僕はこの世界に大嫌いだと叫ぶ


  九月一日


  僕はこの世界に

  大嫌いだと叫ぶ



  どいつもこいつも

  嫌いだと叫ぶ


  本当のことを

  知ろうともしない

  あいつらが嫌いだと叫ぶ


  あれもこれも

  嫌いだと叫ぶ


  どこにも

  行けなくさせる

  目に見えるすべてが嫌いだと叫ぶ


  僕はこの世界が

  大嫌いだと叫ぶ


  僕を閉じ込める

  この世界が

  大嫌いだと叫ぶ



  嫌いだ

  嫌いだ

  嫌いだ


  全部嫌いだ


  そう叫ぶと


  「どうして」

  「どうして」

  「どうして」


  と

  疑問ばかりが溢れ出てくる


  この世界にその疑問を問うたとて

  答えるはずもないけれど



  「どうして

  目の前にいるのに見えないの?」


  「どうして

  聞こえているのに聞かないの?」


  「どうして

  ここに僕はいるのに気づかないの?」



  どうして

  この世界は

  僕を

  透明人間にするの?



  僕にとって

  この世界には確かに愛おしいものもあったのに

  僕はこの世界から目を背けてなんかいなかったのに


  どうしてこの世界は僕をいとうの?



  この世界は僕を悪者みたいに言うけれど

  先に嫌いだと言ったのは、

  僕じゃない

  この世界だよ



  と

  僕の叫びを聞いているはずの

  通行人は

  奇異の視線を

  向けるでもなく

  何も見えなかったように

  僕の目の前を歩いていく


  雑踏にかき消され

  僕の叫びは

  虚空に消えていく

  まるで最初から存在しなかったように



  九月一日


  僕は

  涸れた声で叫ぶ


  「来なければいい、明日なんて」


  疲れ果てた僕は

  ゆっくりと眠りに堕ちる


  明日が来ないようにと祈りながら



                  

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九月一日 いなほ @inaho_shoronpo

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