エピローグ
Ride 20
刑事に見送られ、鐘乃魅希は警察署を出た。約三日ぶりの外はまぶしかったが、カラッと晴れていて気持ちいい。空が青く、晴れていればいるほど体がうずく。出入り口で立番をする警察官の目もはばからず、大きく深呼吸して背伸びをした。
そこにはハネウマ全員と母がいる。
あのあと東原兵太は藤堂麗華などによりあっさり確保されたらしかった。考えてみればハネウマには優秀なメンバーが揃っている。鈍臭い彼を捕まえるのは容易なのだ。
アルマハト製薬のデータは無事にマスコミの手に渡った。裏づけに時間を要し、釈放が少々遅れたのは致し方ない。無罪放免となればこちらのものだ。
母が神妙な顔つきで歩んでくる。怒られるかなと思ったら、案の定平手打ちをされた。しかしそのあと抱擁されたのは意外だった。
「アンタって子はどれだけ心配かけさせたら気が済むの!」
母の声は涙ぐんでいる。それにつられ、魅希も涙腺が緩んだ。なにか久しぶりに母の温もりを感じた気がする。子供の頃はたびたび抱いてもらっていた。いつだって彼女は心配をしてくれていたのだ。胸の奥につかえていたモノが取れたように思える。
母にAHMの使用について訊こうかどうか迷い、やめておいた。手段を選ばずなにがなんでも助けようとしてくれた結果だ。自分がいまここにいる、その事実だけで満足だった。
「ありがとう、母さん」
少し驚いたふうな顔をした母は微笑み、魅希の手を引く。
警察署の駐輪スペースにはハイパーシェルがあった。故障したはずの部位が完璧に直っている。ほとんど諦めていたのに、また再会できたことがたまらなく嬉しかった。
「ここの皆さんが修理してくれたのよ」
みんなに向かって、ありがとうを言う。お金は母が出してくれたようだ。
魅希はハネウマ側に立って母と向き合った。エヘンと咳払いをする。
「ちょっと遅れちゃったけど紹介するね。これがアタシの友達よっ!」
母は、いいお友達ね、と言って微笑した。
「お母様、魅希様をワタクシにくださいですわっ!」
「どさくさ紛れになに言ってんのよ、アンタはっ!」
麗華にチョークスリーパーをかける。ガイコツ化した彼女の力は強く、ズルズル引きずられた。婚姻届を持って母を困らせている。コイツだけは友達から外そうかと本気で思った。
魅希はバイクにまたがって赤いフルフェイスメットをかぶる。
「それじゃ、ツーリングでも行きますかっ!」
ハネウマ全員が晴天に向かって声を上げた。
END
ハネウマ☆ライド キビト @kibito
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます