ハロウィーンの夜に

fth

第1話 それは10月31日夕方の出来事だった。

 10月31日、そう、今日はハロウィーン、最近ずいぶん盛んになった、子供が主役のお祭りだ。俺、今バイト中、ピザ屋で配達のバイトをしている。随分、暗くなったな、まだ人の顔は見えるが、なんか、はっきりとは見えないような暗さだ。黄昏時というのか、秋も深い太陽が沈むのを、嫌がるように名残惜しそうに、アスファルトの地面を赤く、赤く照らしていた。まぶしいな、そろそろ、冬が来るのか。年末は忙しいのかなんて考えていると、仮装をした子供たちがとうり過ぎていく。みんなで、パーティでもするのだろうか。なんて考えていると目の前を黒猫が通り過ぎていく。危ない、わあ、と思っていると、目の前のトンネルに吸い込まれていった。エッ、こんなところにトンネルなんかあったけ、と思っていると暗闇の中にバイクごと俺は吸い込まれていった。やばい、事故ったか、どうしよう。一年近く、何事もなかったのに・・・・。俺は意識を失った。

 俺は野瀬 透、17歳、高校中退。なんでって、まあ、原因は、高校一年、16歳のの時親父が急に事故で、亡くなってしまったからだ。母親は3歳の時に病気で亡くなっていた。あんまり覚えていない。俺は一人で、かなり心細い思いをしたが、遠縁の伯父が出てきてくれて、かなり面倒なことを色々手伝ってくれた。やっと落ち着いた時には1ヶ月ぐらいも休学してしまい、試験も受けられなかった。学校に出て行くと心配されたがなんとなく、休みがちになってしまった。勉強はもともとあまり、好きではなかったし、まあいいけど、そのまま中退になってしまった。担任の山川先生はかなり色々心配してくれた。

 俺の知り合い、仲いい友達だから、大丈夫といって、ピザ屋のバイトを紹介してくれた。”ピザデビル”よくあるお店だ、赤いTシャツ、帽子をかぶって配達するやつだ。年明けからバイトを始めて、一年近く何もなかったのに。くびになるかしら。どうしよう、なんて思っていると、兄貴のことを思い出した。俺には17歳も年の離れた、兄がいる。名前は、野瀬 一郎。すごく頭がいい。小さいころから、ほとんど神童に近いくらい。東京のいい大学にいって、外国の日本人じゃ名前も知らないような研究所でいい給料をもらっているらしい。地元で結婚して、子供も2人いる。親父の葬式の時にはどうしても帰れないからと電話で話しただけだった。10年くらい前に、結婚式で会って以来会っていない。今度は兄ちゃんに連絡、行くかしら・・・・。と思っていると、目の前が急に明るくなった。




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ハロウィーンの夜に fth @sunsun69

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