第68話 きゅん

「ネコーコ・ハルミ姫は、ご覧の通り伏せっておられる。それに豚が大の好物だとかで、元気をつける為にも犠牲になってくれないか」


「つ、つまりは豚死……。丸焼き案は却下されなかったのか。確かに、ネコーコ・ハルミ姫は、しゃぶしゃぶや豚テキと呟いていた。その為なら、その為なら……」

 セクシー・ド・ヨンゲーンとして、珍しく迷った。


「漢として、この身を捧げるのもよいかも知れないな」


「ほほほ。殊勝だな。最初からそう出ればいいものを」


 豚心は弱かった。

 ホログラムが偽物かも知れないとは疑わなかった。

 何故なら、セクシー・ド・ヨンゲーンが近くにいなくてもう一年が経つ。

 姫の心労も考えられる。


「姫、姫……」


 セクシー・ド・ヨンゲーンの胸は、きゅんきゅんで一杯になった。


「ふおおおおお! 分かりました、姫」


 何も言わない姫の前に膝まづいた。

 

 きゅん……。

 きゅんきゅん……。

 きゅんきゅんきゅん……。





きゅん死

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