君の嘘に気付くまで。

小豆ミルク。

第1話

目の前が青くてキラキラしている。

ここは、海の中だ。

すぐに気付いた。

苦しくないからきっとこれは夢だ。とても懐かしいような気もするが、夢は自分の経験から作られるみたいなことを聞いたことがあるのであまり気にしなかった。

声が聞こえる。女の子の声。だんだんと意識が遠のいていく。


「あーおっ、蒼!!!起きて!こんな所で寝てたら風邪ひいちゃうよ!!」


このうるさい声は夢菜か....。

「分かった、わかった。起きるから。」

あれ、何で俺、海にいるんだろ。砂の上で眠っていたみたいだ。服や腕にサラサラの砂が沢山ついていた。


俺が砂を払っていると、夢菜が


「ねぇ、何でも1つ願いが叶うとしたらさ、君は何を願うの?」


「何だよいきなり。」

まぁ、人間生きていれば叶えたい願いの1つや2つあるんだろうな。ここは適当に流しとくか。

「そうだな〜。楽に死にたいかな、俺は。」


夢菜は俺の願いを聞いて、声をあげて笑い始めた。

「何それ!願い事が死にたい、なんて言う高校生って今時は珍しいんじゃない??」


「笑うなよ。お前は無いのかよ、叶えたい願いとか。」


「あるよ。君を死なせないこと。」

夢菜は突然真面目な顔になって言った。


「あ、嘘だって思ったでしょ!本当だよ、ほらっ!」


夢菜がそう言った瞬間、大きい音がした。

夢菜が海に飛び込んだ音だ。

「泳げないんだから、海なんかに入るなよ。」


そんな僕の警告を無視して、夢菜はどんどん青い海の中に入っていく。これ以上は危険だと思った。でも、止めに行く勇気が無かった。いや、本当はあったのかもしれない。


彼女の長い髪が風でフワフワと揺れた。

「止めないんだね。私が進むことを。」


そう言われて、咄嗟に出た言葉が、

「溺れたら困るから早く戻って来いよ。」だった。自分からは助けに行かない、言葉しか出なかった。


「大丈夫。蒼は困らないよ。困るのはこれから私を受け止めなきゃいけない海の方。」


「それって、どうゆうこと...??」


「蒼とはここで、お別れだよ。今までありがとう。もし、蒼が私のこと....。」


その瞬間、僕の目の前から夢菜が消えて、海だけになった。突然の出来事に俺の脳は考えることをやめたかのように真っ白になっていた。


さっきまで、ここにいたのに。

さっきまで、普通に話していたのに。


夢菜は、一瞬で、俺の前から、消えた。



2話に続く。

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君の嘘に気付くまで。 小豆ミルク。 @snow_flowers

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