木林大嘘つき(おまけのおまけの汽車ポッポ)
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DANGER!!!!!
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※以下の文章は、作者がうっかりトーナメント優勝者を的中させてしまった為に勢いで書いたお話です。最初に断っておきますが、あくまで「フィクション」です。
※作中には大変危険な表現も含まれていますが、登場する人物は特殊な訓練を受けていますので、リアルな一般人は決して真似しないでください。
※ある意味R18指定表現が一部含まれています。未成年の方は興味を持たない様にしましょう。何度も言いますが限りなく「フィクション」です。
…………
『ふっはっはっはっ! 見よ!! 世界は私のものだ!! ふぅふはははは──!!!』
異世界から現実世界へ戻るなり、みずぽ銀行の口座から全額引き出してきた木林、YUKICHIをHIDEYOに変えるとバスタブに入れ始める。一千万円とてこうしないと一杯にならないからだ。
裸になった木林は、実家にあった誰かの健康磁気ネックレスを首に下げ、紙幣に体を浸す。そしてワインを片手に独り言をつぶやき始めた。
「このネックレスのおかげだな。金も女も……! 女はいないなぁ」
雑誌の裏にある広告の真似事を一度やってみたかった木林。それに飽きると紙幣を掴んで風呂桶に入れ、なんと火を付け始めたではないか!
これまた昔の風刺画や漫画に描かれていた「一度やってみたかった事」なのだ。
「くっくっくっく! 堪らんわい!……うーん、なんか足らねぇなあ」
迫力が無いと感じ、あろうことか百万円の束を火の中へ放り込んだ!
「おぉ! これだこれ! どうだ明るくなったろう!」
百万円が音を立てて燃える……! 私は今、百万円を燃やしている……!
「ってこれ燃え過ぎだろ!? あちちちっ! やべぇやべぇっ!!」
うっかり火事になりかけたところ、ここが風呂場だった事に気付き水を出して火を消すのであった。
その後は残った金でひたすら豪遊を繰り返した。
知人を集めて回転寿司屋へ行き、誰が一番食えるかを競った。
コンビニでドッキリマンチョコ(コラボ商品)を箱ごと買い占めた。
煙草を一箱分口に咥え、火を付けたらどうなるか試してみた。
隣町のファミレスに入り、料理を全品注文してみた。
老人ホームに匿名で寄付し「変〇仮面より」という手紙を添えてみた。
「左から押してください」というナビに逆らって右から押してみた。
ドライブスルーでスマイルだけを注文し、スルーしてみた。
…………
………
……こうして、一週間が過ぎた。
あくる日、木林はとあるパチンコ店でスロットマシーンに興じていた。
T県のパチスロは九割方ボッタクリ店で設定1がデフォである為、いつも低貸しで遊んでいる……まぁどこの県もパチンコ店は同じような物かも知れないが。
今日もパチンコ店は平和だ。端で客と店員の小競り合いが見られ、台をぶん殴る音や怒りでメダルをぶちまける喧噪に満ち溢れている。そんな中で木林は何も考えずにレバーを叩きボタンを押す作業に没頭した。
ふいにレバーを叩いた時、台に描かれていたハイビスカスが点灯し始める。
(あぁやはりAタイプはいい、この瞬間が楽しい)
既に死んでいる台や、やたら「絆」を押し売りしてくる台、「ガロォー」と叫んでお面が飛び出す台よりも、木林はこういったレトロな台や女の子の台を好んだ。
しかし最近のレトロ台は大してメダルを吐き出さず、女の子の台は奇怪な邪神像が稀に付属しているので油断はできない。
そして自分の顔へ熱いコーヒー缶を押し付ける者あり。
「あっぢぃぃぃぃぃ!!」
「大当たり~~」
「!?」
あさぎである。
「な、なにするだーっ!」
「よかったじゃない『激熱』よ。貴方が博打好きなのは知ってたけど、優勝者を的中させる勘はここで磨かれていたのかしら」
「う、うるさいよ!」
なんでここにいるんだ!? しかもよりによってここに!
パチンコ店は社会のグレーゾーン、いわば暗部だ。そういった場所に居るところを誰にも見られたくなかった木林だが、あろうことか自分の小説の登場人物に見られてしまい大変気まずくなる。
相当焦っていたのか、毒の混じっている可能性を忘れて缶コーヒーに口を付ける。覚えのある味に缶を見ると、それは木林の好きな絹ごしコーヒーだった。
「私はちょっと様子を見に来ただけよ。それより今の貴方がどうしてこんなところにいるのかしらね? 賞金を
「無いよ」
「は?」
「賞金、全部使っちゃった」
「はぁっ!?」
「凄いだろ、一週間一千万円生活だ」
そう言って淡々と大当たりを消化する木林に、腹を抱えて笑うあさぎ。
(目に涙まで浮かべていやがる……そんなに笑うことないじゃないかっ!)
「あはははっ!……ふふっ、まぁそんなものよね。気晴らしにはなったのかしら?」
「気晴らし、か。おかげでその言葉が逃げ口上であることに気付けたよ」
「手元に形あるものが残らなかったから?」
「夢を買ったんだ、思い出が残った」
「思い出だって形にしないと忘れてしまうわ」
あさぎは木林の台に入っていたメダル三枚を何気なく取り、自分の座っていた台のレバーをおもむろに叩く。
──ブチュンッ!
突如台の液晶画面が消え、リールがゆっくりと逆回転を始める。
1/32000の確率を一撃で当てたのだ。
けたたましく鳴り響くサイレンの音、通りかかる客が足を止め傍観している。立ち上がったあさぎはその一人に声を掛けた。
「この台、座っていいわよ」
『マジいいんっすかっ!? あっざーすっ!!』
「じゃあね。がんばりなさい、日曜作家さん」
「……」
頭を軽く小突いて立ち去る女の後姿、それを木林はポカーンと眺めていた。やがて興が覚め下皿のメダルを箱に詰めていると、何やら隣の客が店員と揉めている。
『さっきフリーズ引いてたんだぞ!? 何で通常画面に戻ってんだよ!!』
『設定変更時にこういったバグが発生することがありまして……』
店員がインカムで話をしている中、木林は隣の男に声を掛けられる。
『あんたも隣で見てたろ!? こいつに言ってやってくれよ!!』
「あぁ、確かに見てたよ。とりあえず店からメーカーに問い合わせて貰ったら?」
パチンコは社会のグレーゾーン。古い機種の台に不具合が出たとしても、実際店がメーカーに問い合わせることは滅多にないし、一切の保証もない。云わばはぐらかす為の逃げ口上なのだ。こういった状況を何度も見聞きし自分でも体験した木林は冷静である。…しかし視点を変えればそれはそれでいい養分だ。
(ま、今のは台の不具合でもなんでもないんだがね。あの兄ちゃんには同情するよ)
店を出て空を見上げる。アスファルトの駐車場は雨上がりで濡れていた。
(……日曜作家さん、ね)
あさぎの言葉が耳に残り繰り返される。そう言えば頭を小突かれたが、どこからか作者に触れる方法を見つけ出したのだろう。平和な店内が一瞬でスプラッターな状況に置かれても不思議ではなかったのか、まぁそれも又吉。
(ボチボチまた書き上げるとしますかねぇ)
愛車のスイッチを入れ、地方ラジオのドラマが掛かり出す。
思い出が無くなることは無い、文章として残るのだから。
読みたくなったら読み、もう一度あの熱いバトルを思い出すのだ。
こうしてまた筆をとりたくなる自分がいる。
ステアリングを切る中、午後六時を告げる地域放送が車外から聞こえて来た。
──終劇
※ご安心ください、まぢでもう続きは書きませんよ。
ここまで読んで頂いた方、あなたも相当物好きですね。
……じゃなくて閲覧ありがとうございました! お疲れ様です!
蘇った忌まわしき大巨人 木林藤二 @karyou
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