エピローグ:まっぱ兄様とまもうと
「ごきげんよう、お兄様♪」
「これで何回目だ? まもうとよ」
「さぁ? 10回を超えてからは数える意味がないと思って数えてませんわ」
いまではお馴染みになってしまった魔王城の玉座の間に全裸男とまもうと ― ディモニークの姿があった。
「それにしても、お兄様はお変わりなくまっぱですのね?」
「チート能力の代償とはいえ困ったものだ」
何度か目の召喚の際に検証した結果、男はこの世界で本来得られるはずの魔法に関する能力を全て身体能力に振り分けられていることが判明した。本来得られる能力が魔王のそれと等価であったため男の身体能力は桁外れのものとなり、衣類の耐久度がその数値に追い付かず破損し結果的に男は常に全裸になるのだった。
「いいではないですか。魔法や物理で傷つくこともないのですし、寒暖も問題にならないのでしょう?」
「それはそうだが、まもうとよ……私にも羞恥心があるのだ」
「……え? それは冗談ですか? お兄様」
最初こそ男が裸であることに抗議していたディモニークだったが最近では慣れっこだ。
「お兄様は心身ともに逞しいですから……そういう意識があるとは思いませんでしたわ」
「まもうとよ、どこを見ている? セクハラだぞ?」
最近ディモニークはこういったセクハラまがいの振る舞いが増えてきてかなわない。男は気を取り直して彼女に訪ねる。
「で? 今日の用事はなんだ?」
初めて異世界に召喚され勇者と対峙した日以来、男はたびたび置換召喚でこの世界に呼び出されていた。その理由は様々で、魔族統治に関するアドバイスや人間族との交渉に関する相談、兄である魔王がウザ過ぎたからと多岐にわたる。基本的に魔王は魔法の天才であることしか取り柄がないため役に立たないらしい。
ちなみに魔王は現世で妹と意気投合して召喚されるたびに遊びまわっている。
そんな状況なので男にとっては異世界に呼び出されるのは日常の一幕となっていた。呼び出されるたびに全裸になることを除けば、だが。
「ふっふっふっ♪ 今日はお兄様のために呼び出したのですよ! きっとお兄様は私の行いを
自信満々のまもうとのドヤ顔に一抹の不安を覚えていると、玉座の間の扉が開け放たれた。
「魔王よ! 私は帰ってきた! 今日こそ貴方を倒すっ!!」
力強く宣戦布告しながら玉座の間にやってきたのはかつて男に敗北した女勇者だ。その瞳には自信の光が宿っていた。
「……そういうことか、まもうとよ」
「ええ」
男は彼女のことを気にかけていた。彼との戦いで心が折れてしまっていないか心配だった。だがそれは杞憂だったようだ。
「お兄様、コレは私からのサービスですわ」
まもうとが指を振るうと魔力が凝集して黒い球体となり男の秘部を隠す位置に浮かび始めた。彼女なりの勇者に対する配慮だろう。
「ナイスだ、まもうとよ」
「その女に見せるのも業腹ですからねっ、さっさと倒して屈服させてくださいませ」
男はディモニークの願い ― 人間族との戦いの終結のために勇者を仲間に引き込めないかと考えていた。そしてそのためには彼女を打ち倒す必要があった。
「戦闘での負けはないのですから、あとはお兄様の○○○でメス犬のように服従させれば万事解決ですわね♪」
「滅多なことを言うなまもうとよ!」
こうしてまっぱなお兄様は魔王の妹の我がままに振り回されながら、ときに勇者と戦い助け合いつつ ― やがて世界を救うのであった。
チカン召喚まっぱ兄様 世楽 八九郎 @selark896
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます