異世界納税したらなにが届くか知ってる?

ちびまるフォイ

異世界にいるお前はだれですか

最近、ふるさと納税に新しいのが登場した。


「異世界納税!?」


「らしいよ。異世界に納税すれば、

 現地にいる異世界転生の人から品がもらえるんだ」


「す、すげぇ……」


早くに母を亡くし、父親もどこかへ蒸発した俺は

家に金を入れるでもなくムダに増えている貯金だけがあった。


せっかくなので使い道のないこの金を活用してみることに。


「本当に届くのかなぁ」


>異世界に納税されました!

 ご利用ありがとうございます。



口座を介して異世界に納税した。

数日後、玄関のドアが叩かれた。


「すみませーーん、お届け物です」


「あ、はーい」


玄関を開けると手ぶらの配達員が立っている。


「え? なにか届いたんじゃないの?」


「はい。お届け物です、住所はこちらで合ってますよね」


宅配の人は住所を確認し、サインを受け取った。


「あの、何も持ってないですけど何が届いたんです?」


「異世界納税したでしょう? こちらが届きました」


「はじめまして。フローレンシア・アイリス・フィールです」


「誰!?」


「ありがとうございやしたー」


お役御免とばかりにさっさと帰る宅配業者の後ろから、

金髪のお嬢様的な女の子が出てきた。


「私、異世界で主人公さんのおつきの一人ですが、

 先日"なんかお前キャラ薄いからいらない"とのことで

 異世界納税用の品として現実世界に出品されたのです」


「やってることがほぼ奴隷産業だよ!!!」


女っ気がない俺にとってはかえがたいお礼ではあるけれど。

納税した金額よりも見返りが大きいことに変わりはない。


「よし。もっと納税したら今度はなにが届くんだろう」



>異世界に納税されました!

 ご利用ありがとうございます。



また数日後、手ぶらの宅配業者がやってきた。


「ご利用ありゃりゃしたー」


「返事が雑になってってる……」


宅配業者が去ると、今度は魔王が届いた。


「我輩、主人公に負けて平和になったからもういらないと

 現実世界へ島流し……ではなく出品されたのである」


「そ、それはお辛いですね……」


今度はへんな被り物をして杖を持った自称魔王が届いた。これはいらない。

狭いひとり暮らしの部屋には美少女と魔王といった

これこそ異世界に近い空間に変わっている。


「最初は異世界の武器とかアイテムとか届くのかと思ったけど

 どうしてこう生物ばかりが届くんだ……」


「主は友達が少ないからよかったではないか」


「ほっとけ!!!」


ふたたび異世界に納税し、今度はいい品が届くことを期待した。

頼むぞ異世界にいる勇者さんよ。


数日後、宅配業者がやってきた。


「お届けにきましたーー」


「今度は何が届いたのかな。もしかして異世界の食材とかだったりして……」


「いえ勇者です」


「はぁ!?」


宅配業者が連れてきたのは勇者だった。

「でんせつ」と書かれた剣と、1-Aゆうた と刺繍されたマントを着ている。


「ぼくはゆうしゃゆうと! 異世界からけりだされた!」


「い、いらねぇ!!!!」


ますますカオスを深める俺の家だったが、ふと疑問が残った。


「異世界納税のお礼って勇者が贈ってたんじゃないのか?」


「ぼくはそんなのしらないよ。てんせいしたっていってた」


「転生? ますます誰だよ……?」


異世界にいるのは誰なのか。

俺ははじめて異世界納税の際にメッセージを送ることにした。



>異世界に納税されました!

 ご利用ありがとうございます。


"あなたはいったい誰ですか?"



数日後の宅配業者の到着をまった。

しかし、今回はいつになっても来ない。


「やっぱりメッセージ入れたのがいけなかったのかな」


日付が変わったころ、近所迷惑ガン無視で宅配業者がやってきた。


「おい! 今何時だと思ってる!」


「0時ですよね」


「こんな時間に宅配するやつがいるか!!」


「これが異世界納税者の希望でしたので」


「はぁ!?」


宅配業者はもう誰も連れていなかった。

そのかわり、手元には小箱を持っていた。


「異世界納税したでしょう。あちらからお届け物です」


小箱を受け取って中を開ける。



―――――――――――――

ハッピーバースデー、息子よ。


父さんな、異世界に転生して頑張っています。

お前も現実世界で頑張れよ。

―――――――――――――


「異世界にいる奴って……親父だったのか……!」


俺の誕生日を忘れずに異世界で苦労がうかがえるケーキを送ってよこした。

今までも、俺の孤独を埋めるために人を送ってたんだ。


「親父……ありがとう……」


俺はどこかにいる父親に感謝をつげた。








――――――――――――――――――――――――――

PS:次の納税はいつですか?家賃が払えなくて困ってます。

   なるはやで納税をお願いします。

――――――――――――――――――――――――――


「親父異世界で働いてないのかよ!!!」



でももう納税はしないと誓った。

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