艶麗な抒情に彩られた処女という、独創的かつ極めて扇情的な肉体と精神を描きぬいた作品。
ところで、女性的エロティシズムを象徴する女神ウェヌスは、地中海世界において「イシュタール」という異名で呼ばれたが、その語には「処女」と「娼婦」という二つの意味があったことを、この作品を読んで思い出した。
古今東西、男は処女と娼婦に惹かれる。処女も娼婦も、愛情という占有からは無縁であるがゆえに、無限に男を赦すからだ。その赦し方に差異があるのみである。処女は完全な拒絶によって男の欲望を抹殺し、逆説的に男を永遠に慰める。娼婦は男の全てを飲みこむことで、彼らを解放する。
処女の肉体と娼婦の精神を持つこのヒロインが、キリスト教的な罰を官能的欲望とするところに、一つのエロティシズムの完成を見た。禁欲による解放という純潔にして妖艶な免罪は、このヒロインに必然的な官能の形態だと思われる。