割れた卵のパースペクティブ

十一

没ネタ

 村上春樹のスピーチもハンプティダンプティも夏服パースペクティヴも関係ない。


 以下構想というかあらすじ。


 帰宅すると県外で暮らす弟から封筒が届いていた。

 開封してあらわれたのは懐かしのジャポニカ学習帳。私が小学生のころ宿題でつけていた日記だった。

 なぜこんなものがという疑問はあるが、文章を書けなくなっていた私は日記を開く気にもならない。

 夕食後に弟に電話する。形見分けで母の私物を整理していたときに紛れこんだものだろうとのこと。

 弟は勝手に日記を読んだらしくその内容を思い出してひとしきり笑っていた。

「昔から文章書くの好きだったよな」

 カクヨムで私が小説を書いていることも知らないだろう弟の一言にどきりとする。

 電話を終えた私は日記を読んでみる。

 少し背伸びをした生硬な文章でつづられる日常。

 流し読みをしていた私の手はあるページで止まる。

 日記に書くことがないという愚痴を綴った日記。

 日記を宿題にする先生への恨み言めいた言葉もあった。

 その日の日記にもいつも同様赤ペンで先生のコメントが添えられていた。

 私は思い出す。

 この先生ならばこんな内容でも怒らずにコメントをくれるというある種の信頼があったことを。

 そこに読者と書き手の理想的な関係を見た気がした。

 それで私はスランプを脱した。


 みたいなことを書こうと思ったが、最後のくだりを掘り下げるとどうにも直截的になり過ぎるように思えた。

 また、エッセイや私小説としては嘘が多すぎるためあえなくお蔵入り。

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