ノノちゃんは生理的に無理らしい

λμ

生理的に無理です。

「あ、いたいた。ちょっ、ちょっと待ってってノノカちゃん。ひどくない? 俺との約束忘れた? 教室行くまで待っててって言ったじゃん」


「生理的に無理です」


「えっ、なに? どういうこと? 待つのが無理だったってこと? それともトイレ的な事情――ってそれはないよね、だったら無理だったんです、だもんね。つまりアレ? 俺の誘い方がもう気持ち悪いとかそういうこと?」


「生理的に無理です」


「うわ、辛辣。今日が初デートになるのに、もう生理的に無理とか辛辣すぎるよ。いや分かるよ? ノノカちゃんマジメそうだし、俺みたいな年中補修くってるような奴とは一緒にいたくないってのはさ? でもほら、図書室に居続けるとか辛くない?」


「生理的に無理です」


「だよね! そうだよね。普通はそうだって。だってほら、いつ行っても図書室にいるのノノカちゃん一人だけだしさ――ってノノカちゃん生理的に無理じゃないじゃん。図書室いるじゃん! あ、ボケ? もしかしてボケてくれた?」


「生理的に無理です」


「あー……だよね! ノノカちゃんはどっちかっていうとツッコミだしね。って、ちょちょちょ、そっちじゃないって、そっちにスタバないから! ないからって!」


「生理的に無理です」


「何が!? 今度の生理的に無理はちょっと意味分からないよ。あ、なに、もしかして今日不機嫌だったり――あっ、もしかして、生理的に無理ってそういう意味で――うわコワ! ノノカちゃん、その目怖いよ! 冗談だって! いや冗談としては面白くなかったかもしれないけど――」


「生理的に無理です」


「ごめん、ごめんって! 下ネタ苦手なら先に言っておいてよ、ってそりゃ無理か。今日が初デートだもんね。第一声が下ネタ無理です、とかそれこそ生理的に無理ですって話になっちゃうし」


「生理的に無理です」


「だよね! 分かるわー、俺もこれで結構、勇気出して言ったからね。普通は言えないよ? こういうこと」


「生理的に無理です」


「えっ? そんな? そんな重い感じで無理な話? ってか歩くの早い! 早いって! もうちょっとゆっくり歩こうよ」


「生理的に無理です」


「えっ、なにそれ。ノノカちゃん何をそんな生き急いでるわけ? ハムスター? ハムスターなの? そういえばノノカちゃんハムスターっぽいところあるよね」


「生理的に無理です」


「ダメか! ネズミ系は無理なタイプだ!?」


「生理的に無理です」


「そうかぁ、そのパターンかぁ。ごめんね気づかなくて、いやなんかノノカちゃんって小動物っぽい可愛さがあるよねって話をしたかったんだけどさ」


「生理的に無理です」


「えっ、今度はどっち? 小動物がダメな感じ? それとも動物全般的な話? できれば今のうちにその辺も教えておいてくれると嬉しいんだけど」


「生理的に無理です」


「だめかー! まだそこらへん話せるほどじゃないかー! まぁまだ初日だしね! そういう話はおいおい、おいおいね!」


「生理的に無理です!」


「なに? 秘密の多い女? ミステリアス系なの? いやもう十分ミステリアスだよノノカちゃんは! そんなキャラ作んなくていいって!」


「生理的に無理です」


「どういうこと!? キャラじゃないの!? それが素!?」


「生理的に無理です」


「どういうこと!? 素を出すのはまだ無理ってこと!? って、ちょちょちょ、今度こそ! 今度こそ曲がろう! その先にフクロウカフェっていうのが――」


「生理的に無理です」


「鳥! 鳥もダメ! 待って待って待って加速してる! 加速してるよ! 少し速度落とそうよノノカちゃん!」


「生理的に無理です」


「ああもう! 徹底してるなぁ! 徹底してるなぁノノカちゃんは! もうこうなってくると何で俺と付き合うのOKしてくれたのか分からないよノノカちゃん!」


「生理的に無理です」


「どういうこと!? 本格的にどういうことなの!? 断るのが無理ってこと? だとしたらもう、付き合おうって言われたら誰でも良かったってことになるよね!?」


「生理的に無理です」


「もう! どっち? どっちの意味なの!? さすがに誰とでもOKって話じゃないってことなの!? それとも俺とだからOKって話なの!?」


「生理的に無理です」


「誰が! っていうか、どっちが! ノノカちゃん! たまには生理的に無理です以外のことも言ってよ!」


「生理的に無理です」


「どういう! どういう病気なの!? いい加減にしてくれないと、温厚な俺だって怒るよ? 怒っちゃうよ? これでも俺、怒ると怖いんだからね?」


「生理的に無理ですよ」


「ちょっと変化した! 語尾だけ! ノノカちゃん、俺が怒るの苦手だって分かって言ったよね!? てか、さっきからずっと笑い堪えてるよね!? 分かるよ? さっきから肩震えてるかんね!?」


「生理的に無理です」


「さすがに俺はそこまでニブちんじゃないって! 笑ってるじゃん! もう完璧に笑ってるじゃん! なんで生理的に無理ですばっかなの!? そんなに俺とコーヒー飲むのは嫌なわけ!?」


「生理的に無理です」


「カフェインアレルギー的なあれなの!? それとも俺とコーヒー飲む方なの!? どっち? これなら二択だよね? 生理的に無理です、じゃ答えられないよね!?」


「生理的に無理です」


「しくじったよチクショウ! そうだよね! どっち? で止めておくべきだったんだよね! もうさぁ、何か俺が悪いことしたなら謝るからさぁ、どっか寄っていこうよ。お願いだからさぁ」


「生理的に無理です」


「そうだよねぇ。いい加減に俺も分かってきたよ。絶対そう返してくるんだろうなって思ったもん。そんなに俺と帰るの嫌なの?」


「生理的に無理です」


「マジかよ! もうほんと、なんでOKしてくれたのか全く分からないよ! もうこうしよう! 今のうちに俺のダメなところ言ってよ! 直すから!」


「生理的に無理です」


「無理じゃないよ! 直すよ! そりゃなんでも直すのは無理かもしれないけど」


「生理的に無理です」


「目ぇ冷たいって! 直します! 全部! ダメそうなところは全部直すからそんな目でみないでよ! 心が傷つくの! 心が!」


「生理的に無理です」


「どこら辺が!? いまの!? 心が的な話!? ……………………………………………………………って今度は回答なし!?」


「生理的に無理です」


「答えるのも!? とうとう答えるのも生理的に無理になった感じ!? …………………………………………ってこれも回答なしなのかい!」


「生理的に無理です」


「なんで!? 恥ずかしいとかそういうこと!? ………………………………………………もう、もういいよ。わかったよ。ノノカちゃんがそういうキャラなのかどうなのかは知らないけど、からかうのはやめてよ」


「生理的に無理です」


「分かったってば。……もうさ。結構傷つくんだよ、そういうの。俺、本気だしさ」


「生理的に無理です」


「だから分かったって! もういいよ! からかわれるだけなら、俺だってキツいからさ。もう、なんだろ付き合ってって言ったのナシで――」


「生理的に、無理です」


「……その目ズルいわぁ。なに? なんで泣きそうになるわけ? いや、生理的に無理って言い続けてるのノノカちゃんだからね? 俺が悪いわけじゃない………………って、なんか言ってよ」


「生理的に無理です」


「恥ずかしいとか、そういうことなの? 俺、今日、生理的に無理ですしか聞いてないんだけど?」


「生理的に無理です」


「ますます意味が分かんないし。俺、今日は帰――なに? 離してくんない?」


「生理的に無理です」


「なに? どこに連れてこうって……なに、ここ。喫茶店? えっ? もしかしてノノカちゃんの家的な? ……ちょっ、そういうの、そういうのさぁ! もうちょっと早く言ってよ! 知ってたらスタバとかフクロウカフェとか言わないからさ!」


「生理的に無理です」


「あぁもう! ノノカちゃん! もう! 入っていいの? 俺も一緒に行っていいの? って待って、ちょっと、心の準備をしたいから――」


「生理的に無理です!」


「ストップ! ストップ!! ノノカちゃんパワフル! つか俺にも心の準備させて! いきなり親御さんに挨拶とかハードル高すぎる――あ、今度からノノちゃんって呼んでいい!?」


「生理的に無理です!!」

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ノノちゃんは生理的に無理らしい λμ @ramdomyu

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