第77話 ここで……

 崩れ行く人造クリスタルの階段を登り行くと、幸せを願えそうな鐘があった。

 足元はガラガラと崩れて行くのに、ここだけは、しっかりとしてしている。

 姫を抱えたままそっと立ってみたが、崩れない。

 研ぎ澄ましてみれば、魔法力がこの鐘から出ていた。


「この魔法力は、伯爵のものではなさそうですね。カラーがどどめ色だ」


 げほんげほんとむせった。

 幸せの桃色とかではないんだ。


「実は、恐ろしい話があるの。伯爵は、ふさふさしたペットを集めていたわ。そのペット達を後始末した鎮魂の鐘らしいの」


 姫……。

 潤んだ瞳だが、力強い決意の瞳だ。


「それは、恐ろしいな……」


 後、一歩行き違えれば、お互いにどうなっていたのかも分からない。

 丸焼きになるか、伯爵のペットになるか。


「助けていただいてありがとうございます。私、ずっとお慕いしておりました。早く決勝戦でセクシー・ド・ヨンゲーン様に会いたくて」


 そうか、そうだったんだ……。

 相思相愛だったのか……。


「お願いがあるんだ」


 今が、その時なのかも知れないな。


「はい?」


 可愛らしく小首をかしげる。


 >進め<


 □ 美味しいコーヒーでも。

   第79話へ。

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