顔はいいけどだらしない、賢いんだか愚かなんだか分からない――そんなつかみどころのないヒーロー(?)ハサンが、人違いから船に乗って冒険をすることになるお話です。
このハサン、ひょうひょうとしていて、何がどこまで本気なのか分からない。
計算してやっているわけではないんですね、本人が本当に自分の置かれている状況を分かっていない。
海賊に襲われても、魔術師の珠を拾っても、なんだかどこか他人事……。
彼は「本気になる」ということがないんです。
その上、何か特別なことができるわけではない。むしろ、船室に隠れて時をやり過ごすような奴で……。
でも、どこか憎めない。
なんとなく、ハサンが冷静に状況を見ているのを、読者も一緒に見てしまう。
ハサン、本当は大変なことになっているのよ……。
だけどなんだか、なんとなく、大丈夫なような気がしてくる。
不思議な魅力のある青年です。
「星の都の子どもたち」という作品の番外編ですが、「星の都の子どもたち」が児童文学風の心温まる少年少女の冒険ものだったのに対して、こちらの作品は説話風、よりアラビアンナイトの世界を感じられます。
共通の登場人物が出てきますが、ハサンはこちらの作品にしか登場しないキャラですし、まったく独立した別の作品として楽しめます。
アラブの海の男たちの話を感じたい方にオススメです。
ちなみに私はアジーズが本当に大好きなのでアジーズの話を見ることができて嬉しいです。作者様、書いてくださってありがとうございます。
(最新話13話まで拝読した段階でのレビューです)