君を護る、そのためなら恋だって
@reinokuro
君が好きだ、けどそれ以外に大事なこともある
俺はある家に仕えている。それだけなら普通なのだろうが俺はその家のお嬢様と結婚する予定になっている。
「お嬢様、朝でございますよ」
「ふぁ~、おはよう」
俺はお嬢様の部屋から出た。
「お嬢様は起きましたか?」
メイド長が聞いてきた。
「はい、メイド長」
「ふんっ、よろしいでしょう」
このメイド長は俺のことが嫌いなのか何なのか知らないが一々難癖を俺にだけ付けてくる。
「失礼します、メイド長」
メイド長に頭を下げてその場を離れる。
「はぁ、結婚したら転職するかな」
そんなことを呟きながら学校の制服を着る。
学校の制服を着れば俺は執事ではなくお嬢様の大事な婚約者となるのだ。
「おーい、行くぞ柚希」
「まってぇ~海斗」
俺は玄関の所で待ってると柚希が急いで来た。
「お待たせ」
柚希は俺に微笑みかける。そんな柚希の頭を俺は撫でる。
「行ってらっしゃいませ、お嬢様海斗様」
メイド長に見送られ家を出る。
「ねぇ、海斗は何で私の執事やってるの?」
通学途中に聞いてきた。
「俺は、お前以外と結婚することを許されてないからだから少しでもお前と一緒にいたい」
俺でも言ってる意味が分からなかった。自分で言ったのにな。
「そっか」
俺らは結婚しなければいけない。俺はこいつの奴隷にならなければいけない。これは先祖代々受け継がれてきた犠牲だから今頃崩すわけにいかないといつも言われてきた。
「海斗…」
柚希も分かっているんだ。俺と柚希が結婚しなければ俺がどうなるか。だから何も言えない。俺のことで何か悪いことを言ったら全て俺のせいになることも。
「あんま気にすんなよ」
「ねぇ海斗、私の家から逃げて」
「それはできませんお嬢様、私は貴女の剣であり、盾ですので」
俺はそのあと柚希に微笑みかけた。
「海、斗。じゃあ一緒に逃げよう」
「柚希…」
柚希の目は本気だった。
「柚希は逃げたいか?」
「私は、海斗に幸せになってほしい、だから逃げたい」
柚希、お前はいつの間にそんな大人になったんだ。俺が知ってる柚希は泣き虫だったのに。
「だから、逃げよう海斗!」
「見つかったらお前も危ないぞ」
「それでも逃げよう」
俺は柚希を抱いた。これまでにないくらい抱き締めた。
「逃げよう、柚希」
柚希の覚悟を無駄にするわけにはいかない。それに俺は本心で柚希に惚れていた。
「海斗、大好きだよ」
「俺も好きだ」
最初、出会った頃は柚希のことが嫌いだった。柚希の為だけに生きるのが嫌だった。俺は許されていない俺の人生を生きたかった。
「柚希、俺はお前が嫌いだった」
「うん、知ってる」
俺は柚希に話始めていた。
「お前がいなきゃと考えた時もあった」
「うん」
「でも、今は大好きだ」
「うん、ありがとう。こんな私を好きになってくれて」
今の俺には柚希が必要だ。柚希の笑顔が俺の支えなんだ。
「お前は俺が護る」
「じゃあ私は海斗を護る」
柚希と俺は固い決意をした。
そして学校に着いた。柚希とは違うクラスなのでそこで別れる。
考えてみれば俺と柚希って親友であり婚約者であり幼馴染であり主従の関係なんだよな。
「相変わらず柚希ちゃんと登校か」
隣の席の男子がからかってきたが無視する。
「無視すんなよ」
「うるさい、ハゲ君」
「ハゲてねえよ!」
そんなことをごちゃごちゃ言ってるが気にしない。気にしたって何もならないしな。
授業が終わったら俺は柚希のもとにすぐに向かった。
「よお、柚希」
「海斗、早いね」
「帰るか」
「うん」
俺はこの笑顔を生涯護る。例えどんなことがあろうともな。
君を護る、そのためなら恋だって @reinokuro
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