時雨

神﨑公威

時雨

 昨日の夕方には時雨が降った。通っている学校から家の途中にある急勾配な坂をとぼとぼ下り、落ち葉の上をまた一歩、また一歩と少しずつ歩いていた。私は大きな不安の風に吹かれていた。風に吹かれた落ち葉は目の前の道にびっしりと広がり、地面にある茶色い落ち葉は黒ずみ、今、最も忘れたいと願う私の中にある数十分前の悪気不浄を表現したかのように思えた。どうしてあんな大それたことを行ったのか、あのとき、私は確実に自分の欲望に飲み込まれていた。そして、そういった自分の欲望が自分に恐怖の念を抱かせていた。

 私は中学一年生である。学問は嫌いで運動は苦手、よくボーッとしていると友人達には言われる。ただ、そういった放心したかのように見られるとき私は必ずと言っても過言では無いほどに空想を逞しくしている。人間の三大欲求は食欲、性欲、睡眠欲とよく聞くが、特に、私が考えるのは二つ目である。脚が良く見え、ホクロは少し多い、華奢な音楽の女教師と『もし仮に』生徒と先生の間柄の中に禁断の愛を見つけてしまったならば、私達はどうなるのか、夏には3階の音楽室で太陽に蒸されながらも、熱い互いの身体を求め合い、汗も抱き合う、冬には温もりを確かめるように優しく強く指、身体全体をも絡ませ、近くにあるストーブに紅く染められる。といったような空想を私はしていたが、私には恋心をば片想いではあるが、抱いている女性がいた。彼女は同クラスで明るく学問に対しても私より積極的で、クラブは卓球部に所属、髪は肩より幾分か長く普段は括ってあり、とても小綺麗に見える。彼女のことを気にし始めたのは夏前で、授業中の五人か六人の班内での学習のときに会話をよくし、笑顔をよく見ていた。そうしていくうちに段々と好意を持ち、ついには好きになった。あれから三ヶ月と少しが立ち、より一層、想いは膨らんでいた。今の時季は初冬で学生服は冬服に完全移行し、皆、真っ黒な服を着るようになった。学生服はさほど暖かいとは言えないが、風の強い日には少しは役に立つ、ポケットの数が夏場より増えるためにマスクを入れたりすることが容易に出来る。私はよく鼻の奥が乾燥し、喉が痛むのでマスクを着けることは多い、しかしながら運動をする際には息が苦しくなるので外している。

 「帰ってからバスケしよう!」「おう!」「俺んちの側の公園に...」教室はいつも通り賑やかで帰る前のホームルームが行われていた。私は帰る用意をしていた。朝とは全然違っており、皆、活気づいている。中には授業で疲れ、ぐったりとした者もいるが、無理もない。今日は金曜日だからだ。毎週金曜には宿題を出される、今日は寝て、土日で宿題を済ませるか、今日の疲れをこらえ、土日を思いっきり遊ぶかに多数の生徒が分かれる。私は前者の方で、ゆっくりと済ませる。私はさっき言ったへたばった側の人間だからだ。帰る用意を澄まし、皆も席に着いたところで「起立、さようなら。」「さようならぁ」と帰りの挨拶が行われた。私はすぐに教室を出て行った。私達の教室は棟の最上階である四階にあり、階段とエレベータがある。エレベータは教師たちが使い、生徒は階段で行き来する、私たちのいる階の下は二年生、その下は三年生、そのまた下に職員室があるために、教師がそれを使うことには納得していた。階段を一階まで下り、靴箱の前に来たとき、「おぉい!」と他のクラスの友人が呼びかけてきた。彼は帰る家の方角が同じために毎朝一緒に来る、帰りは見かけたときだけだが、それでも週に三回は共に帰る。彼とは好きな女子の話や嫌いな教師の愚痴を言い合ったり、と、心の内を互いに開きあっていた。彼は胸を張って親友と呼べる存在であった。

 学校を出て五分歩き、彼の家の近くまで来た。家で遊んでいくかと聞かれたが、その瞬間、私は忘れ物を学校にしたことに気づいた。普段は数学の宿題だけだが、この日は英語もあったのだ。「あ、ごめん!忘れ物したわ。英語の宿題!」「あぁ、そっか!おん、分かった。」「また来週遊ぼ!」「おう、じゃ、バイバイ」「バイバイ!」私は遊びたかったなと後悔しつつ、道路の破片を蹴飛ばし、溝に落とした。

 学校に着き、鍵を借りるために職員室へと向かった。その道中に全く人は居なかったが、グラウンドの方からは部活動をしている生徒の声が力強く聞こえていた。階段を二階、三階、と上がり、ようやく四階に着き、少し息が荒くなっていた。しんどかったので、マスクを外しポケットにいれた。四階には誰も居ない様子で、自分の息の音を大きく感じた。クラスは一から六まであり、横ににズラーとならんでいる、私のクラスは三組であるが、本当に誰も居ないのか気になり、見てみたが、どの教室も閉まっており、静かであった。自分の教室の前に立ち、鍵を開けた。黒板の右側には良い夫婦の日、十一月二十二日と書かれており、その下には想いを寄せる方の名前があった。私はチョークを手に取り、隣に自分の名前を書いた。そして、黒板は綺麗だが、彼女は日付と日直の名前を変えることを忘れてたことに気づいた、私は日にちを変え、二人の名前を消し、他の女の名前を書いた。

 教室の後ろのロッカーに忘れ物を置いてあることを覚えていた。私のロッカーは丁度真ん中にある。入り口のドア付近から、私は教室の後ろまで真っ直ぐ向かった。すると、目の前には彼女のロッカーがあった。興味本意で少し覗くと、置いてある物からは、ほんのりと彼女の香りがした。そして、アルトリコーダーの入れ物が目に留まった。鼓動が早くなっていることが分かった。そして、それを手に取りファスナーをゆっくりとあけた、ツツツツ、中には黒と白の二色構成された楽器があった。アルトリコーダーは頭部管、中部管、足部管に分解して入れてあった。

 私は咄嗟に頭部管を手に取った。そして、そっと口を付けた。舌をツン、ツン、と恐る恐る近づけてからベロリと一舐めしてから穴から渇いた唾液を削ぎとるように舌を尖らせ力強く舐めた、マヨネーズに近いような味とほのかな酸味を味わっていた。そして、興奮するあまりに笛をヒユと鳴らしてしまった。その頃には頭の中は真っ白になっていて、自覚していたことは勃起だけで、ズボンがグイと引っ張られボコリと出っ張っており肝心の陰茎はその状況をキツく狭く感じていた。私は彼女の机の場所まで舐めながら歩き、着くと同時にベルトを緩ませ、チャックをビュッと下ろした。パンツは物凄く膨らんでいた。パンツをグイと下に強引に引っ張ると、弓を放ったかの如く赤く腫れた陰茎がボコッと学生服の裾に当たり、透明な液体が少し付着した。教室の空気に陰部が触れたとき、生暖かく感じ、ぞわぞわぞわとくすぐったく、心地よかった。下のボタンを二つ外し、私は自分の生の尻を彼女の椅子に当てた。椅子はひんやりと冷たかったが、それをも私は心地よく感じていた。左手で机の中の教科書を少し引っ張り、右手は陰茎を筒上に握り、上下に素早く擦っていた。先をば教科書にツンツンと付け、分泌していた透明な液体を染ませた。また、立ち上がり、机の上に陰茎を置き、手で挟み、匂いが残るよう擦り付けた。すると、三本ほど陰毛が抜けたが、わざと置いておき、更に興奮していた。また、立ち上がっていると教室の窓からもう少しで見えそうなグラウンドが羞恥心を募らせ更に興奮させた。その後、一人、息を荒げながら床に膝を着いて椅子の上に分泌液を垂らしていた。もうすぐ出そう、そう思い、ティッシュを出そうとしたが無かった。出る!そう思ったときにはドッ、トクン、トクン、既に椅子の上に射精していた。リコーダーの先をそれに付けた。ポケットにはマスクが入っていた、真っ赤な陰茎を少し白くしているそれをマスクで拭き取ったが、椅子の上の液体は放置した。そして、ズボンを履き直し、学生服のボタンも閉めた。まだ股間は熱を持っていた。マスクを教室のゴミ箱に捨て、汚したリコーダーを片付けた。

 一通りのことをしたあと、忘れ物を持って教室を出た。鍵を職員室に持っていくと若い女教師に「遅かったね」と言われた。誰にも見られてはいないという自信はあったが、少し動揺しながら生返事をした。

 その言葉が頭に残り、金土日は全く疲れがとれなかった。月曜日の朝、いつものように友人と学校に向かっていた。彼は何も知らないのだ。あの金曜日に起きたことは私しか知らない、彼と馬鹿みたいな話をしていると、そう思うことができる自信がついた。

 普段通り教室に入った。彼女は既に来ていた。そして、椅子には私は白く張り付いた何かの上に彼女の匂いがする彼女の温もりを持った彼女の履いているスカートが乗っていた。私はそれを凝視してしまった。彼女は私が見ていることに気づいた。「おはよう!」いつもの挨拶だった。私はホッとしたのと同時に罪悪感に押し潰されていた。そして、もう一つ感情を持っていた。確実に私は興奮していた。勃起はしてはいなかったが、鼓動は階段のせいではないが確かに早かった。その日、五時間目に音楽の授業があった。皆、音楽室に移動し、彼女は授業の前の休憩時間にアルトリコーダーを組み立て、私の乾燥した分泌物を取り込んだ。それを見て、私はまた強く勃起した。

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時雨 神﨑公威 @Sandaruku

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