「食」を扱った小説は山ほどありますが、読者に「これ食べてみたい!」と思わせるのはなかなかハードルが高いように感じます。でも私、この物語を読みながらずっと「食べてみたいなあ」とよだれを垂らしそうになっていました。ここに登場する食材『ぬきつ』は、作品を読むその瞬間までこ私の頭のなかにカケラも存在してなかったのに、ですよ!
「美味しそうだから」
って当たり前の理由よりも、
「どんな味がするのか、恐々でも試してみたい!」
って、好奇心の方が絶対勝ってました!
これこそが、この物語の一番の魅力です。助教授さんにはいろいろな味を求めて、さらなる探訪を続けてほしいぐらい。
ネタバレしてしまうので詳しくは書けませんが、『ぬきつ』を使った幾つかのレシピのうちの一品には、ちょこっとおでんを想像しました。うま味がたっぷり溶けだした出汁のなかに浮かぶ、ぶっくり膨らんだ練りもの、みたいな……。
お話としてのオチも楽しかったな。
s286さん、「ごちそうさまでした!」