ACT.7 ようこそネクロス

 カセットテープからノイズ混じりのボイスが流れる。



『Haven'sのエリート警官を排除できたようだな、やつの存在は我々にとっても脅威であった。ネクロスに入る前に処理できて本当に助かった。』


 時折、キュイキュイと暗号が更新される音が挟まれる。


『我々が極秘に入手した終末兵器サンダルフォン・エリヤの唄は間違いなくHaven'sの圧政を破壊し、人間が人間らしく生きられる世界を再建設するだろう。』


 遠くで大型車がアスファルトを踏みしめ走る音がする。


『だが、我々が世界を支配するには大きな障害がある。レジスタンス特戦隊”フォールンエンジェル”のエースパイロット、エルア・ザリヴァイアだ。奴が救世主として祀られれば我らは大きく力を失う。だから奴は我々で片を付ける。』


『ウラル基地には補給としてファナティス385機、陸上戦艦アストラハン級35艇、決戦砲ウラジーミル5両、そしてチェルノボーグMk-3とパイロットを送る。ではXデーに再び会おう、同志ニキータ・タゲナホンズよ。我らコートレィラーの旗の下に。……なお、このテープは自動で消滅つつつつつつつ………』



 ノイズと共にメディア再生が止まる。


「では次!入国許可証とパスポート、IDカードを出せ!」


 カセットを聞いていた男と少女がトレイの上にそっと書類を提出する。

 入国審査官がパラパラと不備や偽造は無いか確認し、口頭で最終チェックをする。


「ここへ来た目的と名前を言え。」


 男は少女の頭に手を乗せ、食っていたオームリという魚の干物を胸ポケットにしまいながら答える。


「この街に愛と勇気とオームリを伝えに来た『オームリ・J・ニジマス』だ。こっちは娘の…。」


「サバカ・ニジマス、です。」


 くせ毛の少女は笑顔で答えた。それに気を良くしたのか入国審査官はハンコを天高く振り上げ高速スピン。


ガシャン!ガシャン!


「ようこそ電子要塞ネクロスへ!最先端の科学と最高峰の文化があなたを待っている!……あとは任せたぞ、J。」


 入国審査官がJに記念品のボールペンを手渡し、それを受け取った二人は小型マシンビークルに乗り堂々と入国していった。


 Jがボールペンをビークルの端末に挿すとステルス動画が流れ始める。


『おはようございますジョニー。最後のミッションを改めて伝令します。我がHeaven’s内部に謀反を起こそうとしている研究者がいます。彼の名はジーンテイル、そしてレジスタンスから密輸した終末兵器サンダルフォン。この2つの完全排除をもって特命の任を終了とします。』


「全く…気軽に言ってくれるぜ。」


 そう、まだ彼らの戦いは終わっていない。ネクロス中央広場から流れるプロパガンダポップソングが天獄へ帰還した元警官を出迎えた。














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ジョニーと吹雪の要塞 ナツキライダー @summer_sun

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