納射会

納射会、その年最後の部活の練習で行われる部活道内大会である。


「本日は年内最後の部活なので、納射会を行いたいと思います。いつも通り準備体操を行った後、ホワイトボードに書いてある通りの順に弓を引いてください。上位5人には景品を渡したいと思います。」


高校生とは現金なものである、景品という言葉に釣られて色めき立つ。

いつも通りに体操を終えて軽く調整をし、納射会が始まる。

同じ部活仲間だが今日は全員が敵。とはいえ、サボり組は自分が上位5人には入れないと半分諦めているため、誰が勝つのか賭けを始める。


「誰が勝つと思う?」

「流石にレギュラーメンバーが勝ちそうだし、主将の安川じゃね?」

「俺もそんな気がするわ」

「同じ人予想したら賭けにならんやないかーい!」


賭けが成立しないと決まれば、次は自分達の中で競争が始まる。話し合いの結果、サボり組の中で最下位の人が1位の人にジュースを奢ることになったらしい。学生にとってのジュース1本は中々大きい。負けられない戦いがここに始まる。


納射会は副主将の三上が優勝し、主将の安川は3位だった。待ちに待った景品贈呈は、優勝者は大学ノート5冊、準優勝は大学ノート3冊、3位が大学ノート2冊で、4位と5位は大学ノート1冊であった。


「何か思ってた景品と違うんやけど」

「学生の本分は学業だからのう!」

「まあ、それはそうですね…」


景品を貰った者は複雑そうな顔をしていた。

午前の練習が終わり、休憩をした後は午後練習だ。


「先生、午後は何をするんですか?」

「午後は近くの神社にお参りしに行くぞ。」

「あ、分かりました。」


先生を先頭にし、生徒が歩く。

10分ほど歩いくと神社に続く階段が見えるた。体力の有り余る者は階段を全力で駆け上がる。山中先生は「元気じゃの」と笑いながらゆっくり階段を登っていく。


神社に着くと全員でお賽銭を投げ、神様に1年無事に過ごせたことを感謝する。そして少し休憩した後、弓道場に帰る。


「残りの部活時間で弓道場を大掃除するぞ。」


山中先生の言葉に部員が返事をするが、めんどくさそうにしているのが伝わってくる。

安土の手入れをする者、監的小屋かんてきごや(的の近くで矢が的に当たったのかを報告するための小屋)の掃き掃除をする者など、役割分担をして掃除を進めていく。

中でも不人気だったのが、弓道場の拭き掃除だった。

ただでさえ寒い冬に、雑巾がけを好んでするものはいない。平等にじゃんけんをし、負けたものが雑巾がけを行っていく。


こうしてその年最後の練習は終わった。

…自主練習する者はその後居残りで練習をするため納射とは一体何だったのか、そこは考えてはいけない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕の高校弓道ライフ モリモリ @kurimaron

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ