第5話  NEW power?

マリー、王都までどれ位かかる?」


ウォルフ王立学校入学試験の為、王都へ向かう馬車の中。向かい側に座る金髪の可愛らしい少女マリーに問いかける。


「シシオウ様のお陰で半日位で着くと思います。」


俺のお陰でと言うのも、当初街を出てから二人の女騎士が馬車を護衛しながら王都に向かう予定だった…だが、街を出て直ぐ「魔物が襲ってくる事は殆ど無い」と告げ全員を乗せたまま王都に向かっているのである。


「まさかピンポイントで魔物のみに殺気を飛ばすとは…まず高レベルの気配察知スキルが無いと出来ませが、例え持っていたとしても私には無理です。」


そう告げるのは女騎士の一人リーサ、こちらは茶髪の綺麗な顔立ちのお姉さんである。因みにもう一人はニーサで二人は双子だと言う。確かに見た目は殆ど一緒だが、髪色が姉であるリーサの方が若干明るいのと妹のニーサはかなり無口で感情を殆ど表さない。


聞くところによると二人は元奴隷で、主人にかなり酷い扱いを受けていた。遂に耐え兼ねて逃げ出した先に偶然マリーが通り掛かり、二人を保護し主人と話をつけ二人を奴隷から解放したと言う。


入学したら最低でも一年間付き合う事になるのだが、ベル?スキルとかはどうやって誤魔化したらいい?


《それに関しては適当に誤魔化して頂いても大丈夫です。ただ、EXスキルに関しては無闇に他言しない方が言いと思います。それと、他者にステータスを覗かれても解らない状態にしていますのでバレる心配も御座いません。》


流石はベル、頼れる相棒だ。そう思いつつ俺やスキルに関しての事を誤魔化し続け、昼過ぎには王都に到着した。


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【王都ウォルフ】

山の斜面を利用して創られた都市。斜面側から順に城、貴族街、市民街、貧困街、門となっており学校は貴族街て市民街の間に建っている。

それと門を通ると一直線に城まで続いている道があり、両脇には色々な店や露店があり多種多様な人で賑わっている。


マリー達は商会帰るとの事なので俺が泊まる宿前で、明日の支度金として金貨一枚を手渡され別れた。


「さて、宿にチェックインしてから街を見て回るか。」


宿の中に入ると直ぐに受け付けカウンターがあり、そこには頭からうさ耳を生やした二十歳位の女性が立っていた。


「いらっしゃいませ!ラビット亭へ、宿のご利用ですか?」


「あっはい。宿に泊まりたいのですが、アントワット商会が予約を取ってくれているそうなんです。私はシシオウと言います、それと予約を取ってくれた方はコールソンです。」


「確認しますので少々お待ちください…………シシオウ様ですね、確認させて頂きました。まず部屋は三0三号室をお使い下さい、ご飯ですが本日の夜からご用意させて頂きますので一階の食事処で食べてください。明後日までの金額を頂いてますので延長される場合は銀貨二枚になります。以上ですが、何か質問等御座いますか?」


「大丈夫です。それと服などを買いに行きたいのでオススメのお店など有りますか?出来ればシックな感じがいいのですが…」


「それでしたら魔導師のお店ですが黒翼店がオススメですね。」


宿の受付嬢に道を教えてもらい、たどり着いた店は如何にもな感じで店内の至るところに杖やローブを飾ってあった。


「…いらっしゃい、何かお探しかい?見た所魔導師には見えないがゆっくり見ると良いよ…欲しい物があれば声を掛けておくれ…。」


奥のカウンターで店主であろう老婆が声をかけてくれた。折角なので予算内で見繕って貰おうと声を掛けようとした時ベルが大音量で呼び掛けてきた。


《シシオウ様!!あ、あの隅にある宝石を買って下さい!早く!何故あんなものがこんな所に!?兎に角買って下さい。宿で説明致します!》


ベルが動揺してる?そんなに凄い物なのか?俺には黒い宝石にしか見えないけど……。

ベルに言われるがままに六角形の黒い宝石を老婆に持っていく。


「おやまぁ、本当にこれを買うのかい?」


「そうですが…何か問題でもありますか?もしかして売り物じゃないのですか?」


「いんや売り物と言えばそうなのじゃが…お前さん名前は?いや失礼、ワシはこの魔術屋黒翼店の主ナージャじゃ。」


「私はシシオウです。」


「シシオウと言うのか良い名じゃ。それを売ってもいい、いや貰って欲しい。その代わりワシの願いを聞いてくれぬか?」


どうするベル?《これが手に入るのであれば少し位の無茶を聞いても宜しいかと。それだけの価値がこれには御座います。》


「わかりました、俺に出来る事でしたら…。」


「そ、そうか聞いてくれるのかい。その宝石はある言葉と共に先祖代々受け継いでおるものでのう。ある言葉と言うのは“宝石を使えし者現れし時その者を助力せよ、さすれば我が一族は繁栄するだろう”とあるのじゃ。そしてワシの願いは、その宝石の扱いと何故シシオウに扱えるのかを知りたいのじゃ。」


《シシオウ様申し訳御座いません。完全にベルゼ様が残した物です。この方には正体を話しても大丈夫だと思います。》


「その願いを聞き入れようと思います。但し、今からする事話す事は絶対に他言無用でお願いします。」


「勿論じゃ、準備をするから少し待って下され。」


ナージャそういって入り口のドアを閉め、四方の壁に札を張りだした。


「今この店に結界を張る魔道具を使用した、これで外部から入る事も見聞きする事も不可能じゃ。準備は完了じゃいつでも始めるがよい。」


「ではまず、使う所から始めたいと思います。」


シシオウの左眼が光り出す、左眼の魔眼は魔力吸収し自らの糧にする事ができ、黒い宝石はベルゼの魔力そのものであり、吸収する事でその真価を発揮する。

手元にある黒い宝石は淡い光りを放ち左眼に吸い込まれる。


シシオウは「うっ」とふらつき、額には脂汗が滲み出ている。

ベル曰く身体が魔力に順応しているとの事だが…正直キツい…身体が何かに蝕まれる感覚だ。不意に意識がブラックアウトし、次に目を開けるとナージャが心配そうにこちらを見ていた。


ベル?どれぐらい意識が飛んでた?


《時間にして二・三分で御座います。もう大丈夫ですか?ベルゼ様も一様は神の名を持つお方です。その魔力を人の身で吸収すれば当然苦しみ最悪死を伴いますが、シシオウ様はベルゼ様の眼を宿しておりますのでその程度で済むので御座います。》


そういう事は早くに言って貰えると助かるのだが...俺にも心の《言えば、心の準備等のチキンな事を述べて中々行動に移されないでしょう?》はい..スミマセンでした。


《ではシシオウ様、ベルゼ様の魔力により新たなる力を手に入れられましたので、クローゼットオープンと唱えてください。本来は意識するだけで出来るのですが、今回はこの方にお見せ致しますのでお願いします。》


「クローゼットオープン。」


唱えると、何も無い空間が歪み始め中から黒い光がシシオウに向かっていった。そのまま黒い光はシシオウを包み込み数秒も掛からず消える。するとシシオウの服は黒のロングコートに身を包み、手にはフィンガーレスタイプの黒のグローブ、靴はロングブーツを身に着けていた。


「おおぉ...これがあの宝石の力なのですか...。」


ナージャは目を輝かせながらこちらを見る。


「その通りなのですが...今から詳しくお話しします...。」


それからナージャに自分は異世界から転生してきた事等を途中端折りながら説明した。


「俄かに信じがたい事じゃが..目の前で宝石を吸収する所を見せられては信じますわい。」


「ありがとう御座います。後、宝石を貰ったお礼に何かお困りの時手をお貸しします。」


「それはありがたい申し出じゃ、では今後の事を考えシシオウには普段の喋り方に戻って貰おうかのう。もしやバレて無いとは思っとらんじゃろ?」


さすがは商売をしているだけはある、あれだけの事が有りながらよく観察している。

ナージャは呆れた顔にシシオウは困った顔をする。


「はは、バレてました?一様目上の方や初対面の方には言葉使いを気を付けてるけど……やはり不自然?」


「不自然じゃ、まぁ言葉使いは分からんでも無いわ。だが、少なくともワシの前では普通に話しても構わん。」


それから軽く談笑し落ち着いたらまたくると言う事で宿に帰った。


「おかえりなさいシシオウ様、その服凄くお似合いですね。あっ直ぐにご飯にしますか?」


宿のカウンターでうさ耳従業員が笑顔で出迎えてくれる。


「ただいま、従業員さんに良い店を薦めて頂いて満足な買い物が出来ました。それで、先にご飯にしたいけど大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ。それと従業員さんじゃなくてシーナと呼んで下さい。では、席に座ってて下さいね直ぐに準備しますから。」


席に座ってしばらくして食事が出てきた。


《シシオウ様食べながらで宜しいので色々聞いて頂きたい事がありますので、まずステータスを開いて下さい。》


俺はコッペパンを食べながらステータスを開いた。

「ごほっごほっ!」なんだ!色々突っ込み所があるぞ。


名前     シシオウ

種族     人間

職業     受け師(極)

スキル    習得不可

EXスキル   獅子王流体術

       堕天神の眼

       亜空間収納魔法

       独立概念(ベル)


受け師の後に極みがついてる事、スキルが習得不可になってる事、EXスキルに独立概念ベルが増えてる事……何処から手を付けようか。


《シシオウ様簡潔に分かりやすくご説明致します。まずベルゼ様の魔力を取り込んだ事により、私が独立出来るようになりました。》


ここでのんびり聞いてると変な人に見られそうだ。

食器を片付け部屋に戻り、食堂で貰った紅茶紛いを飲む。


《どういう事かと言うと、私自身が一人の人格としてシシオウ様の中に存在すると言うことです。もっと簡単に言うと、魔力を持ちスキルも使える人間がシシオウ様の中に出来たのです。これがその証拠です。》


名前  ベル

種族  概念体

職業  サポーター兼魔眼の管理者

スキル 習得不可

EXスキル 全属性魔法

     EX隠蔽


うん、ステータスまで存在したら疑い様が無いな。


《そしてこれによりシシオウ様の許可なく魔法が使用出来ます。それから極みですが、魔眼で魔力の流れまで見える様になりしかも掴める様になったようです。》


なるほどね、魔法までも受け技の対象になったから極みか……良いことづくめじゃないか?


《そうでも御座いません、その代償がスキル習得不可です。》

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保守的主人公の異世界見聞録 創士狼 @sooshirou

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