映画のような夢

鯉々

陳腐なホラーと視線

 私は年に数回だけ夢を見る。

 どのような夢かはその時によって様々だが、必ず三人称視点である。そう、映画やドラマといった感じだ。いつも、作られた映像を見ているかのようで少し不思議な気分になる。


 ある日、私は夢を見た。夢の中の私は車に乗っている。その私を窓の外や車内から映している。

「ねえ、まだ?」

 夢の中の私が運転席と助手席にいる両親に尋ねる。すると両親は後少しで着くという旨の発言をした。


 私たちの乗った車は一つの日本母屋の前に停まった。両親に続いて私が降り、家の扉を叩く。しばらく待っていると一人の中高年の男女が出てきた。私の親戚だ。両親は親戚と他愛もない話をすると家の中に入っていった。私も続けて玄関に入り、玄関に飾られている壺を見ながら「高そうな壺じゃなァ」等と思いながら家の中へと入っていった。


 何やら親戚との会話が長引いている様でなかなか帰れないことに業を煮やした私は外に出てみることにした。そんな私を映す映像の端にいくつもの盆栽を置いている台が入ってきた。「これを見ながら時間でも潰すかな」等と思い、台を視界に捉えたその瞬間、不気味な程に真っ白な少女が立っていた。その目は何処見ているのかさっぱり分からず、何を考えているのかもさっぱり分からなかった。私は一目散に逃げ出した。三人称視点の範囲から外れてしまい、最早何処を走っているのかも分からない。


 私を覚醒させたのは車の音だった。先ほどまでの事が夢であったということにホッと胸を撫で下ろす。本当に夢であって良かった。

 だが、ふと私は気付いてしまった。あの不気味な少女は夢だ。親戚は恐らく私の知らない親戚だ。では、あの車に一緒に乗っていた男女は誰だ?夢の中で私はあの二人を両親として認識していたが、チラと三人称視点に映ったその顔は知らない顔ではなかったか?

 それ以降、夜に視線を感じるのは私の気のせいだろうか。

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映画のような夢 鯉々 @koikoinomanga

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