約束
月子
約束
私が実際に体験したお話です。
小さい頃 あれは5歳くらいのお話でしょうか。
お盆。 死者が帰ってくる というのは皆さんがご存知かと思いますが、まだ私には幼く、よくわからないものでした。
大体の人が「この時期くらいになったら実家に帰る」という感覚ではないでしょうか?
私も紛れもなくその一人でした。
この話はそんなお盆にあったお話。
母が通信制の大学の試験で東京に行き、戻ってくる日でした。私と姉2人は祖母の家に泊まっていました。 父は仕事で今年は無理だという事で母は直接祖母の家に帰ってくると言っていました。
その日は本当になんともなく家でごろごろしていました。姉と一緒に遊んだり、祖母の手伝いをしたり。そんなことをずっとやっていたら母がタクシーで帰ってきました。
「おかえり!」
3人は笑いながら母を迎えました。 帰ってきた時間が夜7時ごろだったので外で食事をし、祖母の家でもう1泊することになりました。
夜10時くらいでしょうか、私はとても眠たくなり祖母にお願いをして1人早々に就寝してしまいました。
そしてふと目が覚めると 外から太鼓の音と誰かが喋る声、明るい光が窓から見えます。
時刻は確認していないのですが頭は妙にすっきりしているし、かなり寝込んでいたのだと思いました。 隣に母、姉2人、祖母が布団を敷いてきちんと綺麗な姿勢で寝ています。
(こんなに五月蝿いのによくねてるなぁー)
私はそんなことを考えながら窓の外を眺めていました。外では物凄い大音量で太鼓の音が鳴り、人の話し声もなんか変な音楽もいっぱい流れてきます。
私はその時「お祭りかなー」と思っていました。 今考えたら分かることなのですがそんな時間にお祭りなんて普通はありません。何度も言いますが当時の私は幼かったのです。
ふと玄関を「トントントン」と3回ノックする音が聞こえました。
玄関の方を覗いてみると提灯の明かりと思える明かりが2つ 漏れています。
知らない人だといけないと思い母を起こしますが母はまったく起きる気配がしません。祖母も、姉も揺すったり叩いたりしましたがまるで起きる気配がありません。
その間もずっと玄関のノックは続いています。
焦った私はついに玄関に立ち「どちら様ですか?」と尋ね玄関を開けてしまいました
「あ、出てきた!一緒に向こうで遊ぼうよ!!」
玄関に立っていたのは私と同じ位かそれよりちょい上か。提灯を1つづつ持った2人組みの男の子でした。
「向こうでお祭りがあっているんだ!一緒に遊ぼう!」
「とっても楽しいよ!!早く遊ぼう!」
本当に突然でした 知らない男の子が私の手を取って右側を指します。右側を見てみるとそこは提灯をいっぱい持った人が一定方向に向かって歩いていきます。凄くおいしそうな臭いもして、喋り声もして見ていてとても楽しそうでした。
しかし子供ながらにお祭りとはお金がないと何も買えないという今思うととても現実的な考えをもった私だと思いますが、その時は本当にそう思ったんです。
「お母さんが起きないとお金貰えないから一緒に行けないや」
私がそういうと2人の男の子はとても残念そうな顔をしました。
お金がなくても遊べるのに、向こう行って一緒に遊ぼうとそれでも誘ってきました。
でもやはり知り合いでもなんでもない男の子達に私は無理だといいました。
「それなら次はいつ会える?」
右側の男の子が私の顔を覗きながら尋ねました。
私は考えながら「お祖母ちゃんの家だし、お祖母ちゃん家にきたときかな」と素直に答えました。
「次のお祭りの時、一緒に遊ぼう 絶対だよ」
私と2人の男の子は指きりをしました。 今度お祭りがあるときは一緒に遊ぶと。
その時は必ず2人についていくと 約束をしました。
次の日、母に「昨日この辺でお祭りがあったみたいだよ!凄く楽しそうだった!!!約束したの!!」と私は無邪気に言いながら昨日人がいっぱい通っていた方角を指さしました。
「向こう側を提灯もった人が喋りながらいっぱい楽しそうに歩いて行ってたの!!」
母は首をかしげます。
「お祭りなんてあってないし、そっちは湖だから危ないよ」
私は次祖母の家に行ったら約束を果たさなければいけないかと思いますが、この約束、いつまで有効ですか?
約束 月子 @tukiko0205
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