第12話///これってもしや始まりじゃない?
月に二度開かれる骨董市に僕は足を運んだ。愛用の肩掛けカバンには例の万年筆と
僕は、
「あの……」
どう話を切り出そうかとかまるで考えずに思わず声をかけると老人が顔を上げた。その時、僕に向けて見せた笑顔は以前の微笑ではなかった。
「ほっほっ……
そう言うと老人は立ち上がって靴を履きはじめる。
「え、あの……お店は?」
「
老人は、グラスに飾ってあった万年筆と
「あ、ちょっと待ってくださいよ~」
近くの喫茶店に腰を下ろすと老人は最初に百円ライターで
「
「は、はぁ……」
何から話すべきかと頭をフル回転させている僕は、それどころじゃないどうしても生返事になってしまう。
そんな僕に老人は、一枚の
「あの……これは?」
「書いてある通りさ。……何? 読めないって?今どきの若者は……」
僕、若いったって三〇過ぎてるんですけど。
「
「……はい?」
老人の説明によると僕は、数々の魔法技術と
「この紙とペンだって大元はあんたが遠い国から持ってきたんだよ?」
そういうと老人は先ほどの罫紙の上に万年筆を置いて見せた。
「で、でもそれだと
「ウチの家系は代々、学者を
手を差し出してきた老人は、僕の書いた原稿を見せろという。
編集者に持ち込みの原稿を見てもらう新人のような
「ふむ……序章としてはこんなもんかの。しかしちょっと問題があるかなぁ」
「な、何でしょうか?」
老人が再び
「お前さんが設定した中世というのがいつ頃かわからんが雰囲気から言うて十三~四世紀じゃなかろうかね?」
「え……えぇ、それがどうしたんですか?」
「いや、編纂された歴史では、ナガマサは十六世紀に種子島へ到達するんだわ。いくら英雄でもそこまで長生きできるものかのぉ?」
ピシッと心の折れる音がした。と、同時に腹の底から笑いがこみ上げる。
「……いいでしょう。最大の
僕の決意を一通り聞いた老人は、口から
「さようか……まぁ、お頑張り」
老じ……爺ィの物言いに僕はこのライトノベルに全力で取り組み絶対に大賞を取ってやろうと決意した……。
<おしまい>
日帰り異世界冒険譚 s286 @s286
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