第14話 本物

クラスの打ち上げが終わった後、自分は三人と別れた。本来ならそのまま帰るのだが、ある人物に呼ばれたのでそこに向かう。

そこは明るい場所ではあったが、人気が全くないような場所だった。


「あ、来た来た。」


すでに呼び出した張本人、水嶋がいた。


「なんで呼び出したんだ?」


そう、あの時水嶋が髪留めを探すふりをしていた時に自分にこっそり呼び出しの紙を渡して来た。


「それは、ちょっと聞きたいことがあって。」

「なんだ?」

「私が鬼の時に言ったよね。私のキャラのこと。」


予想してたけど、やっぱりそのことか。この話を始めた時、水嶋の雰囲気が変わった。


「いつから気づいていたの?」

「.....始業式の日から。」

「⁉︎....なんで分かったの?」


明らかに水嶋が動揺した。気づかない自信があったらしい。まあ自分以外のやつは気づいてないだろうけど。


「お前は頼られる、信頼されてる、なにを言われても怒らず笑って済ます。でもその時、お前の顔は楽しそうじゃない、みんなに合わせてる。」


水嶋は黙りながら聞いていた。話を続ける。


「自分はそれを見てキャラを創ってると思った。ボロもでたりしてたしな。」

「ボロ?」

「意外と顔にでてるぞ、お前。」

「え、そ、そうなの?」


そう言うと水嶋は少し顔を赤くした。ほらな。

気を取り直すように水嶋はこちらをしっかり見る。


「春祇くんの言う通り。私は学校やいろんなところでも猫を被ってる。本当はワガママでいろいろ面倒くさいとか、もうちょっとひねくれてる。」


やはり自分の考えは当たっていた。


「それにしても....」

「なんだ?」

「なんで私をそんなに観察してたの?もしかして私のこと好きだったりしてー」

「.....は?」

「ごめんなさい、冗談です。」


心外だ。なんでそうなるんだ。てか、こいつも冗談を言うんだな。これが素か。


「そんなことより、私のキャラのことは、他の人には言わないでね。」

「分かってる。」


そんなこと言ってもメリットがないし、誰も信じないだろう。


「じゃあそろそろ帰るよ。バイバイ。」

「ああ。」


水嶋は帰る準備をし帰ろうとした。だが、途中で振り返った。


「あとさーー!」

「なに。」

「私のキャラは気持ち悪くないよー!!」


そう言う水嶋は満面の笑顔で訴え、駆け足でいった。

あの時と同じ、『本物』だった。





「........」


一人立ち尽くす。なぜ、あの時『あいつ』の事を思い出したのだろう。


「...................」


でも、

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