第13話 守る

隠れ場所から脱ける。その時、すぐ間近に春祇くんがいた。すぐに春祇くんのいる反対方向に逃げる。


(危なかった....)


隠れ場所から脱けた時、春祇くんはすぐ隣までせまっていた。やはり私が鬼の時から手を打っていたのだろう。けど、今回は私の読み勝ちだ。

春祇くんは驚いてかなり出遅れているだろう。そう思い後ろを見た。


だが、春祇くんは私の予想を超えていた。

まさか.........


ここまでの私の全ての行動を読んでいたなんて。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




水嶋はやはり頭がいい。あのスタート地点の隠れ場所に誘導したが、自分の誘導作戦に気づき、その場から離れ、逃げた。

まあ........そこまで読んでることを、そこから一気に脱けて逃げようと考えると思ってたけど。



さてここからどうする?ここからは、純粋な鬼ごっこだ。いくら水嶋とて、女子だ。男の自分に追いつかれると相手も分かっているだろう。


残り十五秒。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




(追いつかれる!)


どうする、どうする?どうやら完全に全て読まれていた。このままなにもしなければ、こっちは女、相手は男な訳でギリギリ追いつかれる。

だが、周りに使えるものはない。壁もなく、曲がろうとしたら失速して追いつかれる。

なにも思いつかない。諦めの想いが込み上げてくる。


(............いや、まだだ!!)


ここで諦めたらだめだ。私は絶対に諦めないキャラだったじゃないか。ただ春祇くんに見破られただけでブレるな。私はキャラを最後まで捨てない!

今、使えるもの。それは.....




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





いける。このまま、残りちょっと。水嶋は満身創痍なはず、キャラを自分に言われ、精神的にもきているはず。



(「私以外に勝負にまけちゃだめだよ」)



不意に思い出す。『あいつ』に言われたこと、約束を




「守る....!」






だが、熱くなってしまったせいか、相手の行動を見ていなかった。最後の最後でやられた。なんと水嶋は自分の着ている体操服の上に着ているジャージをこちらに被せようとした。それをよけるが....


(しまった‼︎)


避けようとしたが、重心がズレてスピードが落ちてしまった。おかげで差が開いてしまった。すぐ追いつこうとするが、


「しゅーりょーーーー!!!」


とメガホンで野村が叫んだ。


熱くなってしまった。らしくなかったが、それで負けてしまった。もう少しだったのに。

隣で息を整えている水嶋がこっちをみて今回は『本物』の笑顔で、



「今回は私の勝ちだね!!」



と言った。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「いやー流石に水嶋さんから逃げれても追いつけはなかったなー!」


そう言う羽島は高らかに笑う。

今は、今回の隠れ鬼の打ち上げみたいなもので、ほとんどのクラスメートは参加していた。自分は断ろうとしたが、羽島と平山に無理やり連れてこられた。


「それでも水嶋さんをかなり追い詰めたらしいね、凄いよ。」

「俺も追いかけたかったぜ!」

「なんだそれ。」


自分は薄く笑う。


「二人は何人も捕まえたらしいね。僕たちなんて一人もつかまえられなかったよー」

「平山がすぐバテたからじゃん。」


紗羅がツッコむ。


「そんなこと言わないでよー」


それでまた笑いがうまれた。

そんなことしていると、他の席にいた水嶋がこちらに来て、何かしゃがみながら探していた。


「なにやってるのー水嶋さん。」

「あっ平山くん。いや〜さっき髪留めを落として探してるの。」

「なら俺も手伝います!」

「ありがとー」


羽島も参加して探している。まあそれが本当の理由じゃないらしい。

一分ぐらい探してると、水嶋が計ったようにスカートのポケットから髪度を出した。


「あ、ごめん。ポケットの中に入ってたよ。」

「そ、そうだったんですかー、いやーよかったですね!」

「羽島くん手伝ってくれてありがとう!それじゃお疲れ!」

「お疲れ様です!」

「おつかれー」


水嶋が自分の席に戻ろうとした時、こちらに目を合わせて笑った。


「.....はぁ」


まあ、呼ばれたから行くしかないか。


まったく、めんどくさいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る