ飛ばしてきたんで俺はそれをペシペシしてたら何故か了承の意を得た感じになって転移してきたんですなんて言って分かるか馬鹿。俺が一割も理解してねーんだぞ馬鹿。

 因みにだが、最近の鈴音ちゃんのデフォルトがこんな感じ。あの清純な少女はどこ行っちゃたんだろうね本当。


「最早男衆はクソの役にも立たん。見ろ、これを」

「こ、これは………」


 そこには、日本語に似た言葉で離別率(カップル含め)と書いてあったが俺には読めなかった。今年………と言うか今週に入って垂直にレッドゾーンまで堕ちる青い矢印なんか見えなかった。二枚目の家族毎に調べた離別理由など詳細に書かれた紙に鈴音ちゃん家が『レッドゾーンに入っている要注意。』なんて書いてるのは目を潰した。


「なんでふ?ほれ?」

「狼狽えるな、馬鹿。よく見ろ、馬鹿。まだ生きている家が数件残ってるだろ馬鹿。その家はこの広場にも来ていない馬鹿。今から自宅訪問だ馬鹿」

「行きます馬鹿」

「長官と呼べ馬鹿」

「了解であります、長官殿馬鹿」

「馬鹿はもういい馬鹿」

「じゃ、行こうか」

「うん」


 元に戻った鈴音ちゃんと手を繋ぎ、未だ逆ハーを築いている女神バカを見る。…………そもそもの理由を見失った結果、見事に錯綜した馬鹿がそこにいた。

 その理由は、一月前に遡る…………馬鹿。


 ☆


 ゲームをしていたら唐突に目の前の空間が割れて中から神々しい光と共に半裸の女神っぽい翼の生えた少女が出て来た………なんて与太話を信じる馬鹿が、果たして世の中には何人いるのか。

 昨今、女神やら異世界やらが浸透してきた時代。確かに、その存在を信じるものはいるだろう。だが、そこまで信じるか?盲目的と言えば聞こえは悪いが、それを信じて死ぬ奴はいないだろうし、わざわざ異世界でハーレムを築けそうな、運動も勉強も容姿も普通のボッチを目指さないだろう。つーか、ハーレムを築けるのはいつの時代だって運動も勉強も出来たイケメンだ。後金持ち。

 ………まあ詰まる所なんて言いたいかと言うと、


『なあ、馬鹿おい。お前の与太話に付き合ってる暇は無いんだ。こっちは今、受験勉強で忙しいんだ馬鹿。実家の農業を継ぐ馬鹿とは違うんだ馬鹿。金髪碧眼の半裸の美少女が時空間を割ってモーゼが如く颯爽と登場してきた……なんて、信じると思うか馬鹿?』

「いや、本当だって!聞こえない?このBGM。ご近所さんから怒鳴られる事間違いなしのBGM!………BGMってなんの略だっけ」

BバカGゴキブリMマッチョの三竦みだな』

「誰が三竦みの話ししたこの馬鹿!?」


 やっべ、三竦みの関係がちょっと気になる。


『兎に角、僕はゲー……受験勉強に忙しい』

「ゲームしてる暇あったら助けてくれてもいーんじゃないかな!?」

『プッ……ツー……ツー……』

「嘘だろ……」


 スマホからあふるるは無情なる友人の裏切りの証。目の前には例え人であれ神であれ間違いなく頭のネジが取れた奴。そして俺。社交性は高いものの、勉強も運動もそこそこ、お金もそこそこの奴。

 …………詰んだ。何が詰んだかは正直、自分でも意味が分からないが取り敢えず詰んだ。


『8〒÷%あJZ+9〆8あーHL>^×』


 突然、けたたましい程のBGMがピタリと止んだ。シン………数瞬の静寂の後、頭の中に声が。


「うわぁ!?」


 唐突に聞こえてきたプレ○ターとかエイリア○とかが使いそうな言語に思わず悲鳴を漏らす。恐らく、言語疎通を図ろうとしているのだろうが、住宅に無断で押し入ったばかりか、友人との絆も切れそうである。

 見た目は少女だが飛んだヤロウだ。野郎ではない。


『あーAN2^8=あー……き+[69%7すか……』


 段々と、少女の念話?がクリアになって行く。ラジオの周波数を慎重に合わせるように、ゆっくりと、緩慢に………やがて、


『あー……あー……テステス、聞こえますかー』

『聞こえてないよー』

『聞こえてるじゃありませんか。取り敢えず、諸々の説明を省いて自己紹介と行きましょう』


 聞こえてねえつってんだろ馬鹿。


『馬鹿ではありません。私は異世界 【ラグナシア】を担当する新米女神、名前はまだありません』

「そうか、俺の名前は涼原大吾。取り敢えず女神でも痴女でも電波でもいいから早く出て行ってくれ。家宅侵入は不問にしてやるから」

『貴方さっき自分で念話をお使いになられたのにまだ抵抗するんですか?』

「あれ念話じゃねえし。一人思考だし。一人思考って何だし」

『知りませんよ馬鹿』

「俺、人からよく馬鹿って言われるけど流石に初対面の、痴女で電波で女神な奴に三言目で馬鹿って言われるとは予想だにしていなかったわ」

『事実は小説よりも奇なり。です』

「その奇が胸張って言う事でもないと思うし、さっきのBGMのせいでお隣さんに怒鳴られたらどうすんだ。せっかく、両親を説得して憧れの一人生活を手に入れたのに」

『大丈夫ですよ。さっきの音楽は貴方しか認識出来ないものですから。……勿論、私含めて』

「なんかファンタジーっぽい設定が出てきたなぁ……」

『設定ではありません。漠然たる事実です』

「現実味のない事言ってるくせに?」

『減らず口を………』

「早よ出て行け」


 女神?はぐぬぬ……と憎々しげに表情を歪め、コホン。小さく、わざとらしい咳を吐き、後ろを向いた。勢いで、鱗粉を伴い羽が落ちる。ゆらりと落ちる白薔薇の花弁が如く。


「いやちょっと待て」

『あ、あん』


 妙に艶かしい声と共に、女神が恐る恐るとした感じでこっちを振り向く。その間、俺は翼の手触りを堪能していた。翼、柔かーい。こーきゅーしるくみたいだー。ってね。


「落ちた羽、ちゃんと片付けろよ?」

『それぐらい、やって下さいよ」

「やだよ。そもそも燃えるゴミなのか触って害のあるものかも知らないのに」

「燃やしてだいじょーぶですよ。………燃やした後に有害な物質が出ないとも限りませんが(ボソッ)」

「ボソッじゃねーよ。聞こえてんだよ馬鹿。つーか、数年前から田舎でも燃やしちゃいけないって言われてんだよ」

「田舎なんですから、山奥で燃やしてきて下さいよ」

「山奥の恐ろしさ舐めてんかお前」


 やべえよ。こっちの常識一切通じねーよ。文化的な錯誤が甚だしいよ。なんだよ、異世界転移系主人公やべえよ。橋渡し役がなんでこんなに話通じねーんだよ。どんなコミュ力の化け物が選ばれてんだよ。


『さて、話は私達の運命の出会いまで戻ります』

「話逸らしまくったからな」

『黙って下さい。ーー改めて、私は異世界【ラグナシア】の管理を担当する新米女神、名前はまだありません』

「はぁ」

『貴方は私の管理する【ラグナシア】において、救世主足り得る人物に選ばれました』

「話ちょくちょく遮って悪いんだけどさ、それって断れるの?」

『原則的なルールとして、拒否権はあります。まあ、私達の布教した口伝書のおかげで、今まで拒否する方はゼロに等しかったのですが』

「あ、あれらの書物って自作自演だったんだ?」


 まあそりゃそうだよね。一般人が武器持たされて戦場に出されたら逸般人になるーなんて夢物語、あるわけない・・・・・・もんね。


『話を続けますね?別に、私達の流教する書物のような、冒険物語をしていただきたいのではありません』

「あ、そーなの?」

『はい。今【ラグナシア】の文明レベルは極めて低く、平均的な死亡年齢は40代後半、出生率も著しく下がる一方です』

「ありがちな設定だね」

『………もう設定でいいです。で、そこで問題となってくるのがやはり、子孫を残すなどの割と現実的な問題です』

「生々しい………」

『仕方ありません。人がいなければ、何も育ちません故。一応、魔族や魔物と言った人類にとっての敵対種族とも言える存在はいますが、彼らも空気を読んで未だ攻めて来るような気配はありません』

「トップが良いのかな?」

『だと思います。以前までは人類断固滅殺すべき☆など馬鹿な事を考える輩が後を絶ちませんでしたので』

「本当に、人がいなければ何も生まれないからね」

『魔族にも人類ほどではありませんが、物を作る能力を勿論有してはいます。有してはいますが………些か、脳筋思考にあるらしく……その、噛み砕いて言うと、極めて馬鹿なんです』

「うん。まあ、それはどーでもいーんだけど、さ。結局のところ、俺に何して欲しいの?」

『うっ……』


 伏し目がちに、顔を紅潮させ呟く。まあ、管理するとも言っていたし、手のかかる弟や妹のようなものなのだろうか。

 サラサラと、金糸のような髪が鼻にかかり、犬のようにヒクヒクする。その碧眼はまるで細流のように澄んでいて、海のように深い。

 半透明の、七色の羽衣に身を包んでおり、チラチラと刺激的な肌が目に危ない。装飾の類は少なく、素のままの魅力が際立っているように見える。そんな、非日常的なビジュアルに加え、背中には二対の翼。フィクションを、フィクション足らしめるもの。微細な素粒子が白雪の如く降り積もる。

 ううう〜と、苦虫を無理矢理食べさせられたドジっ子妹キャラのような反応を見せ、よし!と手を握る。


「あの!確かに、言ってませんでした!その事は謝罪します!ーーそして、改めてお願いします!私と共に異世界へ行って、【ラグナシア】を救って……いえ、せめて過疎化問題を何とかして下さい!女神など高次元的存在は自身の管理する或いは管理されている他の世界には最低限の干渉しか出来ないのです!」

「ーーーーっ………なぜ、俺に?分かるだろうが、俺は馬鹿だ。少子化問題含む社会情勢のテストで60点以上を取った試しがない。同じく役に立ちそうな数学、家庭科もだ。資金力だって世界基準で見れば中の中だろうが、日本だけで見ると些か乏しいだろう。結論から言うと、友人の方がまだ使える。勉強、運動は勿論のこと、資金力だってビジュアルだってそこそこのもの。物語の主人公が如く……なんて生活は送っていないが、周りが変わればあいつも変わらざるを得ないだろう」


 女神の悲痛な叫びが、間取り5畳もない狭い部屋に響く。恐らく文字通りの本音だろうが、それに対し、淡々と返す俺。お隣さんは確か仕事だった筈………大丈夫だよね?後でクレーム来ないよね?もう良いから、念話で話してくれないかな?


「………そうですか、何がお望みですか?」

「えいや、特に何も」


 流れが変わってきたぞ?


「分かりました。身体ですね」

「うん、違うね」

「私の現在の身体設定はこの国の平均的な14歳前後を元にしています……つまり、そう言う事ですね!」

「分かったような顔しないで貰えるかな!?」

「大丈夫です!私も初めてなので!」

「俺もだよ!やったね!お揃いだね!」

「レッツラ☆パコパコ!」


 めがみ が とびかかって きた !


「うおぉっ!?早!一瞬で壁際に!?」

「さあ、卒業ですよ……」

「おいおいおいおい……嘘だろおい………」

「ふふっ………さあ選んで下さい。異世界へ行くか、私に食べられるか」

「やったね理不尽!」


 ハンラノビショウジョガテヲワキワキサセナガラ、セマリクル。


「ーーーーあーもう!分かったよ!行くよ!異世界!」

「本当ですか!?ありがとうございます!永遠に無い絶対のチャンスをフイにしてまで、異世界を選んで頂けるなんて!」

「本当に連れて行く気ある?」


 なんだろこの絶対的な敗北感。


「ーーはぁ、一つだけ、一つだけ教えてくれ」

「ハイなんでしょう?」

「異世界へは行ったっきりで、もう帰って来れないのか?」

「いえいえ、任意で行き来できますよ」

「そっか、じゃあ分かった。行こうか」

「あ、すみません。その前に……」

「んあ?」

「私の名前と基本人格を設定して下さい」

「名前と………人格?」

「はい。幾ら最低限の干渉しか出来ないといえど、やはり二人で行動する事が多くなります。これは必然的です。絶対です。ですので、少しでもストレスを軽減するため、その人と最も相性のいい、或いは気を遣わせない性格が必要です」


 鈴の鳴く声で、結構重大な事を言い出した。いや、それは………人を、一から作るって事……お前を、消すって事じゃ無いのか……?


「おいおい、最初に選ぶポケモンじゃねえんだぞ?んな事……」

「大丈夫です。記憶がリセットされる訳ではありません。ただ、性格が少々?変わるだけです」

「…………そっか、信じる事にするよ」

「ありがとう、ございます」

「んじゃまず人格設定から………因みに、それはお前の素なの?」

「一応、《カミネ》と言う方の人格をトレースしています」

「えーとっ、普段はお兄ちゃんっ娘でとっても天然ドジな上にアホの子なんだけど、集団の中での立ち位置をしっかりと把握しており、時に明るく、時に仲間内での潤滑油としての役割も持っていて、その際の物怖じしない性格と強い意志がたまに見え隠れする所がまたギャップ萌えするような子?」

「その通り過ぎて怖いです!?」

「んまぁ、似たようなERGを最近やったんだ」

「割と結構元ネタ最低です!?」

「じゃあ、名前は俺の鈴原をとって、《スズネ》でどう?」

「そのまま進められました!?」

「あぁ、その人格設定でいいよ。ストレスは感じるだろうし頭も痛くなりそうだし胃に穴があきそうだけど……」

「だけど?」

「楽しそうだからな」

「ーーーー、そうですか」

「ああ。じゃ、早く行こうや」

「はいっ!」


 女神ーー《スズネ》が宙に手をかざす。そこからパキパキと音を立て、空間が割れて行く。虹色とコールタールを混ぜたような、ドロドロとした空間がひび割れた狭間に見えた。初見だと、少々尻込みしそうな謎現象。例えるなら、タイムホールが一番近いのだろうか。あの、時計が浮いてるやつ。の○太くんはよく、躊躇なく飛び込めたものだと、素直に感心する。


「行きましょう」


 女神が、手を差し出する。形骸的だが、白魚のようなみずみずしい肌。シミ一つない、純白な陶器を思わせる。触れて壊れそうな手を俺の、陽に焼けた傷だらけの手・・・・・・が取る。

 ぐっと、強い力が帰ってきた。顔を上げて、頷く。


「ーーところで、結局なんで俺を選んだんだ?」

「んー今だから言いますが、クジですよ。クジ。本当に完全なランダムです」

「ふーん……」


 まあ、選ばれて、選んでしまったものは仕方がない。やはり、自分の意見で選択したのだから。それを、否定する事は出来ない。

 例え、女神の肉声には・・・・軽い洗脳効果・・・・・・があろうと、軽く決めてしまったのは自身が経験者だという・・・・・・・自惚れにも似た、絶対的な自信があったのだからーーーー。



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少子化問題改善の為異世界転移したんだけど、女神の暴走がヤバイです。 ネコモドキ @nekomodoki

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