第76話 はっふーん

 人造クリスタルは、残念な位にもろかった。

 セクシー・ド・ヨンゲーンが姫を抱えて余りに勢いよく登っていたので、滑ってしまい、慌てて引き寄せた。


「か、顔が近くないですか……。ネコーコ・ハルミ姫」


 セクシー・ド・ヨンゲーンの頬が染まっているのが、自分でも分かる。

 憧れの姫だぞ。

 こんなに近くに姫のお顔があってはたまらない。


「助けていただいてありがとうございました。お慕いしております。そのようなこと……」


 ああ、姫も愛らしく頬を桃色にして……。


「姫からお言葉も聞けて満足です」


 ぎゅっと抱き寄せて、崩れ行く階段を登り続けた。


「伯爵は、ネコが好きだったの。だから、鳴き声を出すのは演技で。でも分かって貰えてよかったわ……」


「分かっている。分かっているさ。姫がいてくれたなら、それでいい……」


 どちらからでもなく、二人は、くちづけを交わした。

 漢泣きをしていたのは、頬から流れるもので分かってしまったかも知れない。

 しかし、こんな時は、流していいんだ。

 ちょっとだけ塩辛いものを流していいんだ……。


 くちづけは、短いようで、長く感じた。

 幸せというものは、儚くも得がたいもの。

 手放してはいけない、この愛を。


 >分岐<


 A 突然、ぐにゃりとなった。

  第78話へ。https://kakuyomu.jp/works/1177354054883918985/episodes/1177354054884485208


 B 突然、キスに目覚めた。

  第79話へ。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883918985/episodes/1177354054884485302

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