第6話 ドニとオンボロ自動車 その8
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「いくぜマイサン」
ドニがアクセルを踏み込むや、
『オッケーパパ』
と、ラッドロッドが答えた。
「かっ飛ばせ」
ホイールスピン出盛大に白煙を上げたラットロッドが、タイヤを
「馴染んじゃったね」
「馴染んだわね」
「どうしましょう」
マナが両手を頬に当てて困っていた。
プルル、プルル、プルル⋯⋯
と、ルネの電話が鳴った。
「はい」
『ルネ!! これは一体どーゆー事だ』
「パパ」
電話を耳から鼻してバッグに投げ込んだ。
「シメオン監督?」
ルネが肩を竦めた。
「行きましょう。アンリミテッド・ウォーが始まっちゃう」
ハンゾーと腕を組んだ。
「マナ、あなたも行くでしょ。ドニは放っておいて大丈夫だから」
「ハイ、ご一緒します」
「待ってよボクも行く」
シェリーが階段を二段飛ばしで降りて来た。
「じゃあ、みんなで行きましょう」
「ねえ、こないだのハリス異世界映画祭のレッドカーペット見た?」
ハンゾーとマナと腕を組ながらシェリーが訊いた。
「見た、見た。マチルダ・スワンも、ジェームズ・アイアンサイドも注目の的だった」
ハンゾーが頷いた。
「アンディのスタジオも1年後まで予約で一杯だって、これでお家賃が貰えるわね」
「え、家賃取るの?」
シェリーが驚いたように声を上げた。
「もちろん。だってアンディには天下のエミリア・ブランチャードがついてるのよ。絶対に失敗しないわよ」
「それも、そうだね」
「ポップコーンは何味にします? 塩、キャラメル、チーズ」
「キャラメル~」
シェリーが手を挙げた。
「じゃあオレはチーズ」
「私はミックス」
「あ、その手があったか」
「ムフフフ」
ルネが誇らしげに胸を張った。
その頃、バッグのなかでは⋯⋯
『おい、聞いてるのかルネ。なぜ私のスタジオをアンドレア君が使ってるのかね。いや、まあ彼女は可愛いし、商売も繁盛してるようだから良いが。問題はドニの方だ。ドニがマシキュランの女優と結婚したとは、どーゆー事だ。私もママも何も聞いてないぞ。――いや差別とかそーゆー事を言っとるんじゃない。あいつはワロキエ家の跡取りだぞ、それがお前マシキュランを嫁に貰って。私の初孫が自動車とは、これは一体全体どーなってるんだ。私は世間になんと報告すれば良いのだ。初孫は錆だらけのボロ車と発表するのかね。ガブリエルやステファンに何と言われるか、お前に分かるのか? ドニは昔から突飛な真似をする子だった。だから姉のお前にお目付役を任せたんだ。それを、だから速くハリスに戻って来いと。聞いてるかルネ。ルネ。ルネッ⋯⋯」
知らぬはシメオン監督、ただ一人。
♥
異世界♥F・r・i・e・n・d・S 富山 大 @Dice-K
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