異世界新喜劇 ~もしも勇者の剣が小麦色だったら~

ずっと青春

最後の戦い

『ここです』

勇者カリバーンは村人に案内され魔王城へと足を踏み入れた。

『来たな勇者よ』

玉座に腰かけた魔王が立ち上がり、漆黒のマントを靡なびかせて勇者の元へ歩み寄る。

『プークスクス、黒マントってお前中二病かよ』

『魔王だよ!』

勇者は出会い頭に「魔王のファッションを笑う攻撃」を繰り出す

魔王はお気に入りの黒マントを笑われて、精神的ダメージを受けた。


『許さん、勇者カリバーン あの世に送ってやる』

言いながら魔王は漆黒の魔剣 レーヴァテインを構える。

対する勇者も腰に携えた小麦色のつるぎを抜いた。

『待て貴様 なんだそれは!?聖剣エクスカリバーはどうした!』

『ふっ、そんなもの始まりの村で道具屋に売ってやったわ』

『愚かな。聖剣なしでこの魔王に勝てると思っているのか』

『ふっ、お前などこのフランスパンがあれば十分だ』

『舐めるなー!』

逆上した魔王は漆黒の魔剣レーヴァテインを振りかぶり、勇者に向かって切りかかる。

勇者も小麦色のフランスパンで応戦する。


魔剣とフランスパンがぶつかり合い魔王城に高い音が鳴り響く。


『馬鹿な! このレーヴァテインと互角だと! 一体なんなんだそのパンは』

『このフランスパンはダイヤモンドより硬いヌープ硬度10000を誇る』

『それは本当にパンなのか?』


魔王があまりのパンの硬さに驚愕しているその頃

入口で戦いを見守っていた村人は『プークスクス、魔剣がフランスパンと互角w 互角ww』

と腹を抱えて笑っていた。


『こんなことあるはずがない。魔剣レーヴァテインが負けるはずがないんだ』

魔王が再びレーヴァテインを構え直し、勇者に切りかかったその頃

村人は『魔剣だけに負けんってか』といらぬ茶々をいれていた。


切りかかってくる魔王に対し、勇者は悠然とフランスパンを構える。

『来い魔王 お前などこのフランスパンのカビにしてくれる』

『さびみたいに言うなー!』


再び二人の戦いが始まる。 しかし両者の力量は完全に互角だった。


『やるな勇者よ。 お主の力、そしてそのフランスパンの硬度、信じられんが認めよう だが、これまでだ』

魔王は『ぐおおおおおお!』と叫びながらエネルギーを溜める。

『チャンス!』

『ぐあー』

勇者は待たなかった。容赦なく魔王に切りかかると、フランスパンで魔王の胸を切り裂いた。

『おのれ、貴様それでも勇者か』

魔王が息も絶え絶えに言う

『アニメの見過ぎだ中二病め 本当の勇者は好機を逃さない』

『本当の勇者はフランスパンで魔王と戦わんわ!』

どちらも正論 どちらも間抜けである。


『だが、エネルギーは溜まったぞ』

魔王の左手から黒々しい炎が立ち上っていた。

『これが貴様を消し去る魔界の炎 獄炎だ』

『魔界の炎なのか地獄の炎なのかハッキリしろよ』

『うるさい!勇者カリバーン 地獄の炎で焼き尽くしてやる』

魔王は結局地獄の炎を取った。


一方その頃村人は『カリバーンだけにフランスパンのようにカリカリに焼いてやるってか』といらぬ茶々を入れていた。



『これで終わりだ勇者よ。 魔王まおう炎殺えんさつ獄龍波ごくりゅうは!』

魔王は左腕に宿した獄炎を勇者に向かって解き放つ

対する勇者は獄炎に向かってフランスパンを叩きつける。


『我がフランスパンはこの程度の熱には負けん!』

『バカめ。 フランスパンもろとも粉々に焼き尽くしてくれる』

『パンだけに粉々にってか』

愛刀フランスパンに絶対の信頼を置く勇者

獄炎に絶対の自信を持つ魔王

茶々を入れる村人




決着の行方は!





いつか描かれるかもしれない。


『『『今書けよ!』』』

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