◯豊かな世界へ
気がつくと俺は、
公園のてっぺんに寝転がっていた。
空は群青。空気は清浄。日は暑く、草茂り、
美しい自然の中で、俺は起こされた。
「やっぱり、君でよかった。アユト君。」
「カエデ。俺一歩、踏み出せたよな。」
「うん、立派な一歩だよ。黒いモヤで覆われた世界は、アユト君によって、美しく美化された。
みんな無事だよ。ありがとう。本当に。」
「いや、俺の方こそ、お前のおかげで…。」
「はは!あのさ!今からあの橋行かない?」
「は、今から?だって、今は体験学習中だろ?」
「昼休みなうだよ、時間あるから、ね!」
「そうだな、行ってみるか。」
さんさんと降り注ぐ日の下で、俺は考えていた。
今更だけど、なぜミラーボウルだったのだろう。
考えてもわからねぇな。
それに、カエデは俺をずっと待っていた。
もしかしたら、
俺もどこかでカエデを…そりゃないか。
「さ!着いたよ!今日は川日和だ!」
「たっけーな。」少し、怖くなってきた。
「大丈夫だよ。アユト君は勇者だもん。」
「いや、そんなんじゃ、ねぇよ。」
それに、今ここにいるのはカエデのおかげなんだ。
橋の上に立った時、頭の中に声が響いた。
''辛い''
''嬉しい''
辛いと、嬉しい、か。
ああ、ミラーボウルって、
…そういうことだったんだな。
風が体をすり抜ける。
川が澄んでいる。
高い、でももう、足は震えていないのがわかる。
一歩踏み出した世界は素晴らしいのだからな。
隣にカエデが立つ。
「じゃあ!いっくよー!」
「太陽が、眩しいですね。」
「っとと、え?どういうことー?」
「さあ、なんだろうな。」
「気になる!なんだっていうのー?」
「飛べばわかる。」
「はい、はーい。」
「よし、行こう。」
そして、俺は、俺たちは。
''せーの!!!''
ありがとう。カエデ。
さよなら、俺。
よろしく、俺。
ああ、太陽が眩しすぎる。
''ザッパーン''
…最高な世界だ。
水しぶきが美しく舞うその瞬間、
俺はそう思えたのだった。
END
君は臆病者だよ。でも…。 しょしょしょ、 @shoji-tsubasa
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