第59話 改札口のお姿

「これは、私の従者に配るものだ。相応しいだろう」

 伯爵専用クリスタ―ル宮殿の入場券を偉そうによこしたが、だまされてもいいから貰った。


「ああ、これは……」

 入場券なんて、招待状でもなんでもない。

 やはり、豚扱いなのな。


「ありがとう。漢らしくいただいておく」

「それがないと困るからな」

 困るとな。

 改札でもあるのか?

 猛者の警備員がいるとか。


「好きにするがいい」

 それから、ここからでもそのシルエットが見えるサスケヒゲゾー伯爵専用クリスタ―ル宮殿へ向かった。

 ざくりざくりと、歩む内に、思いのほか近いと分かった。


「うおおおお。きらびやかだ。全部人造クリスタルでできているようだな。目利きは任せろ。……やけに、セクシー・ド・ヨンゲーンの木造控え室をけなす訳だ」

 本当にあった。

 こんなにバカでかい宮殿が、この闘技場近くに。

 昨年、決勝にのぞむ為に建てたと聞いたが、金持ちってヤツは分からねえなあ。


「もしかして、ネコーコ・ハルミ姫に会えるかもしれない!」

 ここは、いっちょ。


「なーお。なーおー」

 豚っ鼻なりに鳴いてみた。

 聞こえる訳がねーわな。


「……ふーにゃん」


「……!」

 今のはまさか!


「ふーにゃおー」

 ネコーコ・ハルミ姫の鈴の音を転がす声にそっくりだ。

 しかし、猫ちゃん言葉?

 そうか、これは怪しまれない為の姫の演技!

 クリスタ―ル宮殿の入場券を今使わないでどうする!


「出でよ、改札!」


 Ψ iohioh utаsiаk!


 宮殿は、昔画集で見たぺチカン宮殿に似ていた。

 その広場、サン・ピラトル広場の中央に、この宮殿を等分に見られる所があると書いてあった。

 読書はするものだな。

 その中央の印字、SHH、ここに魔法力が集中している。

 これが、その印か。

 多分、サスケヒゲゾー伯爵のイニシャルだろう。


「ネコーコ・ハルミ姫に会わせておくれ……」

 跪いて、豚手を祈るように組んだ。

 その手には、何か雫が落ちて来た。


「はあー!」

 見上げるとそこは驚きの風景が待っていた。


 >分岐<


 A 鳥かごごとのネコーコ・ハルミ姫が見えた。

   第67話へ。https://kakuyomu.jp/works/1177354054883918985/episodes/1177354054884473580


 B 病に伏せっているネコーコ・ハルミ姫のホログラムが見えた。

   第68話へ。https://kakuyomu.jp/works/1177354054883918985/episodes/1177354054884474578

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