ジャンルは「ミステリー」ですが、「ホラー」、「SF」、「現代ドラマ」が織り込まれた作品です。
作者さまが作品紹介で記載している通り、まさに「奇妙な味」(読後に不気味な感覚を味わえる作風)な作品です。
オチへの解釈は何通りも想定でき、例えばそれがホラーで終わるかもしれませんし、SFで終わるかもしれません。はたまた逮捕劇となって現代ドラマになるかもしれません。
いくつものオチに変わるこのストーリー展開こそパラレルワールドを含んだタイムトラベルなのかもしれないと思った時、この構成力に驚きました!
ショートショートの短い作品ですが、その中に広がる可能性は無限大です。
亀宮さんに「亀」の文字が含まれていることから、ここにも何らか別の展開があるのではないかと考えています。
とても面白い作品でした。
公式レビューにも紹介されており、スタイリッシュに尖っている作品で、おすすめです♪
浦島太郎の子孫である博士が打ち立てた「タイムトラベル理論」、それを実証する助手として選ばれた亀宮ほのかは、博士と共に発表の舞台に立つ。
「奇妙な味」と言えばかの江戸川乱歩さんの造語で、ひとつのジャンルじゃくくれない、不思議で割り切れない後味を残す物語を指すもの。
そしてこの作品は、その奇妙な味が書かれたものなのです。
本編の特徴ですが、浦島博士のタイムトラベル理論の極端さ、ほのかさんを襲う理不尽さ、その果てに来たる割り切れないエンディング――
各部を見届けた後に初めて、それらを繋ぐ構成の妙を味わわされる点ですね。
さらに、構造が理解できるとまたわかっちゃうんです。猛烈な後味の悪さに込められた必然性と説得力を!
ショートストーリーとは思えないほどの厚みがあって、ほんと、小憎らしいくらいうまいです!
この割り切れなさの極上、ぜひみなさまにも味わっていただきたいのでオススメさせていただきますー。
(スタイリッシュにフルスイング!尖ってるドラマ4選/文=髙橋 剛)
タイムトラベルに関する全く新しい理論を、浦島太郎の子孫が実験で証明するという短編。
時間旅行モノはH・G・ウェルズ著の古典SF『タイム・マシン』を端緒とした一大人気ジャンルとなり、今でも名作が続々と制作されていますね。科学的なアプローチだけでなく、時を超えることで生じる歴史改変の重みもあり、面白いものが多いです。
対して、本作は「珍説」とも言える、時間旅行のトンデモ概念を独自にぶち上げています。
その信憑性はともかく(そもそも時間旅行自体が現実にはあり得ないから過去のあらゆる名作も信憑性なんかないのですが)、その珍説を突き詰めたらどうなっちゃうの!? という引きの強さ、読み手を飽きさせないリーダビリティに感心しました。
作中でどんなタイムトラベル理論を謳ったのか、理論の正しさは証明できたのか、実験は成功するのか…結末のほろ苦さ、皮肉な幕引きにも注目です。