冬編
クリスマス
クリスマス…それは男女カップルにとっては特別な日。逆に、そうでない者にとっては呪われた日。
ここは工業高校なため、残念なことに後者しかいない。
「明日25日日曜日やけ練習休みやけどさ、彼女おらん男子だけで集まって呪いのクリスマス会やらん?」
「「「いいね!」」」
居残り練習中の突然の水野の提案に非リア男子が乗る。
「安川お前絶対明日ここ来んなよ!」
「確かにお前練習しに来そうやな!絶対来んなよ!」
「えっ!? ダメなん!?」
「うるせぇ!お前は家で彼女といちゃいちゃしてろ!」
「午前くらい許してや」
「絶対来んな!」
彼女のいる安川は突然の練習禁止令に抗議するも、非リア男子のよく分からない猛反発により折れてしまう。
少ししょんぼりしている安川を無視し、具体的に何をするかを決めていく。
「全員で300か400円ずつくらいお金出しあってケーキ食べね?」
「おぉ~、いいね!」
「誰が買いに行く?」
「ケーキ屋がうちの近くにあるし、俺が買っていくわ。」
ケーキを買う者に全員がお金を渡し、その日は解散した。
翌日25日の午後、非リア男子が集まる。
午前から練習をしている者も多くいたが、全員が集まったのは午後だった。
同じ弓道部仲間だが、趣味はバラバラで共通のことは弓道くらいしかない。結局、集まった者で小規模の弓道大会を行うことになった。話し合いの結果、成績が最下位の者は校内の自動販売機で1位の人になった。
少し時間が経ち、いい時間になるといよいよお楽しみのケーキの時間である。
「そういえばケーキ時間経ってるけど大丈夫かね?」
「朝一に買って家で保冷剤ごと冷蔵してたし、多分大丈夫。あ、使い捨てフォークも余ったお金で買ってきたけど包丁とかないから紙皿は買ってきてないよ。」
「え、ならどうやって食べる?」
「全員でケーキつつけばよくない?」
弓道場で小さなケーキを中心に男子が丸を作って囲み、ケーキをつつき会う異様な空間ができあがった。
ケーキをつついていると、残り半分位のところでストーブが『残りの灯油が少ないため給油してください。』と訴えてくる。
「これ誰が給油する?」
「さっき最下位だったしお前行ってこいよ。」
「さっきジュース買いに行ったしそれはもう無しでいいやん!じゃんけんで決めようぜ?」
「最下位に人権ねぇから!」
「酷くね!?」
「大丈夫、俺らも鬼じゃ無いからケーキ食べ終わった後でいいで。」
「今すぐだったら流石に鬼すぎるわ!」
揉めた結果、弓道大会で最下位の者が給油することになった。
ケーキを食べ終わり、そのゴミを片付けている間に給油係はストーブに給油をする。
「外めっちゃ寒いわ。」
「お、給油お疲れ。」
「給油してきたし誰か後で暖かい飲み物奢ってくれね?」
「弓道で負けたお前が悪い。」
こうして非リア男子による楽しくも悲しいクリスマス会は終わった。
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