レポート3
「最高の食事だった……」
食後のコーヒーを味わいながらつぶやく。コーヒーは僕の時代にもあったし、見た目は殆ど変りないが、やはりこの時代のものは別格だ。これこそが本物のコーヒーなのだろう。全く、今まで飲んでいたのは泥水か何かだったのかと思うほど別物だ。香りが全然違う。
「そんなに喜んでもらえるとは……今までどんなものを食べていたの?」
ルインは少し気の毒そうだ。
「え? そうだな。合成肉とか、しなびた野菜とか旧世代の缶詰とかかな」
「ゴウセイニク?」
「ああ。平べったくて硬くて、何が原料なのかよくわからんやつだ。肉には違いないが美味しくはない」
「へぇ……それで、あなたはどこから漂流してきたの?」
「ああ、その件なんだが、僕は君のいう(漂流)がよくわからない。もしかして、僕のような人が過去にも表れたのか?」
「そうよ。あなたは遺跡に倒れていたんだけど、あそこは昔から突然人が現れることで有名な場所なの。だから、定期的に調査隊が調査しているのよ」
「遺跡……」
遺跡ということは過去に建造されたが現在は遺棄された場所(神殿)のようなものなのだろう。タイムマシンの座標指定がずれて、たまたまそこに飛ばされてしまったのだろうかということはここは過去なのか?
「遺跡というのはここの近くなのか?」
「うーん、徒歩3分ぐらい?」
めちゃくちゃ近かった。
「少し行ってみたいんだが、案内してもらえないだろうか」
「いいよ。ちょっと待っててね」
ルインは準備があるようで、部屋を出て行った。
非常に今更なのだが、今何時なのだろう。僕が身に着けている腕時計型のセンサーには時計機能もあるが、今は14時を指している。だが、これがこの時代の時刻と一致しているという保証はない。
しかし、どうやら僕がタイムトラベルをして21時間が経過したようだ。僕はずいぶん眠っていたらしい。
「おまたせ。じゃあ行こうか」
そんなことを考えていると、ルインが戻ってきた。手にはランタンを持っている。
「遺跡は暗くてちょっと危ないからね」
なるほど。
玄関から出ると、目の前には海が広がっていた。
海辺の丘の上に立っているらしい。素晴らしい眺めだ。空は透き通るほど青く透明で、太陽が頭上で輝いている。
海はサファイアのように煌めき、どこまでも続いていた。
やはり、僕のいた時代とは環境が大きく違う。僕のいた時代の海は灰色で、空は赤茶けているのが普通だった。
「美しい…」
「うん、ここの眺めは格別よ。夕日も綺麗なんだから」
凄い。ここはまるで楽園ではないか。こんな場所が存在するとは。
「遺跡はこっちよ」
ルインが指差す方を見ると、海とは反対側のルインの家の裏手に小さな小屋のようなものが建っていた。
「これが遺跡…?」
にしてはえらく小さい。小屋も比較的新しい感じだし。ただの倉庫に見える。
「中に入ってみて」
言われた通り、扉を開けて入ってみる。広さは僕が先程まで寝ていた部屋より小さいぐらいか?
物が全く無いので気持ち広く感じるが、まあ、倉庫だなって感じだ。内装もシンプルで特に装飾もない。
ただし、明らかに不自然な点として床に扉がついている。
デイリーミッション 浅川さん @asakawa3
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